日銀のデフレ目標
川辺賢一氏、ブログ転載
2012-02-07
前回、前々回の記事では、
「FRB同様、日銀もインフレ目標を設定せよ」という
主張をさせていただいた。
しかし白川総裁は、すでに日銀もFRBと同じことを
やっていると述べた。
さすが白川総裁である。得意の日銀理論と日銀文学を駆使して、
責任をうやむやにしてしまうつもりのようだ。
確かに、日銀は
日本銀行は、金融政策運営にあたり、政策委員が中長期的にみて
物価が安定していると理解する物価上昇率を
「中長期的な物価安定の理解」として公表している。
2009年12月に、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」
の明確化を実施した。現在の「中長期的な物価安定の理解」は、
「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、
中心は1%程度である」としている。
http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/
としており、一見すると2%のインフレ率を目標としているように
見えなくもない。
しかし、例えば日銀が公開した2010年10月の金融政策の
公式文書によれば、「委員会の多数は1%程度を中心に考えている」
としている。
(http://www.boj.or.jp/announcements/release_2010/k101005.pdf の注3に着目)
ちなみに日銀が考えている物価は生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)だ。
しかし、物価の安定化、デフレ脱却を目指すのであれば、食糧・エネルギー
を除いたコアコアCPIを指標にすべきである。
さらにCPIには統計上の問題で1%程度のインフレ率上方・バイアス
がかかっているとの指摘もある。詳しくは幸福実現党・学生部の
馬場君の記事を参考にしていただきたい。
http://ameblo.jp/7hermes/entry-10801154176.html
これらを踏まえれば、日銀が目標にしているインフレ率は実質的には
良くてゼロインフレであろう。
さらに、98年にデフレに陥った国(日本)の処方箋として、初めて
インフレ・ターゲティングを提唱したとされるクルーグマンの主張
の最も重要なポイントは、「中央銀行が将来のインフレ率上昇に
対して十分に無責任であること(つまりインフレを放置すること)を
信頼できる形で約束すること」である。
(クルーグマンとバーナンキはかつてプリンストン大学の同僚であり、
日本に対する金融政策のスタンスについて大きな違いはない。)
クルーグマンは「もし中央銀行が、可能な限りにおいてインフレを
推進し、その結果インフレが起きてもそれを容認することを、
信頼できる形で約束できれば、インフレ期待を増大することができる」
と述べている。
つまり、たとえ景気が良くなって、インフレ率が上昇したとしても、
中央銀行が金融引き締めをしないということを市場に約束すると
いうことが重要なのだ。
日銀の仕事、責任をインフレ・ファイター、あるいは通貨の番人と
定義するならば、日銀が責任を放棄することを信頼できるかたちで
約束すること、これがクルーグマンらが提唱した人工インフレ
創出論としてのインフレ・ターゲティングである。
だからこそ、クルーグマンは「4%のインフレ目標を15年間続ける」
と高めのインフレ目標を主張したのだ。
日本のようなデフレが定着した国においてインフレ期待を起こすのには
2%でも不十分だろう。ましてや日銀のように実質ゼロインフレを中心に
したインフレ目標は事実上のデフレ目標である。日銀の姿勢は、少しでも
インフレになるようなら、通貨の番人としてインフレの鎮圧に入ると
いうものだ。これではインフレ期待は起こるはずがない。
デフレ脱却もできるはずがない。
またインフレ期待を上昇させるには、いかにして日銀はインフレを
起こすのか、例えば量的緩和や民間資産の購入、あるいは日銀の
国債直接引受けのような、金融政策(金融財政政策)の手段を
示さなければならない。
クルーグマンも、あるいはバーナンキも日本に対してはインフレ目標
(あるいは物価水準目標)の設定と同時に、財政のマネタイズ
(金融と財政を一体化させた政策)を提唱している。
スティグリッツに至っては政府紙幣の発行を主張している。
池田信夫氏は財政のマネタイズはまともな経済学者は提唱しない。
クルーグマンですらMMT
(財政のマネタイズによる公共事業、バラマキを提唱する)を
攻撃していると述べている。
しかし、クルーグマン(まともな経済学者??)が批判しているのは
経済が通常の状態にある国家での財政のマネタイズである。
日本はクルーグマンが言っている通り、ゼロ金利でこれ以上、
通常の金融政策が無効になった状態、流動性の罠にあるのだ。
だからこそ、通常の経済環境における常識からは離れた、劇薬の
ように思える政策も行っていかなければならないのだ。
戦前日本における金融財政の司令塔であり、世界的に尊敬を
受けている蔵相・高橋是清が行ったことをもう一度、やるべきである。
高橋財政が大インフレを引き起こしたというのは誤解である。
http://ameblo.jp/kawabe87/entry-11151000087.html
ケインズと共同戦線を張ってデフレと闘った経済学者にして実務家、
ラルフ・ホートリー卿はこのように述べている。
“Fantastic fears of inflation were expressed.
That was to cry, Fire, Fire in Noah’s Flood.”
インフレの空想的な恐れは、ノアの大洪水が迫ってきているときに
火事だ!火事だ!と叫ぶようなものである。
まずデフレを止めよ!景気を十分回復させてから
インフレの心配をすべきである。
参考:日銀文学に騙されるな
http://ameblo.jp/7hermes/entry-10673689435.html
転載した記事 http://ameblo.jp/kawabe87/entry-11157998930.html
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