幸福実現党 江夏正敏の闘魂メルマガ vol.93
2017年7月4日発行
江夏正敏 幸福実現党
政務調査会長のオフィシャルブログ
http://enatsu-masatoshi.com/
1、江夏正敏の「闘魂一喝!」
「なぜGHQは日本に憲法9条を押し付けたのか」
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●安倍首相の9条加憲法メッセージ
安倍首相は5月3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明。
そして、改正項目として9条を挙げて「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」との考えを示しました。
憲法改正に踏み込んだ発言は良しとするも、この加憲の提案については、首をかしげざるを得ません。
「現行9条の1項、2項ともそのまま残しながら、自衛隊の存在を書き加える」ということは、
『白馬は馬に非ず』という詭弁を憲法に書き込むことであり、解釈論と条文の改訂とを混同しています。
●日本国憲法第9条
ちなみに日本国憲法第9条の1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持、交戦権否認)は以下の通りです。
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
●なぜ9条が日本国憲法に入ったのか
さて、日本国憲法第9条について、賛否両論あると思いますが、東アジア情勢を鑑みると、9条改正は喫緊の課題でしょう。
日本の主権を否定し、隷属国家の象徴のような9条が、なぜ日本国憲法に入ってしまったのか。今回のメルマガは、その源流と理由を探ってみたいと思います。
●第一次世界大戦の惨劇―戦争は違法
第一次世界大戦から話を始めたいと思います。
第一次世界大戦は、戦車、航空機、毒ガスといった近代兵器が登場し、国を挙げての総力戦になったため、敵味方の双方に甚大な被害が出ました。
そこで、世界大戦の惨劇を二度と繰り返さないためにと、大戦後、国際連盟規約やパリ不戦条約によって、戦争は「違法なもの」として制限されるようになりました。
日本国憲法第9条にある「戦争放棄」の規定は、このパリ不戦条約が原型であると言われています。
ただし、パリ不戦条約では、自衛のために戦争をする権利は、どの国にも認められているとしています。
●ウィルソン大統領による戦後処理の誤り―勝利なき講和
また、第一次世界大戦終結時のアメリカのウィルソン大統領は、大変な理想主義者であり、戦争を無くそうと考えました。
そして、戦後処理において、敗戦国ドイツを完全に打倒せず、「勝利なき講和」によって世界平和を樹立しようとしました。
言ってみれば「なあなあ」の協調路線、リベラリズムという優しい考え方で融和しようとしたのです。
しかし、それはドイツに「戦争には負けていない」という誤解を与えてしまいました。
そこに、イギリス、フランスがウィルソン大統領の提案を無視して、領土の割譲と巨額の賠償金をドイツに要求したのです。
これによって、ドイツ人は「だまされた」と思うようになり、結果、ナチスの台頭を許すことになったと言われています。
そして、第二次世界大戦が勃発してしまいました。
●ルーズベルト大統領による無条件降伏論
「戦争の違法化」「勝利なき講和」というウィルソン大統領の失敗を目の当たりにしたのは、後のルーズベルト大統領でした。
彼は、第二次世界大戦の戦後処理を、敵国の完全なる打倒、軍国主義を生み出すような国家体制そのものを変えるという無条件降伏が必要と考えました。
敵を無条件降伏させるべく、完膚なきまでに叩きのめすためには、善悪二元論で戦争を設定し、国民を巻き込まなければなりません。
そこで、ルーズベルト大統領は、第二次世界大戦を「善である民主主義vs悪であるファシズム」の戦いと定義したのです。
●大西洋憲章から国連憲章へ
このルーズベルト大統領の無条件降伏の考え方は、1941年の「大西洋憲章」となります。「大西洋憲章」とは戦後秩序の基本構想です。
この「大西洋憲章」の理念が国連憲章となり、第二次世界大戦後における世界秩序の基礎となっているのです。
その8項に以下のような文があります。
「世界のすべての国民が、現実的または精神的な理由から、武力の使用を放棄するようにならなければならないことを信じる。
もしも、陸、海、空の軍事力が、自国の国外へ侵略的脅威を与えるか、または与える可能性のある国によって使われ続けるなら、未来の平和は維持されない。
いっそう広く永久的な一般的安全保障制度(=のちの国連)が確立するまでは、そのような国の武装解除は不可欠であると信じる」。
この「大西洋憲章」に、憲法9条の雰囲気が出始めていますね。
●常設の国連軍構想―加盟国は自衛権すらない
そして、国連憲章の原案は、1944年に米英ソ中の代表が採択した「ダイバートン・オークス提案」です。
この提案は、現在の国連憲章より理想主義的な色彩が強く、一般の加盟国に独自に戦争をする権利を認めていませんでした。
この流れの中で、理想主義的な国連軍構想が議論されています。アメリカは、正規の国連軍の規模に関して「強大な常設の国連軍」の設置を主張していました。
そして、「国連軍が国際紛争を抑止し、侵略戦争が起きても国連軍がただちに対応できる、だから普通の加盟国は自衛権すら必要ない」という理想論を唱えていたのです。
●アメリカのリーダーたちの不戦の理想
このように、第一次世界大戦の轍を踏まないためにも、第二次世界大戦後の戦後処理において、アメリカは国際連合、ブレトンウッズ体制、IMFなどの新たな世界秩序を構築します。
その目的は、第一次世界大戦後の混沌とは違って、アメリカの強大な軍事力と経済力による「パクス・アメリカーナ」による世界平和の実現です。
マッカーサーをはじめ、アメリカのリーダーたちは、「今度こそ、不戦の理想を実現させる」と燃えていました。
●冷戦による国連軍の頓挫
ところが、ソ連が小規模な軍事力の供出を主張するなどしたため、結局は意見がまとまりませんでした。
さらに、1947年3月にアメリカのトルーマン大統領が議会で、「共産主義の封じ込め」を宣言したことで、冷戦の幕が本格的に開きました。
ここに、正規の国連軍ができる目途は立たなくなったのです。そして、1948年までに正規の国連軍に関する検討は打ち切られました。
●代替機能としての個別的・集団的自衛権
結局、常設の国連軍が設置できなくなりました。そして、米ソ冷戦中は、五大国の拒否権発動で、国連軍は国際紛争に対応できなくなりました。
そこで、国連加盟国が自国を守るためには、個別的自衛権と集団的自衛権で対処することになったのです。
そのような理由で、国連憲章では、個別的・集団的自衛権が国家の固有の権利として認められています。
●理想主義に燃える時期に9条が生まれた
実は、これらの議論がなされた時期が大切なのです。
世界平和への理想主義的な熱意が高まり、国連軍だけで世界平和を守るという構想(加盟各国に軍隊はいらない)を検討していたのが1944年~1948年です。
まさにその時期、1946年2月に、マッカーサー率いるGHQが日本国憲法草案を書いていたのです。
このような状況の中で、「戦争放棄」「戦力不保持、交戦権否認」の考えが、日本国憲法第9条として挿入されてしまいました。
9条は、アメリカが理想主義的な戦後処理と新世界秩序の構築に燃えていて、さらに米ソ冷戦が本格化する前という、かなりピンポイントな時期に策定された特殊なものなのです。
(少し、アメリカ寄りの理想主義的側面から9条の成り立ちの説明となりました。
個人的には、ウィルソン大統領は善意で不戦を願っていた部分が感じられますが、
ルーズベルト大統領は無条件降伏に代表されるように、相手の国を尊重しない悪意を感じます)
●冷戦とともに9条は削除されるべきだった
冷戦によって、世界は理想主義よりも現実主義に引き戻されたにもかかわらず、日本国憲法第9条だけが、そのまま放置されてしまいました。
本来ならば、冷戦とともに、日本国憲法第9条は削除されるべきものだったのです。
●安倍首相の9条加憲は筋が通らない
このような経緯で日本国憲法第9条が制定されてしました。後々、マッカーサーは朝鮮戦争が勃発して、9条の間違いに気付いています。
しかし、日本は不幸にも、この9条をご本尊のように崇めてしまっているのです。
いずれにしても、安倍首相の「国の交戦権を認めず、戦力を保持しないまま、自衛隊が憲法上の存在となる」という提案は、
憲法に嘘が書き込まれることになり、国の主権を蔑ろにしてしまうことになってしまいます。
このような「情けない政治」とはいち早く決別しなければなりません。
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2、編集後記
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都議選において、幸福実現党の候補者は非常に悔しい結果となりました。
ご支援いただいた皆様には、大変、申し訳なく思っております。
ただ、都民ファーストの会が、どれだけ続くかは疑問です。
今の小池都知事の手法に、真実を隠し、世論操作をする危うさを感じるからです。
とはいえ、負けは負け。
大きな理想を持ちながらも、小さなヒットも確実に積み上げていきたいと思います。
[参考]「米国人弁護士だから見抜けた日本国憲法の正体」ケント・ギルバード著
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◆ 江夏正敏(えなつまさとし)プロフィール
1967年10月20日生まれ。
福岡県出身。東筑高校、大阪大学工学部を経て、宗教法人幸福の科学に奉職。
広報局長、人事局長、未来ユートピア政治研究会代表、政務本部参謀総長、
HS政経塾・塾長等を歴任。
幸福実現党幹事長・総務会長を経て、現在、政務調査会長。
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◆ 発行元 ◆
江夏正敏(幸福実現党・政務調査会長)
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