新総理の下でどうなるエネルギー政策?
2011年8月27日
[HRPニュースファイル]転載
民主党代表選が近づいてきました。その中でも、菅首相が
打ち出した「脱原発」の方向性は継続されるのか否かが
争点の一つに上がっています。立候補予定者の中では、
原発依存度を下げていくことに関しては一致を見ています。
前原氏が出るまでは、ポスト菅の最有力候補だった
野田佳彦財務相は、「安全チェックをしながら再稼動できる
ものはしていく」旨を表明しています。考え方自体は極めて
正しいものなので、実行に移していくべきでしょう。
候補予定者の中には、極端な「脱原発」の流れを進める方は
いないものの、揺れ動く原発停止問題への処理は、新総理に
とって不可避の政治議題となることは間違いありません。
原子力発電は、エネルギーが乏しいわが国にとっては必要なもの
として推進してきました。自民党政権時代から継続しており、
福島第一原発事故以前までは、民主党政権も推進側の立場を
とっていたほどです。
わが国は、原発を輸入と考えた時のエネルギー自給率は4%、
国産としても18%にしかなりません。昨今話題の再生エネルギー
にいたっては、全体で9%ほどですが、8%は水力発電です
(2009年の値)。
つまり、太陽光や風力発電等は、わずか1%しかありません。
資源の枯渇を心配することのない点を考慮すれば、実に魅力的
なエネルギーとは言え、発電シェアの3割を代替するほどの
ものではありません。
再生可能エネルギー法案が可決されますが、これには数多く
の問題点があります。例えば、市場より高い値段で電力会社が
買い取ることが本当に良いのか。価格は経産大臣が決めること
ができますが、果たして大臣が市場価格を適正に決定できるの
でしょうか。
欧州でさえ、10年から20年かけて導入していますが、必ずしも
成功した事例ばかりではありません。欧州とは、地形や天候も
異なりますし、市場経済に対する考え方、法律や規制も異なります。
それを日本に導入することで、バラ色のエネルギー政策になる
と考えるならば、安易な「原発安全神話」となんら変わりない
ことになります。新総理は、欧州での失敗事例の研究も忘れない
で欲しいと思います。
現時点、原子力発電を補っているのは火力発電です。
比較的コストの安いLNG(液化天然ガス)を使用することが多く
なるといえ、化石燃料系による発電には、二酸化炭素の排出が
伴います。
鳩山由紀夫前首相が国連にて宣言した二酸化排出量1990年比25%削減
は、現実的に一層難しくなったとみるべきでしょう。
つまり、民主党のマニュフェストでもある地球温暖化対策は一旦棚上げ
をすることも検討するくらいの現実感を持ってエネルギー政策にあたる
べきです。
さらに付け加えれば、火力発電に依存すればするほど、中東からの
輸入に80%以上頼っているわが国は、国防上のリスクが高まったと
見るべきです。中東は、リビア情勢も含めて極めて不安定で、いつ
原油が上がるか分かりません。近年では、中国による石油をはじめと
した資源外交が進行している事、東シナ海から南シナ海へ軍事的権力を
強めている以上、シーレーン防衛は日本の資源外交と国防の生命線
となっています。
憲法の改正もままならない現状を考慮すれば、ベターな解決策は
日米同盟強化しかありません。
このように、エネルギー政策には、理想や夢、目標は必要とはいえ、
冷静な分析と現実的な対応がカギとなります。さもなければ、
大東亜戦争時代のABCD包囲網と同じ現実がやってきます。資源を
抑えられた国は、他国に支配されるというリスクも出てきます。
特に、中国によるシーレーン封鎖だけは避けなければなりません。
新総理には、エネルギー政策は、国防政策でもあるということを
認識して頂きたいと思います。(文責・中野雄太)
http://www.hr-party.jp/new/2011/9953.html