「麻酔しないで削りますから、痛かったらおしえてください」
このひと言で一気に
ものすごい緊張が全身に走ります。
歯医者さんで口を開けている私は
言うなれば
まな板の上の鯉。
完全に無防備なのであります。
身構えようとも
せいぜい肩に力が入って
手で握り拳を作るくらいのものです。
『麻酔してくれたらいいのに』
そう思いながら
今か今かと
ズキッとくる衝撃を
全神経が待ち構える準備。
いっときも油断できません。
先生も
いつ私が痛みを訴えるかを気にしながら
ウィ〜ン、ウィン、ウィン…と
様子見ぃ見ぃ削ってくれています。
あぁ、
これまでに何度、
こんな緊張を強いられてきたことでしょう
そんな
悲劇のヒロインのような
耐え難い苦痛を余儀なくされているかのような気持ちでおりますけれども
すべては
自分の責任なのです。
虫歯は自分の意識と管理で防げるはず。
我ながら
「懲りないやつ」
何度も繰り返し呆れております(;´д`)
そして。
今回はなんと無事に
痛みを感じることなく終了。
削ったところを詰めてもらいながら
『ずいぶん長く通ったけど、いよいよ治療も終わりかなぁ。次にクリーニングに来る時にはお菓子でも持ってこようかしら』
調子良く考えていたところに
「次は、この隣の隣の歯と、その隣と…
まだもうちょっとありますから、治していきましょう」
私の心の声が読み取られていたの?
ちょっと恥ずかしさもあり
自分の虫歯の多さの情けなさも相まって
「あ、はい」と
隠しきれないヘンな笑いを漏らしてしまった私でした。