郵便の投かん口が1つで、円柱型の丸型ポスト。50年ほど前に製造が中止され、ポストのほとんどが四角い形に変わりましたが、いま、丸型ポストを新たに設置する動きが各地に広がっています。
丸型ポストは、昭和45年に製造が中止され、現在は郵便ポスト全体の2%程度に減っています。
ところが、いま丸型のポストを新たに設置する動きが各地に広がっています。
山形県鶴岡市の出羽三山神社では2年前、丸型ポストが鳥居の側に設置されました。インスタグラムなどでポストと神社の写真を投稿してもらい観光客の増加につなげるねらいがあります。
鳥取県岩美町の東浜駅も、寝台列車の停車駅に選ばれたのをきっかけに、列車と同じ深い緑色の丸型ポストを設置しました。投かんすると地元の風景をあしらった消印(けしいん)が押されて配達され、町の小さなシンボルにしようと考えたということです。
色を塗り替える丸型ポストは宮崎市の青島にもあり、黄色い丸型ポストが若者や家族連れに人気の撮影スポットになっています。この地域は「古事記」で男女が恋文を交わした場所とされていて、縁結びのスポットになるよう「幸せの黄色いポスト」と名付けられました。
こうした丸型ポストは郷土資料館などにあったものを再利用したり、他の地域にあるものを譲ってもらったりして設置しているということです。
丸型ポストの魅力について、撮影を続けて18年になる名古屋市の写真家、庄司巧さんは「丸型ポストはよく見るとベレー帽をかぶった人の顔に見えてくる。丸みがあって愛くるしさがある。人もそうですけれど角が立つより丸みがあったほうが親しみを感じるんです」と話していました。
東京 小平「丸いポストのまち」でPR
丸型ポストをまちのシンボルにしようという動きもあります。
東京 小平市は、今も使われている32の丸型ポストを含めて37の丸型ポストが残っていて、「丸いポストのまち」としてPRしています。
中には住民グループが市に寄贈した、大きさが日本一とされる丸型ポストもあります。
水道管などで使われるコンクリート製の管や中華鍋などから作られ、高さおよそ2メートル80センチ、最大の直径がおよそ80センチで、通常のものの2倍以上の大きさです。
投かん口は上段と下段の2か所にあり、中には肩車をしてもらって上段から年賀状を投かんする子どももいました。
年賀状の投かんに訪れた男性は「丸型のポストは形が親しみやすい。まちのシンボルとして残り続けてほしい」と話していました。
製作に携わった住民グループの小田倉格さんは「丸型ポストにはノスタルジックな雰囲気があり、人を和ませることができる魅力があると思う。丸型ポストを通して小平市を知ってもらいたい」と話していました。
丸型ポストは「生き物に通じるデザイン」
丸型ポストについて、デザインが人の心理に及ぼす影響を研究している千葉大学の日比野治雄教授は「丸みを帯びたデザインは『生き物』にも通じる。穏やかで優しく、親しみやすい印象を見た人に与える。また懐かしいイメージのデザインに加え、希少性から来る新鮮さやもの珍しさが、若い人にも『おもしろい』ものという印象を与えているのではないかと思う」と話していました。
NHKニュース