《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

2013年2月 アメリカの政治・経済―世界の動きⅡ

2013-04-08 03:12:53 | アメリカの政治経済―世界の動きⅡ
2013年2月 アメリカの政治・軍事―世界の動きⅡ
(【 】内は作成者のコメント)

《政治》
○ケリー国務長官の初外遊先はイスラエルとエジプト(2日 イスラエルのハーレツ紙)。
【オバマもイスラエルを最初に訪問する。】
○ケリー国務長官初の外交演説 米国の経済成長が外交力強化に繋がる、と対話重視の外交を展開すると(20日 バージニア大学)。
【しかし外交の最後の言葉は軍事である。】
○オバマは2期目の大統領就任後の初外遊にイスラエルを選んだ(13.2.7)。
○共和党は、オバマの米議会での一般教書演説の反対演説にフロリダ選出でキューバ移民のマルコ・ルビオ上院議員を起用する(6日)。反対演説は一般教書演説に続いて行われ全米にテレビ中継。ルビオ議員は移民制度改革法案の提案者の一人。
【共和党の次期大統領候補の一人はキューバ移民。】
○米内務長官に米アウトドア用品CEOのサリー・ジュエル氏を指名(6日 オバマ)。
○チャック・ヘーゲル国防長官について(13.2.11)。共和党の元上院議員、ゲーツに続く共和党系長官。ブッシュのイラク・アフガン戦争を批判。イスラエル批判やイランへの制裁反対には「後悔している」と。
【対イスラエル政策に反対したことを謝罪した! その反省を対パレスチナ強硬策に転化するのか。イスラエルの何に反対したのか。アメリカでは転向ではないのか。戦争反対論者も取り込んでしまうすごさ。日本の右傾化との比較は必要。】
○米上院財政委員会は次期財務長官にルー前大統領主席補佐官を承認(26日)。

《一般教書演説》
○①「米国は世界のもっとも危険な兵器の拡散を防ぐ努力を主導する」。②輸出拡大に向けTPPの交渉妥結とEUとの包括的な貿易・投資協定締結を視野に入れた米欧対話を表明。二大通商交渉をテコに雇用と景気刺激に乗り出す。③財政問題で10年で4兆ドルの財政赤字削減を再確認、歳出カットと歳入増の具体策としてメディケア(高齢者医療保険)改革で医薬品メーカー補助金削減や高齢富裕層の負担増など。④雇用政策で製造業の国内回帰と労働者の働くことが生活向上に繋がる道筋をどうつけるか。⑤アフガン駐留米軍の縮小加速し、14年末までに完全撤退完了。核弾頭削減による「核なき世界」への決意。
【オバマ一般教書の基礎と動機には、アメリカ帝国主義の内外にわたる深刻な体制崩壊的な危機とそこからの脱却の困難がある。】
○米、試されるアジア重視(12日 一般教書演説)。①昨年の一般教書演説の「太平洋国家」に類する言葉なし。オバマのアジア重視がよくわからない印象を与えるのは、その対中戦略が不透明だから。二つの戦争の終結のメドはつけたがテロを含め多様化する脅威への対処なし。②中間層の底上げを目標。裏を返せば、輸出低迷や税制改革の頓挫で政策の停滞感が色濃くなっている苦しい事情を反映。
【日経は日経の立場で、オバマの対中国戦略の不透明を指摘している。アメリカ帝国主義オバマ政権は、中国をどうするつもりなのか、しっかり解明すべき。】
○米上院ではヘーゲル次期国防長官承認の本会議で、共和党が「フィリバスター」(討論を長引かせる議事妨害)を発動、採決の結果フィリバスター阻止に2票足りず、承認を今月下旬に先送り(14日)。

《軍事》
○オバマ政権は1550発の核弾頭を1000から1100まで削減できる(8日 政府高官)。
【1550発の核弾頭がアメリカにある!】
○F35のエンジンの羽部分に亀裂が見つかり調査完了まですべてのF35の飛行を停止(22日 国防総省)。
【F35やボーイング787といい、アメリカ帝国主義の技術の没落が浮き彫りに。】

《北朝鮮》
○次期国防長官指名のヘーゲル元共和党上院議員が「北朝鮮は脅威という段階を超え現実の核保有国だ」(31日 上院軍事委員会)、「北朝鮮をまともな政府だとは考えていない」「必要ならば攻撃にも万全の態勢で備える」と言明。来日中のリッパート国防次官補も「放置すれば米本土にも深刻な脅威」と。
【アメリカ帝国主義はイランと北朝鮮を天秤にかけて、両方は無理という問題に直面している。】

《中東》
○オバマが今春(イスラエル現地報道3月20日ころ)にイスラエルを初訪問する(5日 カーニー大統領報道官)。

《サイバー攻撃》
○アメリカ企業を狙ったサイバー攻撃が相次ぎ、オバマ政権は中国政府・人民解放軍の関与への懸念を強めている(13.2.21)。13年の一般教書演説で「米国の送電網や金融機関、航空管制システムを破壊する能力を得ようとしている」としてサイバー攻撃の脅威を強調、重要インフラ企業で軍需産業並みに政府と情報を共有する大統領令に署名した。サイバー攻撃への報復規定で大統領が先制攻撃(サイバー上で)できる交戦規定を盛り込む。中国人民解放軍の総参謀部3部(技術偵察部)の「61398部隊」が関与か。カーニー大統領報道官は中国側に最高レベルのルートで懸念を伝えた(19日)。
【サイバー攻撃への先制攻撃を交戦規定に入れるという。ミサイルでの建物の攻撃まで行き着くのではないか。サイバー攻撃の対象は戦争行為そのものだから。】
《12月の景気・経済指標》
○2012年12月の個人消費支出、年率換算で11兆2780億㌦、前年比0.2%増(31日 商務省)。2ヶ月連続の増加、個人所得は前月比2.6%増加、個人貯蓄率も2.4ポイント上昇で09年5月以来の3年半ぶりの水準に。
○13年1月の米新車販売台数、前年同月比14.2%増の104万3101台で年率換算すると1529万台。3ヶ月連続で1500万台を超え(1日 オートデータ)。1月の100万台超えは5年ぶり。
○1月の製造業景況感指数、53.1。昨年4月以来の9ヶ月ぶりの高水準、上昇は2ヶ月連続 (1日 米サプライマネジメント協会ISM)。1月の非製造業の景況感指数は55.2、37ヶ月連続で50を超えた。(5日)
○1月の米主要小売業の既存店売上高、前年同月比5.1%増、昨年8月以来の高水準(7日 国際ショッピングセンター協会ICSC)。
○米企業、需が下支え。米主要500社の12年10~12月期の純利益は前年同期比5%増、内需回復とコスト削減効果で収益が再び拡大。
○12年の米国の原油輸入量(前年比6.9%減の30億9422万㌧)は15年ぶりの低水準、3年ぶりに貿易赤字が減少(13.2.10)。貿易赤字に占める石油輸入の比率が5割を切った。「シェールガス革命による経済浮揚の初期の兆候。純輸出の改善は12年10月から。2月期のGDPマイナス成長は改定される見通し。米貿易赤字が大きいほどドル安要因(受け取った代金のドルを売って自国通貨に換金)⇒シェールガス革命で米の経常赤字が減少しドル買いの材料に。
【12年10~12月期のマイナス成長は改定値で変更されるのか。シェールガス革命でドル高に。これは米帝にとって痛し痒し。】
○1月の米鉱工業生産指数(07年=100)、98.6。前月比0.1%低下(15日 FRB)。製造業・鉱業が低下。設備稼働率は0.2ポイント低下し79.1。
【鉱工業生産指数と稼働率は低下している。】
○1月の卸売物価指数(82年=100)、前月比0.2%上昇。4ヶ月ぶりの上昇(20日 労働省)。
○1月の消費者物価指数CPI 2ヶ月連続横ばい(21日 労働省)。前年同月比1.6%上昇、食品とエネルギーを除くコアで前月0.3%、前年同月1.9%上昇。
【物価は落ち着いている。】
○1月の米住宅着工件数、年率換算89万戸。前月(97.3万戸)比で8.5%の減少(20日 商務省)、2ヶ月ぶりの前月割れ。しかし「着工許可件数」(住宅着工に約半年先行)は92.5万戸で前月比1.8%増。
○米消費、強弱が交錯 (13.2.24)。個人消費に足並みの乱れ。給与税減税の打ち切り(実質2%の増税、年間700㌦)やガソリン高が家計を圧縮し、中低所得層は支出の抑制に、株高を支えに高所得者はブランド品購入活発。
○12年12月のS&Pケース・シラー住宅価格指数、主要20都市ので前年同月比6.8%上昇。上昇は7ヶ月連続(26日)。

《雇用》
○2012年の製造業の雇用、前年比1.3%増の1194万人。3年連続増加 (13.2.2 労働省)。企業の国内回帰が労働市場を下支え。労働組合離れによる賃金の低下に加え、シェールガス革命などの技術革新が進み、生産拠点としての優位性が確立したため。労働権(労組への加入を拒否できる)の可決で、ミシガン州のフォード工場では賃金が最大4分の1に。米南部は労働権で先行、「労働権があることが強み」。15年前後には生産コストが中国を下回る地域が出てくる。シェールガス革命→ダウ・ケミカルがメキシコ湾岸に巨大エチレン工場、USスティールが石炭に代えてシェールガスの製鉄プラントなど。3次元プリンターなどのイノベーションも。
【労働権とは労働組合に入らない権利! アメリカは労働者の権利に対して資本家の権利を認めていたが、労働組合に入らない権利とは人間の自殺権ではないか。】

《株・債券》
○ダウ工業株30種平均が07年12月以来5年4ヶ月ぶりに1万4000㌦台を回復(1日)。①米景気の指票(雇用で昨年11,12月分が大幅に上方修正、1月製造業景況感指数が9ヶ月ぶりの水準に)。企業業績の改善、中国などの新興国景気が事前想定よりも底堅い、シェールガスの増産で米国経済が構造的な強みを増す、世界景気の先行き不安の後退で投資マネーが株式に回帰など。昨年10~12月期のGDPがマイナスだったが、政府支出の落ち込みなどの影響が大きく、消費や投資の民間部門は堅調。②今年に入り5週連続の上昇で07年10月の最高値(1万4164ドル)まで150㌦強。③10年物国債利回りが2.01%、投資マネーは商品市場にも。
【5年ぶりの株高。金融緩和によるマネーの流れ込みだけではない要因が。しかし12年第4四半期はマイナスだったことも公共部門の影響でたいしたことないですみそう。でも金融緩和の麻薬的な一時的な効果でしかない。】

《FRB》
○FRBは公開市場委員会FOMCで事実上のゼロ金利政策と金融緩和策の維持を決定(1月31日)。決定の要旨、①米景気と物価動向、「米経済(12年10~12月期のGDPは年率マイナス0.1%)はおもに天候による混乱やその他の一時的な要因、ここ数ヶ月間は足ぶみ状態」「失業率は依然高水準、家計支出と民間設備投資はさらに増え、住宅部門は更なる改善を示している」「国際金融市場の緊張はやや和らいだが、下ぶれリスクにさらされている」、②金融政策、「1ヶ月400億㌦の住宅ローン担保証券の追加購入と450億㌦の米長期国債の購入は継続」、QE3は継続、③政策運営の見通し、「失業率が6.5%以上で物価上昇見通しが2%を最大0.5ポイント上回るにとどまり、インフレ予想が落ち着いている限り異例に低水準のFF金利は正当化」。金融市場ではQE3の出口論議に。
【市場ではQE3の出口論議が始まっている。この出口論は時期を探るのが難しい。】
○量的緩和、転換論広がる(20日 FOMC米連邦公開市場委員会の1月29~30日の議事録公開)。多くのメンバーが雇用が目標水準に達しなくても脱却を進めざるをえなくなる可能性を指摘。背景には中央銀行の資産肥大化への強い懸念がある。米経済の底堅い回復を続けるとの根強い期待感も。拙速な終了への否定的な意見も。
○バーナンキ議長の米上院銀行委員会での証言(26日)。1.「QE3は住宅市場回復に顕著な効果を果たした」「米景気は今年に入り再び上向きつつある。10~12月期のマイナスは一時的」。2.クリーブランド連銀のピアナルト総裁、「回復が続くならFRBの資産膨張ペースを押さえたほうがよい」、QE3で年1兆㌦ペースで増えるFEBのバランスシートに懸念。3.緩和解除のハードルは高い。財政削減がGDPに与える影響(0.5~1.0%)、イタリア財政への不安から上げ相場が一変した金融市場も出口論の制約など。
【出口論は難しい。デフレかバブルか。この選択。こういう政策が効果を持っている、根本的解決ではなく矛盾の先延ばしでも効果をもっている現実がある。「矛盾の先延ばし」論は古びてしまっている。】

《財政問題》
○債務上限問題で、上院が国債発行枠(債務上限)を3ヶ月間、適用しないこととする法案を賛成多数で可決(31日)。債務上限の適用を5月18日まで一時的に凍結する。この法案の成立で国債利払い費や社会保障、政府職員の給与など4500億㌦の借り入れが可能に。危機は回避されていない→①歳出削減策を法制化しない限り、3月1日には連邦歳出の強制削減(10年で1,2兆㌦の連邦歳出のカット)が始まる。②3月下旬までに予算編成ができなければ13年度の暫定予算が失効し、政府機関が閉鎖。③4月中旬は米議会で14年度(13年10月から)の連邦予算の大枠を示す「予算決議」を通す時期。
○米議会、共和党が歩み寄り(13.2.4)。「フィリバスター」と呼ばれる議事妨害の制限法案を可決、移民制度改革でも両党有力議員が法案提出で合意など上院を中心に超党派で法案を作成する動きが出始めた。
○オバマは声明で、3月1日からの国防費を中心とする歳出の強制削減の発動を数ヶ月程度先送りすることを議会に要請した(5日)。短期的に先送りのための「暫定的予算措置」(税制と歳出を組み合わせた部分的な財政赤字削減案)を求めている。共和党は「強制削減を廃止する法案を2度提案」したのにと批判。強制削減を回避するために10年間に4兆㌦の財政赤字削減では合意、富裕層増税や歳出削減で2兆5千億㌦の削減にメドをつけている。
○強制削減が3月1日に発動した場合、教員や捜査官の削減、中小企業や低所得者への支援縮小など「中間層が犠牲になる」(8日 米政府)。
【オバマは必死に中間層に訴えている。】
○歳出の強制削減(10年間で1兆2000億㌦削減、これを回避するためには財政赤字を4兆㌦減らす必要)回避。2月末に期限 (13.2.16)。3月1日から強制削減が実施されると、9月までの13会計年度で国防費など850億㌦が一律削減される。民主党案は14会計年度分も含めて1100億㌦の財政赤字分(ほぼ半分を年収100万㌦以上の世帯の最低税率を30%にする増税と石油会社への優遇税制廃止と国防費と農家向け補助金それぞれを275億㌦削減で補う)を10年かけて削減する代わりに強制発動を今年の12月まで延期するたたき台を提案。共和党は昨年末に増税を認めておりこれ以上の増税は認めない。
○パネッタ米国防長官が3月1日に歳出の強制削減が発動されれば80万人の職員の大半が一時休職(30日間の事前通知期間が必要で、最大22日間の無給の休日扱い。40~50億㌦削減)、米軍の即応体制が大きく損なわれる、と(20日)。
【米軍の危機まで使いなりふりかまわず】
○オバマと民主・共和党の議会指導者と3月1日に会議(28日)。
【しかし、現実は3月1日から強制削減に突入した。】

《財政赤字》
○2013会計年度の財政赤字を8450億㌦、と08会計年度以来5年ぶりに1兆㌦を下回るとの推計を発表(5日 米議会予算局CBO)。景気回復と増税で税収が増え、歳出削減も進む。13年の成長率は1%台と厳しめ。
【財政赤字が少し減っている。】

○米司法省がS&Pを提訴 (4日)。米司法省は米住宅バブルが崩壊する前に,S&Pなどの格付け会社がサブプライムローンなどの住宅ローン担保証券の格付けを不当に高くしていたと非難、格付け会社は住宅ローン関連証券を発行する金融機関から手数料を得ている。
【格付け会社が評価する金融機関から手数料、そもそも客観的な格付けなどできるはずがない、で切り捨ててはダメか。】

《シェールガス》
○シェール革命、米の影響力一段と。世界の構図・変える可能性 (13・2・7)。IEA世界エネルギー機関によれば2015年に天然ガスでロシアを、17年に原油でサウジを抜き世界最大の生産国になる。米国は世界最大の原油・ガスの消費国で原油の4割、天然ガスの1割を輸入。影響→製造業のエネルギーコストの低下で復権へ、中東依存の低下で国防費の削減、など。日本にとっては発電燃料費増大額は年3兆円、割高なLNG取引に風穴。シェースガスのリスク→①採掘で水と化学物質による環境破壊、②「米国の天然ガスがいつも安いとは限らない」(商社)。ガス価格が5㌦なら石炭が安い。
【シェールガス革命で世界構図の変化の内容は、製造業の復権と国防費の削減。単純に米帝が復権ではなく見極める必要がある】

《貿易摩擦と通商》
○インドが国内の太陽光発電事業者に自国製品の使用を義務付け関連産業を優遇していることを世界貿易機関WTOに提訴(6日 米通商代表部USTR)。
○アメリカとEUが自由貿易協定FTAを含めた貿易・投資協定の交渉に入る(13.2.15)。平均税率はアメリカが3.5%,EUは5.2%でそれほど高くはないが、EUの輸入乗用車は10%。アメリカはトラックに25%の関税をかけている。オバマは一般教書演説でEUとのFTAを「包括的な大西洋間貿易・投資パートナーシップ」と呼んだ。穀物や牛肉の輸出拡大を狙うアメリカは遺伝子組み換え食品の規制緩和や成長ホルモンの使用承認を求めている。

○米航空3位のアメリカン航空と第5位のUSエアウエイが州内にも合併で合意。世界1位のアメリカン航空になる(13.2.12)。

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