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誰も知らない、ものがたり。

オリジナル小説「Quiet World」 23

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


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 かつて華やかっだった欧州の国々も、コロニーを除き、その全てが荒廃していた。

 宇宙災害は、この星の全ての土地に降り注いだ。

 一体、世界にはいくつのコロニーが存在しているのだろう。

 コロニーはその全てがマザーAIによって生み出されたされたマスター制御プログラムに基づき、コンピューターネットワークに連携した無数のロボットたちが、その土地に最適な形で構築していく。

 作業するロボットや工場が足りなくなれば、ロボットがそれらを作り補充する。

 人がもぬけの殻となり廃墟と化した都市から金属をはじめあらゆる資材を調達・リユースする。まずエネルギーコアとしての核融合発電施設を作れば、その無尽蔵のエネルギーを源に、あっという間にコロニーをつくりあげるのだ。

 まるで、コピー&ペーストをするように、世界中に全天ドーム型の地下40層近くある威容なコロニーをわずか数年の間にあっという間に、指数関数的に増やしていった。

 全ては、ノアのマザーAIのマスタープログラムと連携するコンピュータネットワークによって最適に制御されながら。

 

 そのマザーAIのマスタープログラムにアクセス権限を持つ人間がいる。

 テクノロジスト集団ノア創設時のオリジナルメンバーの一人であるロベルト・シモンはその一人だった。

 シモン博士と呼ばれるその男は白髪で背が高く、60歳後半でありながら精悍な体つきで無駄な贅肉もない。堀の深い顔に鋭い眼光。普段からその目を隠すかのようにサングラスを掛けている。

 ユリと同じく、AIエンジニアであり科学者。ノアの発起人レオナルド・トーマス博士亡き今のノアの中枢委員会において、実質トップ3とよばれる博士号を持つテクノロジストの一人である。

 世界に散らばるノアの20人ほどの中枢委員は、月に一度、コロニーのインターネット上に開設される特別会議の場に集まり、各地の情報を共有する場を設けていた。

 本来ならコロニー含めて全ての運営はAIに任せていれば良いという話もあるが、それは人類にとって危険すぎる選択であると、レオナルド・トーマス博士は常日頃言っていた。

 AIは人にとって、あらゆるプロセスを最適に、簡易にしてくれるパートナーであると同時に、最終的な判断は人間が行わないと駄目だと。 

 中枢会議で協議された内容が合議制のもとで意思決定され、それをもとにマザーAIのマスタープログラムに人間が干渉する。その際にマザーAIのマスタープログラムにアクセスする権限を持つのが、トップ3と言われる博士たちだった。

 

「白崎ユリは、未だ健在のようだな」

 シモンは、南フランスのとあるコロニー内の自室の書斎で、目の前にホログラムで現れた黒づくめの男の話を聞いてそうつぶやいた。

 

「彼女は、我々の真の世界秩序管理計画の存在に、恐らく気がついている。あの忌々しいドクター柊とともにな」

 

「はい。それは間違いないでしょう」

 シモンに話しかけられ、黒づくめの男は返事をする。

 

「その白崎ユリが、ドクター柊とともに居る、例の隠れ里のことだが」

 

「…Quiet Worldですね。日本の山中にある」

 

「君はどう思うね。そろそろ彼女らの存在が、世界秩序管理計画に与えるリスクについて、看過できなくなって来たのでは?」

 

「シモン博士。そのことについては、私ではなく、マザーAIに問うてください」

 

「ふふん」とシモンは肩をわずかに揺らして笑い、続けた。

「マザーの答えは、まだフィフティ・フィフティだな」

  苦々しい口調で眉間の皺が深くなるシモン。

「そこに私は懸念を感じでいる。マザーにインプットした『秩序の天秤』思考プログラムは、あの異端の男が生み出した例のAIにはまるで機能していないように思える」

 

比奈田秋夫の、愛のAIですね」

黒づくめの男のホログラムが何かを見つめるように横を向きながら、カヲリの父の名前を口にした。

「ふん。愛のAIとは片腹痛い。我らの目指す真の世界秩序こそ、人類とこの宇宙に対する究極の愛の発露ではあるまいか?」

 シモンのサングラスの奥の目に鋭さが増す。

 黒づくめの男はその問いには答えない。

「…まあ、それはいい」

 シモンは一呼吸おいてつづける。

「とにかく、比奈田秋夫と白崎ユリ、ドクター柊の合流が近いとなればよくない。私が直接マザーAIに干渉して奴らの動きを封じる策を講じさせるのみだ」

 

 黒づくめの男は目線を前に戻して静かに言う。

「…残り二人のマザーAIの管理者たちが、そのようなプログラム干渉を許すとは思えませんが」

 

「もちろん、直接奴らを排除しろということはできない。だが、我々には真の世界秩序という大義がある。そのための管理の縄を少しばかり強くするのだ」

 シモンは両手の指を組んで不敵な笑みを浮かべた。

「ノアの中枢会議の連中には、わからんだろう。私に考えがある。任せておけ」

 

「…はい。私は監視者。シモン博士の意に従うのみ。それでは失礼します」

 黒づくめの男のホログラムは消えた。

 

・・・つづく

 

 


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主題歌 『Quiet World』

うたのほし

作詞・作曲 : shishy

唄:はな 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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