大阪市廃止・解体めざす住民投票実施に向けた「協定書案」の可決にあたって
2020年6月25日
一般社団法人 大阪自治体問題研究所 理事会
大阪市を廃止し4つの特別区に再編する、いわゆる「大阪都構想」の制度を議論していた大都市制度(特別区設置)協議会=法定協議会は、6月19日、「制度案(協定書案)」を可決した。
この「制度案」は、政府の承認を得たうえ、府・市の議会に諮り、承認されれば、11月にも実施が取りざたされる住民投票で、賛否を問う「案」となるものである。
もし住民投票で制度案が「賛成多数」となれば、2025年1月には1889年の市政施行以来130年余の歴史を持つ大阪市は消滅し、現在の24区は4つの特別区に再編されることとなる。
大阪の将来図をめぐっては、この間の維新政治による「二重行政解消」「身を切る改革」の名による公共機関の統廃合、行政サービスの民間委託推進、住民サービスに従事する自治体職員の大幅削減、カジノ・IRなどインバウンドに依存する経済政策などは、そもそも抜本的な見直しが必要であることを、当研究所として繰り返し指摘してきた。
さらにこの間、「大阪都構想」のメリットを示そうと、1千万円もの委託料を支払って作成した経済シミュレーションは、2回合計80ヶ所もの訂正を余儀なくされるなど、議論に耐えるものではないことが明らかとなっている。
加えて今回のコロナ禍の中で課題として浮かび上がった、公衆衛生・予防業務や医療の供給体制、暮らしや営業を支える制度などの様々な問題点は、この協定書案の作成過程では全く検討されておらず、したがって制度案にはまったく記述はない。
この間、住民の中から、「一度否決されたのになんでまた今頃?」「今は新型コロナウイルス対策にこそ財政と人員の集中を」などの多くの住民の疑問や反対の声が沸き上がるのは当然のことである。
吉村知事・松井大阪市長は、19日の法定協後の記者会見で、またぞろ「最後の審判」「制度の本質を住民に理解してもらい判断いただきたい」などと述べているが、一方で「9月に府・市両議会で承認」「11月1日には住民投票」と矢継ぎ早に進める意図も明らかにしており、住民合意に向けた真摯な議論を行う姿勢は全く見せていない。
今必要なことは、「都構想」などと言って自治体の形をいじくりまわすことではない。大阪府や大阪市が「住民の福祉の増進を図る(地方自治法第1条2項)」本来の役割をいかんなく発揮して、コロナ禍による住民の苦難解消と安全安心の確保、地域経済の立て直しに、持てる権限と財政・組織の総力を挙げることにある。
当研究所は、不要不急かつ住民の中に無用な対立や分断を生み出す住民投票の準備作業を中止し、協定書案を白紙に戻すとともに、大阪府・大阪市がコロナ対策に全力を挙げるよう求めるものである。
以上
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