2024年人事院勧告にあたっての幹事会声明
2024年8月8日・公務労組連絡会幹事会
1.人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する勧告と人事管理に関する報告をおこなった。給与に関する勧告は、本俸について、官民較差が11,183円(2.76%)であることから、高卒初任給を21,400円引き上げるとともに全体の俸給表の改定を行った。また、一時金については、0.10月分、今年度については、12月期の期末手当及び勤勉手当に配分し、来年度以降については、6月期及び12月期が均等になるよう配分するとしている。
昨年を上回るベア勧告であると同時に、俸給表は初任給・若年層だけでなく、再任用職員も含む全体の改善や、期末手当を含む一時金の引上げは、10万筆を超える「大幅賃上げ署名」と現場の組合員による提出行動、500名が結集した中央行動など、官民共同による公務員賃金引き上げを求めるたたかいの反映である。
しかし、今回の俸給引き上げ額は、天井知らずの物価高による生活悪化の改善にはきわめて不十分である。本年の春闘の賃上げ率、厚労省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」の5.33%と比較しても見劣りする水準であり、度重なる災害や新型感染症拡大などから国民の安全・安心を守るために奮闘してきた公務労働者の生活を改善するにはほど遠く、私たちの要求に応えない極めて不満な内容である。
手当では、寒冷地手当の見直しが行われ、手当額が引き上げられたものの、支給対象から除外となる職員は不利益変更を被ることとなり、生活実態をかえりみない一面的なデータにもとづく見直しは容認できるものではない。
2.「給与制度アップデート(社会と公務の変化に応じた給与制度の整備)」は、若年層や能力・実績主義による一部成績優秀者の処遇を手厚くし、若年層の公務員離れを防ごうと懸命になる一方で、地方や現場で汗する公務労働者の賃金・労働条件を抑制しようとする狙いが色濃く滲み出ている。職場の分断を招き、全体の士気を低下させる恐れがあり看過できるものではない。
地域手当の「大くくり化」は、都道府県単位に原則一律化されたが、地域間格差は依然として解消されないどころか、今回の見直しによって手当額が引き下げとなる地域が多数生じており、断じて容認できない。地域手当の悪影響は、国の行政組織だけでなく地方自治体の人材確保や低水準に抑制された地場賃金などの固定化など、多方面に広く及ぶ。人事院は地域間格差の解消に向けて現場の切実な声に真摯に向き合うべきである。
通勤手当については、支給限度額を1ヶ月当たり15万円に引き上げ、新幹線特例の支給要件を緩和するなど、私たちの要求を一定反映したものとして評価できる。一方で、マイカー通勤に係る経費増についても実態をふまえた改善が求められる。
配偶者の扶養手当の廃止は、広域配転が常態化している人事異動のあり方と一体で議論すべきであり、現状のままでは、公務労働者の負担感が強まるばかりである。
3.「公務員人事管理に関する報告」において、超過勤務の縮減や勤務間のインターバル確保などについて触れられているが、定員そのものが不足している上に、慢性的な欠員が生じており、小手先の対策を講じたところで、長時間過密労働の実態は改善されない。直ちに行うべきは定員削減計画を撤回し、必要な人員増をはかることである。
また「官民給与の比較対象となる企業規模」についての検討を表明したことは、遅きに失したとはいえ、私たちの強い要求を反映したものとして評価できるが、早期に改善すべきである。これまで、公務労組連絡会は、人事院の「職種別民間給与実態調査」における調査対象事業所の企業規模の切り下げが、公務員賃金水準を抑制し続ける大きな要因であるとその是正を強く要求してきた。次年度の職種別民間給与実態調査から比較企業規模の引き上げを行うことを求める。
4.非常勤職員について、人事院は6月28日に「3年公募要件」を撤廃した。これは国だけでなく地方自治体や教育現場などで働く非正規公務員と私たちのたたかいの成果である。今後は、適正な運用を求めるとりくみを強めるとともに、病気休暇の有給化や採用年度当初からの年休付与など、今年勧告されなかった非常勤職員の待遇改善要求の実現をめざす。
5.度重なる災害や新型感染症拡大のなかで、公務が果たしている役割が社会的に注目されている。一方で、行政や医療・福祉などの分野における脆弱さが露呈するとともに、長時間過密労働が押しつけられている実態に、体制拡充と処遇改善を求める声が高まっている。
秋のたたかいでは、地方人事委員会での改善勧告を求める取り組みをすすめるとともに、確定闘争として再任用職員と会計年度任用職員の処遇改善など均等待遇にむけたたたかい強化していく。独立行政法人での賃金改善を勝ちとるため、公務大産別の団結を強化していく。引き続き、全国一律最賃制の実現と賃金の底上げ・引上げとともに公務職場の地域間格差の解消に向けて全力をあげてたたかう。
6.地域手当の「大くくり化」や寒冷地手当の見直しなどによって、不利益変更を被る職員が生じないよう、公務労組連絡会は人事院に対して、具体的な説明と労使協議の場を設け るように一貫して求めたが、実現しなかったことは極めて遺憾である。われわれ労働組合との真摯な交渉・協議こそが求められている。あらためて公務労働者の労働基本権の全面回復を求めるとりくみを国内外で強めていく。
7.「官から民へ」のかけ声のもとですすめられてきた公務部門の民営化などの問題点が明らかになり、国民のいのちとくらしを守るために、公務が果たすべき役割が注目されている。今こそ「公共」を再生し、国民の手に取り戻す共同の運動を広げていくことが求められている。
官民共同のたたかいで、賃金引き上げなどの情勢を切り拓いてきたことに確信を持ち、全ての労働者のさらなる賃上げをめざす運動を職場から大きく広げよう。
公務労組連絡会は、新自由主義経済推進、大企業優先の政治からの転換をめざし、自らの要求と結びつけて、岸田政権がすすめる大軍拡・大増税路線を阻止するために全力をあげる。そして、憲法を擁護し、遵守する責務を負う公務労働者として、憲法を守り、いかすために職場と地域から奮闘する決意である。
以 上