和泉市職員労働組合blog~地域住民と働くなかまの幸せを願って~

全労連が「デジタル関連法案に反対」談話-国民監視社会に道開く

【談話】国民監視社会の道を開く「デジタル関連法案」に反対 ~個人情報保護の強化と国民生活の充実、利便性のためのデジタル改革を~

2021年3月9日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤 幸一

 菅内閣は2月9日の閣議でデジタル社会形成基本法案などデジタル関連6法案を決定し、今国会での成立を狙っている。全労連は、個人情報の保護を前提とした国民生活の幸福や充実のためのデジタル改革は必要だと考えるが、これらの法案は、個人情報の一元的管理による監視や情報漏洩による被害の危険性、民間企業による個人情報の利活用などの問題があり、反対である。しかも関連する法案を「束ね法案」として拙速な審議で成立させることにも問題がある。同時に、憲法13条で保障されている「プライバシー権」など個人情報保護法制の強化をはじめ、独立機関の設置と監視・規制とともに、強行成立された秘密保護法、共謀罪の廃止を強く求めるものである。

企業ではなく、国民の奉仕者であるべき
 東北新社とNTTの総務省接待や農林水産省の接待が明らかになった。一部の役人によって企業の利益のために行政をゆがめられることは許されるものではない。少なくない人員を民間から登用するデジタル庁についても、企業の利益のために行政がゆがめられないとも限らない。

デジタル庁創設による「個人情報」の国家管理と監視社会
 菅首相はデジタル庁創設によって(1)国と自治体のシステムの統一・標準化(2)マイナンバーカードの普及促進を通じた各種給付の迅速化(3)スマートフォンを使った行政手続き(4)オンライン診療やデジタル教育に関する規制緩和―などを実現すると述べている。最大の問題は、個人や産業のビックデータを国が一括管理するという点である。職場情報や各種給付金、各種免許、国家資格など、あらゆる個人認証や情報をマイナンバー制度に集約することは、国民監視社会に道を開く危険性がある。

企業の利益のために「個人情報」の利活用を狙う
 日本経団連は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進に向けて、国内の制度やルールを、官民が緊密に連携して変革していくこととしている。すでに動き出している「スマートシティ」構想では、データをリアルタイムに収集・分析するシステムが導入され、個人情報が利活用されており、さらに拡大することで企業の利益にしようとしている。また、「信頼性のある自由なデータ流通」のために、 WTOにおけるルール作り、二国間・複数国間での規制協力、WEF(世界経済フォーラム)などの民間の枠組みを活用することなどを提起している。膨大な個人情報を民間企業も利活用できるようにするだけでなく、国境を越えて利用することも考えている。いかなる理由があろうとも、私たちの個人情報を企業の利益のために利活用されるべきではない。

情報漏洩や社会的格差、排除の危険性
 過去には日本年金機構が約125万件の年金情報が外部に流出した事件があり、その後も同様の事件は後を絶たない。昨年、「リクナビ」を運営するリクルートキャリア社が、就活生の閲覧履歴などから採用試験の合否を左右しかない内定辞退率を勝手に算出、採用企業に販売するという問題が発覚した。またAmazonではAIによる人事採用システムが女性の求職者に不利な評価を行うという差別も発覚している。中国・杭州市ではAIが様々なデータから個々人の信用度を分析して点数化するスコアリング=信用スコアが行われている。この点数化が個々人の社会的評価や金融機関からの融資枠、行政サービスの優先、さらには就職や結婚相手の選定にも利用されている。しかし、こうした信用スコア利用は格差と貧困の固定化、差別を生みだしかねない危険性を持っている。

労働者の働く「権利」を脅かす恐れ
 コロナ感染防止対策をきっかけに政府・財界による「テレワークの定着・拡大」による柔軟な働き方が推進されてきた。経団連が1月に発表した「2021年版 経営労働政策特別委員会報告」では、「場所と時間に捉われない働き方」として、「テレワークはウィズコロナ・ポストコロナ時代の新しい働き方の重要な選択肢の一つ」とし、「労働生産性の向上(デジタル化推進含む)」を推し進めようとしている。法案は、転職時等において「使用者間で特定個人情報の提供を可能とする」としている。評価や勤務態度などの就労情報が企業間で利活用されることにより、憲法27条に定める労働者の働く権利を脅かしかねない問題である。

公共サービスの低下招く、「行政のデジタル化」
 行政手続きのデジタル化・オンライン化によって便利になる面がある一方、デジタル・ディバイド(情報格差)が拡大する恐れがある。デジタル化・オンライン化だけでなく、各種の手続きや問い合わせに対応する業務の存続が求められる。
 自治体の情報システムを国との標準化・共通化などを推し進める「自治体DX推進計画」は、国の制度に標準化させるもので、地方独自の施策が失われる危険性があり、地方自治の多様性と独自性を失わせる。これは、「住民の福祉の増進を図ることを基本」とした地方自治体の住民自治を侵害するものである。

個人情報の保護と自己コントロール権
 また、個人情報保護法制の一本化と地方自治体の個人情報保護条例の標準化も大きな問題である。地方自治体では、国による法整備よりも前に条例を制定してきたものを、遅れている国の基準に一元化されるからである。
 日本のような高度情報化社会では、国家や企業などに無数の情報が集積されている。本人の知らないところでやりとりされた個人情報が、本人に不利益な使い方をされるおそれがあり、どんな自己情報が集められているかを知り、不当に使われないよう関与する権利(自己情報コントロール権)を認めるべきである。

社会的運動の弾圧、排除の危険性
 政治的な信条や傾向のプロファイリングは、プライバシーの観点から厳格に規制する必要がある。
 ビッグデータの利活用により、時の政府や特定政党の支持への世論誘導、選挙での投票行為に多 大な影響を与えることが可能になる。また、蓄積された個人情報は、労働運動や市民運動など社会的な運動の弾圧、排除することに利活用される危険性があり、憲法19条に定める思想信条の自由を脅かす恐れがある。

 立憲主義、民主主義、法治主義を破壊し、憲法を改悪しようとする政治が続けられている。全労連は、働く権利やプライバシー権の侵害、思想信条の自由を脅かす恐れのあるデジタル改革関連法案については、重ねて反対する。
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