2023年4月3日
書記長 石川 敏明
岸田政権は3月31日、「次元の異なる少子化対策」として「子ども・子育て政策の強化について」(試案)を発表した。「次元の異なる少子化対策の実現に向けて」と副題を付けているが、その対策は限定的なもので、抜本的な保育施策の充実、少子化対策にはほど遠い。特に、一番要望が強かった保育士配置基準の見直しは、1歳児と4、5歳児の基準に対する運営費の増額のみである。これでは保育の質の抜本的な改善にはならない。自治労連は、保育士配置基準の見直しや保育士の処遇改善など抜本的な政策を、6月の「骨太方針2023」に盛り込むよう強く求める。
「試案」では、保育士配置基準について、保育士1人が受けもつ1歳児を6人から5人、4、5歳児を30人から25人にできるように運営費を増額するとある。これは、自治労連と保育部会、全国・地域の要求と運動が引き出した一定の成果である。また、児童手当の所得制限の撤廃と支給対象の18歳までの引き上げ、子どもの医療費を助成している自治体への「国民健康保険の調整措置を廃止」、学校給食の無償化の検討なども世論や運動によって盛り込まれた。
しかし、戦後70年以上変わっていない保育士配置基準自体はそのままである。公立保育所では、運営費の一般財源化(2004年~国庫負担・補助金から地方交付税措置)によって、使途・目的が制限されないことから、これまでも運営費増額による施策(3歳児20:1→15:1)を実施しない自治体が多く存在する。また、「試案」の実施時期や財政規模はいっさい示されていない。既存の子ども予算のやりくりだけでは実施は難しく、与党内からは国債発行や社会保険料に一定額の上乗せなどの案も出ている。
小倉少子化担当大臣は記者会見で、配置基準見直しに着手しなかったことについて、「基準自体を直ちに変えてしまうと、むしろ現場で混乱が起こる可能性がある」としている。このことは、保育士の確保が困難な現状を想定してのことだろうが、その原因と責任は、保育士の賃金を全産業平均よりも低く抑え、保育士配置基準の見直しに一切手を付けず保育現場に過重労働を押し付け、長年放置してきた政府自らにある。
保育現場からは、「この程度では現状は変わらない」、「配置基準を見直さなければ保育の質は向上されない」などの声が上がっており、近年頻発している保育事故や不適切保育の解決と、子どもたちの健やかな成長を保障するための保育の実現にはほど遠い。
自治労連も参加する「よりよい保育を!実行委員会」の国会請願署名は、現在105万筆以上を集約している。愛知の「子どもたちにもう1人保育士を!」の運動は、保育士と保護者の連携で全国に「保育士増やせ」の世論として広がっている。こうした声に応えるのが政治の役割である。
自治労連は、岸田首相が本気で「次元の異なる少子化対策」に取り組むというなら、大軍拡をいますぐに撤回し、その予算を子育てや社会保障に使うことを求めるものである。
以上
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