本日(10日)、大阪地裁において大阪市労組連・大阪市労組の組合事務所裁判で、橋下市長が組合事務所の明け渡しを求め使用不許可処分をおこなったことを違法とし、不許可処分の取り消しと国家賠償請求を認める全面勝訴の判決が下され、司法の場においても橋下市長の不当労働行為が断罪されました。
以下、大阪市役所労働組合、大阪市労働組合総連合、大阪市組合事務所裁判弁護団による声明を掲載します。
声 明
1 本日,大阪地方裁判所第5民事部(中垣内健治裁判長)は、橋下市長が、大阪市役所労働組合(大阪市労組)及び大阪市労働組合総連合(大阪市労組連。以下,両労働組合併せて「市労組ら」という)が大阪市庁舎地下1階において2006年以降継続的に使用してきた組合事務所について,2012年度以降その使用を不許可とし,市労組らに同事務所の明渡を求めた事件で、2014年度の不許可処分を取り消して、使用許可処分を義務づけるとともに、国家賠償請求を認容する市労組ら全面勝訴の判決を言い渡した。
2 判決は,大阪市が不許可理由として主張していた①市庁舎のスペース不足という点については、必要性があったとはいえないとし,主たる理由は、②労働組合が庁舎内で違法な政治活動を行うおそれを払拭ということであるが、違法な政治活動として指摘されていたことと組合事務所が市庁舎内に存在することとの関連性はなく、組合事務所において政治活動が行われる蓋然性が高いとはいえないとして、いずれも排斥した。その上で、橋下市長が組合事務所の明渡を求めるよう方針変更をした後に、労働組合等と交渉をせず、職員の団結権等を侵害するおそれがないか否かについて十分な検討をしたと認められないとして、労働組合に対する団結権侵害の意図を認定し、市長の裁量権を逸脱・濫用したものであり、違法と判断した。
また、2012年8月1日に施行された労使関係条例12条(労働組合等に対する便宜供与の禁止)については、これを適用することにより、労働組合法7条の不当労働行為に該当し、あるいは、憲法28条の団結権の保障を侵害することになる場合には、無効となるとして、組合事務所の使用不許可を適法とするものではないと判断した。
その上で,判決は,直近処分である2014年度まで、職員の団結権等を侵害する意思が継続してあったとして、2014年度の使用不許可処分を取り消した上で、橋下市長に対し、市労組らに対し組合事務所の使用を許可するよう義務付け、併せて、市労組らに対し各33万円の国家賠償を命じた。また、大阪市が市労組らに対し起こした事務所明渡請求訴訟については、権利の濫用であるとしてこれを棄却した。
3 本判決は、橋下市長就任後の労働組合に対する様々な団結権侵害を認定した上で、大阪市が主張していた組合事務所の使用許可・不許可に関する行政裁量論を乗り越え、司法により初めて橋下市長の労働組合攻撃を違法と断罪し、労働組合の拠点である組合事務所の継続使用を認めた点に、最大の意義がある。
さらには、本件組合事務所問題が起こされた後に施行された、不当労働行為条例ともいうべき労使関係条例の12条(便宜供与の禁止)につき違憲・違法無効としたのは、画期的判断である。
近時、大阪府下の他の自治体においても、橋下市長の手法に触発され、組合事務所や組合費のチェック・オフ等、労働組合への便宜供与を安易かつ一方的に剥奪し、それまで構築してきた労使関係を破壊する同様の不当労働行為が頻発しているが、これに対し司法による歯止めとなるべき内容となっている点でも、その意義は大きい。
4 橋下市長は就任後、組合事務所明渡要求に続き、全職員を対象とした「思想調査」アンケートの実施や、入れ墨調査アンケートなど、様々な職員・労働組合攻撃を行い、市役所の専制支配を続けてきた。その裏で、「市政改革プラン」によって3年間で約380億円もの市民サービスの切り下げを進めている。
市労組らは、市庁舎内の本件組合事務所を拠点として、職員の権利や職場環境を守り、また市民と共同して市民のくらしを守る活動をすすめてきた。橋下市長による違法な明渡要求を受けた後も、屈することなく不退転の決意で、その活動の拠点である組合事務所を守り続け、裁判・労働委員会において闘ってきた。
他方、大阪市・橋下市長は、本年2月20日には大阪府労働委員会において、本件組合事務所問題について大阪市の不当労働行為が認定され、同様の不当労働行為を行わない誓約文の手交を命じられたにもかかわらず、これを不服とし、中央労働委委員会に再審査申立を行い、争い続けている。
私たちは、大阪市・橋下市長が、司法によって厳しく断罪されたことを真摯に受け止め、本判決を控訴せずに受け入れること、また自らの誤りを認めて市労組らに謝罪し組合事務所の使用を公式に認めること、そして市労組らとの正常な労使関係を回復させ、市民のくらしを守る市政の実現に力を注ぐことを強く求める。
2014年9月10日
大阪市役所労働組合
大阪市労働組合総連合
大阪市組合事務所裁判弁護団