太宰治の『お伽草紙』ではかちかち山を新解釈で書き直し、美少女と男の宿命物語としています。
まず、兎を陰湿で残酷なものとして扱い、十代後半の潔癖で純真(ゆえに冷酷)な美少女に置き換えてます。対する狸は、その兎に恋をしているが故に、どんな目にあっても兎に従い続ける愚鈍大食な中年男として描かれています。
少女は敵討ちという名目で生理的嫌悪を感じている狸を虐待し、男は兎の歓心を買いたいばかりに嫌われてもただ従い続ける。「惚れたが悪いか」と言い残して溺死して水底に沈む男を見送る美少女が、汗を拭いながら美しい風景に微笑を浮かべて終わる、と言う少女の純粋さゆえの悪意と恋する男の惨めさを描いた作品となっています。
まず、兎を陰湿で残酷なものとして扱い、十代後半の潔癖で純真(ゆえに冷酷)な美少女に置き換えてます。対する狸は、その兎に恋をしているが故に、どんな目にあっても兎に従い続ける愚鈍大食な中年男として描かれています。
少女は敵討ちという名目で生理的嫌悪を感じている狸を虐待し、男は兎の歓心を買いたいばかりに嫌われてもただ従い続ける。「惚れたが悪いか」と言い残して溺死して水底に沈む男を見送る美少女が、汗を拭いながら美しい風景に微笑を浮かべて終わる、と言う少女の純粋さゆえの悪意と恋する男の惨めさを描いた作品となっています。
【本文より】
「おや?何だい、あれは。へんな音がするね。お前にも、聞こえないか?何だか、カチ、カチ、と音がする」
「当たり前じゃないの?ここはカチカチ山だもの。知らなかったの?」
「しかし、へんだな。いままで、おれはいちども、この山でこんな音を聞いたことがない。この山で生まれて、三十何年かになるけれども、こんな・・・」
「まあ!あなたは、もうそんな年なの?こないだ私に十七だなんて教えたくせに、ひどいじゃないの。顔が皺くちゃで、腰も少し曲がっているのに、十七とは、へんだと思っていたんだけど、それにしても、二十も年をかくしているとは思わなかったわ」・・・
「おや?何だい、あれは。へんな音がするね。お前にも、聞こえないか?何だか、カチ、カチ、と音がする」
「当たり前じゃないの?ここはカチカチ山だもの。知らなかったの?」
「しかし、へんだな。いままで、おれはいちども、この山でこんな音を聞いたことがない。この山で生まれて、三十何年かになるけれども、こんな・・・」
「まあ!あなたは、もうそんな年なの?こないだ私に十七だなんて教えたくせに、ひどいじゃないの。顔が皺くちゃで、腰も少し曲がっているのに、十七とは、へんだと思っていたんだけど、それにしても、二十も年をかくしているとは思わなかったわ」・・・
昔読んだ太宰治「カチカチ山」まだ本棚にありましたので少しだけ紹介します
【本文より】
(冒頭、筆者が意見を述べている部分)
カチカチ山の物語も、他のお伽噺に較べて、いくぶん荒っぽく出来ている。婆汁なんてのは、ひどい。いわゆる児童読物としては、遺憾ながら発売禁止の憂目に遭わざるを得ないところであろう。それゆえ、狸が婆さんに怪我をさせて逃げたなんてぐあいに、賢明にごまかしているようである。もともとこの狸は、何の罪もなく、山でのんびり遊んでいたのを、爺さんに捕らえられ、そうして狸汁にされるという絶望的な運命に到達し、それでも何とかして一条の血路を切りひらきたく、もがき苦しみ、窮余の策として婆さんを欺き、いわば正当防衛のために意識せずに婆さんに怪我を与えたのかもしれない。しかし、たったそれだけの悪戯に対する懲罰としてはどうも、兎の仕打ちは、執拗すぎる。一撃のもとに倒すというような颯爽たる仇討ちではない。生殺しにして、なぶって、なぶって、そうして最後には泥舟でぶくぶくである。その手段は一から十まで詭計である。これは日本の武士道の作法ではない。
私もそれについて、考えた。そうして、兎のやり方が男らしくないのは、それは当然だということがわかった。この兎は男じゃないんだ。この兎は十六歳の乙女だ。いまだ何も、色気はないが、しかし、美人だ。そうして、人間のうちで最も残酷なのは、えてして、このたちの女性である。けれども、男は、それも愚鈍の男ほど、こんな危険な女性に惚れ込みやすいものである。そうして、その結果は、たいていきまっているのである。
【本文より】
(冒頭、筆者が意見を述べている部分)
カチカチ山の物語も、他のお伽噺に較べて、いくぶん荒っぽく出来ている。婆汁なんてのは、ひどい。いわゆる児童読物としては、遺憾ながら発売禁止の憂目に遭わざるを得ないところであろう。それゆえ、狸が婆さんに怪我をさせて逃げたなんてぐあいに、賢明にごまかしているようである。もともとこの狸は、何の罪もなく、山でのんびり遊んでいたのを、爺さんに捕らえられ、そうして狸汁にされるという絶望的な運命に到達し、それでも何とかして一条の血路を切りひらきたく、もがき苦しみ、窮余の策として婆さんを欺き、いわば正当防衛のために意識せずに婆さんに怪我を与えたのかもしれない。しかし、たったそれだけの悪戯に対する懲罰としてはどうも、兎の仕打ちは、執拗すぎる。一撃のもとに倒すというような颯爽たる仇討ちではない。生殺しにして、なぶって、なぶって、そうして最後には泥舟でぶくぶくである。その手段は一から十まで詭計である。これは日本の武士道の作法ではない。
私もそれについて、考えた。そうして、兎のやり方が男らしくないのは、それは当然だということがわかった。この兎は男じゃないんだ。この兎は十六歳の乙女だ。いまだ何も、色気はないが、しかし、美人だ。そうして、人間のうちで最も残酷なのは、えてして、このたちの女性である。けれども、男は、それも愚鈍の男ほど、こんな危険な女性に惚れ込みやすいものである。そうして、その結果は、たいていきまっているのである。
昔話のカチカチ山をあの太宰治が解釈して書き下ろしたものです
【あらすじ】
昔話「カチカチ山」の狸は悪者とされてますが、
お婆さんに危害を加えたのは正当防衛では?
お婆さんの代わりに狸を懲らしめた兎は正義とされてますが、
本当にそうなのか?・・・
狸を醜い中年男性、兎を可憐な少女に例えて、あの「カチカチ山」
を新たな視点で描き直しています。
軽快な文調で、男の愚鈍さ、乙女の清潔さと残酷さを巧みに表現した
好短編です。
【あらすじ】
昔話「カチカチ山」の狸は悪者とされてますが、
お婆さんに危害を加えたのは正当防衛では?
お婆さんの代わりに狸を懲らしめた兎は正義とされてますが、
本当にそうなのか?・・・
狸を醜い中年男性、兎を可憐な少女に例えて、あの「カチカチ山」
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軽快な文調で、男の愚鈍さ、乙女の清潔さと残酷さを巧みに表現した
好短編です。
彼のメイクと衣装と演技で不気味さが・・・
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