Seriously?

ひとりごとです

映画 ◾️◾️お隣さんはヒトラー?◾️◾️

2024年08月11日 | 映画

全然期待しないで観に行ったのだけど

とても良かった
観に行って良かった
 
 
映画 ◾️◾️お隣さんはヒトラー?◾️◾️
 
 
言葉では多くは語られないけど
映し出されるものを通して
観客は主人公ポルスキーに
何が起きたのかを悟る
 
 
戦前のポーランド
3世代のユダヤ人家族が集まって
賑やかに庭でパーティーをしている
朗らかな笑い声と溢れる笑顔
たくさんのご馳走
くりくりした目に巻き毛の可愛い女の子
見守る両親と、またその両親
 
集合写真を撮る時
シャッターのタイマーをセットして
なかなかシャッターが押されないから
「あれ?」と心配して動いた瞬間に
パシャ!
 
みんな一度は経験したことのあること
どこにでもいる普通の家族
どこにでもある普通の毎日
 
観客はこの家族に
これから何が起きるか知っている
だからみんなの屈託のない笑顔に
胸を締め付けられる
 
 
時が変わって1960年代
南米コロンビアの山奥に
例のユダヤ人家族の1人が暮らしている
タイマーが待ちきれず
動いてしまったお父さんだ
 
もうこのシーンを見ただけで
観客は
ああ、このお父さんは
ホロコーストを生き延びられたのか!
もしかして他の家族はみんな
ガス室で処刑されてしまったのかも?
と、察する
 
シャワーを浴びるお父さんの腕には
囚人番号の焼印がある
自由を取り戻した今も、これからも
ずっとずっと残っている
 
 
過去からも、住み慣れた国からも
世間からも遠く離れて一人で暮らす
 
ある日
空き家だった隣の家が買われ
お隣さんが引っ越してくることになる
斡旋している女性は
よりによって忌々しいドイツ人
 
引っ越してきたお隣さんは
ジャーマンシェパードを連れてくる
ポロスキーに吠えたて、追いかけ回す
凶暴な見た目の犬は
収容所での恐ろしい記憶を
蘇らせてしまうじゃないか…
本当に、忌々しいとしか言いようがない
 
 
お隣さんがサングラスを外した顔を
偶然、見てしまった時に
「あの顔は
戦前、チェス競技会で見たことがある
あれはヒトラーだ」
と、思い込む
 
ここで観客は
「いや、ヒトラーは既に
自殺したのでは?」と思う
 
ポロスキーは
隣人がヒトラーであると感じるのだが
確証を得るために
ヒトラーについて調べまくり
隣人との共通点を挙げていく
 
 
 
ネタバレ感想
 
人と付き合う時
その人そのものではなくて
どこの国の人だとか
男だとか女だとか
どんな仕事をしている人だとか
そんなプロフィールを通して
その人がどんな人なのか
理解しようとしがち
 
私がポロスキーだったら
隣人が「ドイツ人」というだけでもうダメ
忌々しい、近づくな!と
心のシャッター下ろしてしまう
ヒトラーによく似た
癇癪持ちで横柄な態度
もう、見るのも声を聞くのも嫌だ
収容所で散々威嚇された
ジャーマンシェパードを飼っている
憎くて憎くてたまらない
 
 
だから
そんな、到底親しみなど
感じられるはずのない二人が
少しずつ少しずつ打ち解け
二人でチェスをしたり
肖像画を描いたりしていくのが
奇跡のように感じた
 
相手は憎っくきドイツ人であること
ヒトラーかも知れないこと
 
自分は
ホロコーストのサバイバーであること
全財産を没収され
収容所で恐ろしい目にあわされたこと
家族をナチスに殺されたこと
 
そんなプロフィールを外して
歴史を脱ぎ捨てて
丸裸の一人の人としてお互い向き合い
一緒にいることを楽しいと感じられるのは
素晴らしいことだと思った
 
 
そして
ヒトラーかも知れない隣人が描いた
ポロスキーの肖像画は
とても暖かくて
ヒューマニズムに溢れている
見ていると涙がこぼれるほど
感動的な絵であった
 
改めて思った
芸術というものは
人の心を震わせて
国境や言葉の違いなどを取り除いて
抱擁し合うようなものだ
 
一枚の絵で
お腹がいっぱいなったり
衣食住が満ち足りることはないが
空っぽの胸を
いっぱいに満たすことができるし
人と人との距離を縮めることもできる
 
 
そしてチェスというゲームも
負けても癇癪起こさないで
勝者を讃えたり
勝っても優越感見せつけないで
「いいゲームだったまたやろう」という
スポーツマン精神があれば
他人と楽しく時間を過ごせて
お互い歩み寄っていく
きっかけになるんだと思った
 
たかが遊びだけれど!
 
 
そして暖かい絵を描く
ヒトラーのそっくりさん
ヒトラーの筆致を真似るよう
叩き込まれて得た画風なのかも知れないが
 
自分として生きることを禁じられ
世紀の殺戮者の影武者として
高飛車な癇癪持ちを演じて
生きていかなければならなかった
そっくりさんも
戦争の犠牲者とも言える
 
見つかれば戦犯として
重罰に処せられることになるが
 
 
ポロスキーは
自分の身に起きたこと
ナチスの残虐な殺戮を
忘れて生きていくことはできないが
 
憎しみも
家族の復讐をしたい気持ちも
お隣のヒトラーのそっくりさんの前では
不思議と
もういい、と思えてしまう
 
復讐を果たす代わりに
ヒトラーそっくりさんと
暖かい思い出を作って送り出した
 
 
何と言えばいいのでしょう
「恩を仇で返す」の逆
憎しみを思いやりで返したのです
そしてそうすることで
パラスキーの心は救われたのです
 
 
どんな境遇にあっても
まだまだ
「世界の終わり」ってわけじゃない
言われているような気がしました
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