六本木から離れたある隠れたレストランでお会計を済ませようとしたとき、
彼の財布に、ちらりとブラックカードが目に着いた。
「それはブラックカードですか?」
「このセンリチュリオンは、息子のだ。」
私は、興味をそそられて質問を続けてしまった。
「息子さんは、どうやって入会したのですか?」
彼は、さらっと答えてくれた。
「
勝手に届くよ。カードで買い物してれば。
これがほしいのか?
」
笑いながら問いかけてきた。
「手に入れられるものなら、欲しいです。」
彼は、ぺらぺらと話し始めた。
「
センリチュリオンカードなんて、誰でも手に入れられるよ。
カードで買い物してればな。
東京の経営者やミリオンワーカー(年収1000万以上のサラリーマン)は、
この黒色のカードを目指して、稼ぎまくるとか、
それが人生のチャレンジだとか、いかにも狭くて体臭のする生き甲斐しか見えていないそうだな。
」
「
そうなんですか?
日本は年収1000万以上の人間でさえ、狭くて臭いがする人種が多いのですか?
」
「
このセンリチュリオンカードを手にすると、
どの国に行っても、ある程度何かの息がかかった評価の高いレストランや名が知られた店に行くと
自己紹介も何も言ってないのに、店員たちが勝手に人の名前を呼んできたり、秘密のVIPルームに案内してくれたり
無料で送り迎えしてくれたり、とにかく大臣になったかのような権限の高い気分を味わえる。
今までに面白かったのは、株主になってくれって話もあった。
息子はそういうのが好きだからな。
それが生き甲斐だというのは人間の欲望のままだ。
私はそういう何かに資産を見張られてるものが気持ち悪くて、基本、カードを持たないようにしている。
」
公園で、風を浴びながら、私は小さい質問してみた。
「
でも、なんであなたはカードを持っているのですか?
息子のブラックカードを。
」
彼は、ファニーに答えてくれた。
「
賭けをした。
私がカード嫌いなことでちょっとした言い争いになったんだが、
もしカードを使って私が笑顔になったら、
その名前を私の名義にするっていう賭けを。
」
私は、納得がいかない質問をした。
「
ブラックカードって、誰でも入会できるようなものではないでしょう。
収入が富裕層レベルで、ある程度金持ちで、その中でも特別なものにしか、招待がこないとか?
」
彼は、この質問に食いつくかのように答えてきた。
「
アメックスセンリチュリオンが、特別だなんて、誰が決めたのだ?
カード会社にとって、気に入られた者だけに、招待しているカードであって、
気に入られたからって特別だと思う思い込みを創り出している、そういう狭い苦しいのが、
いかにも体臭だと言っているのだ。
日本人は、本当にバカだよな。
それで、これが他にどこが特別だと思う?
」
「
プラチナやゴールドの制限や上限とは違って、桁違いな買い物ができるとか?
」
「
アメックスセンリチュリオンには、上限がある。
しかも、それは人それぞれの上限だ。
トランプのマンションを買える限度から、アメリカの戦闘機から新型の兵器を買える限度とさまざまだ。
お前が、もしブラックカードを持ちたいというなら、その制限はプラチナやゴールドと変わらないかもしれないな。
けれど、それもカード会社に許され、気に入られただけのルールだけであって、
気に入られなくなれば、使えなくなるし、カード会社にスポットライトを照らされても、何も面白くもなければ、逆に気持ちが悪い。
狭い日本人たちは、上ばかりしかみることができなくて、その上を手に入れたら、
あとは、周りの人間たちに自慢したいだけだろう。
そんなにそのカードで特別だと思われたいのか?
そんなにこのカードが凄いと感じるのか?
入会して、ブラックカードを持った者たちが集まるパーティに招待され、特別になったかのような格上の気分を味わいたいのか?
それが、お前の人生の幸せだというのか?
」
私は、納得した。
すると、彼は財布からあるカードを一瞬だけ私に見せてくれた
「
そんな日本人のために、お前だけに、特別に見せてやるよ。
これは、私が急を要した時に使う秘密のチタンカードだ。
息子のこのセンリチュリオンよりも、格が上だ。
」
「
ブラックカードより、上のカードってあるんですか?
」
「
大衆の意識、情報意識に駆られているな、お前は。
当然、ブラックカードより上のカードはある。
が、それは誰にも知られていない、カード会社のスタッフでさえ知らない世界のカードだ。
決して知られない密約が交わされたカードだ。
」
彼は、何もなかったかのように瞬時に雰囲気と話を変えた。
「
お前に失望する前に、もう一つだけ質問がしたい。
赤坂と六本木、どちらが好きだ?
お前は、六本木にいつか住みたいって言っていたよな。
」
私は、持論で答えた。
「
はい、六本木が好きです。
銀座や日本橋と比べたら、新しい町って感じで、世界と繋がっているところに感じるからです。
赤坂には、良い思い出がありません。
赤坂の、占い専門の大手IT会社の面接に行ったとき、面接官の女たちに、屈辱的な面接をさせられ、そんな思い出があって、今でも不愉快な思いがあります。
また、赤坂は、地形が山あり谷ありのようなでこぼこしてるようですし、
私のような年代で、あんな品格が高く上品な層の人たちといるところには、少々住み辛いかと。
」
「
やっぱり、
お前は馬鹿で邪道な成功者になりそうだな。
私は、一度、学生時代に世話になった、日本の友人に誘われ、六本木の自宅マンションに行ったことがあるよ。
六本木のマンションは、若い成功者が多いせいか、
よくホームパーティや合コンパーティで騒音トラブルが多く、
若い女医からレースクイーン、キャビンアテンダントや大手銀行の受付嬢を呼んだりして、たびたび深夜までうるさいそうだ。
何せ、自宅での時間を大切にする経営者たちにとって、それはかなりのトラブルや苦情は多いみたいだ。
実際に、友人と六本木の町を歩いていたとき、へらへら気取った若者や、顔に似合わない化粧とドレスを纏った連中は多かったな。
一度、ちょっと成功したからいちいちパーティをする若者の血の気は、
分かりやすい獣でしかない。
酔った勢いで、ドレスの似合わない女と一夜を過ごしてしまって、後日その女にレイプされたと訴えられて、せっかく波に乗ったばかりの会社をあっという間に失った話も聞いたことがある。
所詮、そんなもろい会社だったってことさ。
そんな成功者だけでなく、
六本木には、
憧れの街だと思って、成功だと信じ込んで、成功を真似して、成り上がってきた気分で住み始めた青二才もたくさんいる。
成功方法だと高額な料金で、思想やロジックを信じ込まされ、それで成り上がったつもりで生きている人間たちをな。
そういうのを外道の連中(外道成功者)と、友人は言っていたよ。
自己啓発だか、コンサルだか、ネット商売だか、会社間に挟まれた二番煎じのつもりの会社なのか知らないが、
それで大金を稼いだ金は、あっという間になくなりやすい方向へいきやすいんだよ。
そういう血の気を持っている人間は、チャレンジだとか、チャンスだとか、運命だとか、可能性だとかを新興宗教みたいに信じ込んでいるからな。
そいつらにとっての、カリスマブランドって、一つの劣等感と優越感を保つために成り立つ、精神世界でしかない。
そういうのがある限り、一気に訪れた大金は、いつか一気に消えやすい。
資産は愛であり、その愛を欲望に使って、人生最高の爽快とやらに感じたいだけか
それとも、人々のためにさらなるその愛の運用に回せるかどうか
お前には、そんな資質はないと見た。
赤坂(ミッドタウン)のいいのところは、
そういう愛を人々へ運用することで、自己の完全なる充実が成立されているようで、その完璧な世界で自分が生きているような人々が多かった。
だから、私は居心地よかったよ。
東京のあの街がね。
」
私は、その話を聞いて、思い出すかのように実感した。
「
私がスピリチュアルエナジーワークスを学んできて、
何の愛も学んでいなく、育成プログラムを学んできたからって、
ヒーラーやセラピストを気取って、変に過剰にネットやHPで募集しては、
そんな愛や理性として人格に欠点のある人間ばかりが引き寄せられ、
高額なお金を出しては、それは宗教的な信仰が深まるばかりにしか見えず、
いつの日か、その欠点は変わらず、成長も進化もなく、
その連中も育成プログラムを受けて、成長のない欠点的なセラピストたちが生まれていくのを
たくさん見てきたことがあります。
私は、それこそが、外道のスピリチュアルセラピストだと悟り、
このスピリチュアルスクールや伝授セミナーでは、自分の幸せな人生のためには、何も学ばないなって悟りました。
そういう連中が次々と・・・集まってくる時点で・・・。
確かに、それは外道だと思います。
真の成功者ではないわけですね。
」
しばらく、沈黙が続くと、
彼は、オーラや波動、空気を一気に変えて、陽気にこう言い出してきた。
「
今度、私に、最高のおいしいもんを食べさてくれ。
今、八王子に住んでいるのだろう?
ならば、八王子で一番うまかったものを、食べさせてくれ。
お前のおごりだ。
ただし、お前がもしその食べ物を食べて、生き返るような顔を見せてくれなかったら、
私が代金を支払う。
」
「
生き返るような顔?
」
「
そうだ、
本当にうまいもんを食べたら、人は、生き返るような顔になる。
いや、お前の場合は活き活きした顔になるよな。
お前の光・・・その感性は本当に面白い。
」
「
分かりました。
ありがとう。
これは、自己の宇宙の理とするよ。
死んだような人生は、私の世界では存在しないのと同じだ
つまり、その人生は許されない
ってね。
本当にありがとう。
」
>ソウルエンライトメントとは?
宇宙の叡智は、常に天で待っている。
その感謝を込めて
良い光を。