平成30年7月に昭和55年以来の約40年ぶりの大幅な見直しとなる相続法改正法案が可決されました。
改正法は,大きく分けると,
1 配偶者の居住権確保
2 遺産分割などの見直し
3 遺言に関する見直し
4 遺留分に関する見直し
5 相続の効力に関する見直し
6 相続人以外の者の貢献を考慮
の6つに分けられます。大まかな内容について,確認しましょう。
まず,
1 配偶者の居住権確保
については,①短期居住権と,②長期居住権の2種類が新設されます。
①短期居住権とは,配偶者が相続開始時に遺産に属する建物に居住していた場合には,遺産分割が終了するまでの間,無償でその居住建物を使用できるようにする(新民法1037条~1041条関係)というものです。
これは,最高裁平成8年12月17日判決の考え方を元にして,配偶者の居住を確保しようとするものですね。
一方で,②長期居住権とは,配偶者の居住建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用を認める法定の権利を創設し,遺産分割等における選択肢の一つとして,配偶者に居住権を取得させることができるようにする(新民法1028条~1036条)というものです。
現行民法では,配偶者が居住建物の所有権を取得して住み続ける場合には,居住建物の評価額を差し引かれた相続分となってしまうため,預貯金等の居住建物以外の相続財産が減少してしまい,生活に困窮するという大問題がありましたが,このような不都合が大きく改善されることになりますね。
次に,
2 遺産分割などの見直し
については,①持戻し免除の意思表示推定,②遺産分割前の払い戻し,③遺産分割前の遺産処分の不都合是正が新設されます。
①持戻し免除の意思表示推定とは,婚姻期間が20年以上の夫婦間で,居住用不動産の遺贈又は贈与がなされたときは,持ち戻し免除の意思表示があったものと推定し(新民法903条④),被相続人の意思を尊重した遺産分割ができるようにするものです。
対象を居住用不動産に限定し,要件も明確で分かりやすく,高齢配偶者の生活保障にもなるということで良いことだらけのように見えますが,被相続人による「遺贈又は贈与」が要件となりますので,注意が必要です!
②遺産分割前の払い戻しとは,相続された預貯金について,生活費や葬儀費用の支払い,相続債務の弁済に充てられるよう,遺産分割前にも払い戻しが受けられる制度が新設されます(新民法909条の2)。
現行民法では,相続人の誰かが一旦負担しているケースが多かったと思われますが,このような不都合が解消されますね。
③遺産分割前の遺産処分の不都合是正とは,相続開始後に共同相続人の一人が遺産に属する財産を処分した場合に,計算上生じる不公平を是正する方策を新設する(新民法906条の2)というもので,具体的には,ⅰ共同相続人全員の合意をもって処分された財産が遺産として存在するものとみなして遺産分割を行うことができ,ⅱ処分をした共同相続人に関しては同意を要しないとされています。
相続における使途不明金問題のうち,相続後に共同相続人の一人によって財産処分がなされた場合などに有効です。
今日は,これぐらいで,続きはまた今度にします
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