いそご文化資源発掘隊-根岸の大聖院を訪ねて-
ツアー参加者 野村清一
桜の開花宣言も聞かれ、春風駘蕩三月七日午後のひととき私達は集合場所のJR根岸駅前街路広場に集いました。そこには根岸中学校昭和六十三年度卒業生達による記念労作「根岸地域歴史散策マップ」標示板があり、語りかける様にこれから訪れる大聖院に期待のトキメキを感じさせてくれました。
根岸駅から丁度正面あたり山裾に位置する正式名稱「根岸山大聖院覚王寺」で真言宗の寺院です。寺暦は古く、天文五年(一五三六年室町時代)現在南区堀の内に建立の、宝生寺智尭上人の開山で、参道には弘法大師第十五番・市内観世音第二十一番の石標ほかお地蔵様があります。
新緑一杯の背景に手入れの行き届いた植え込みの境内に佇む時、根岸街道の騒音は聞えず陽光の息吹き静寂の境地に心の安堵感を深くしたところです。
本堂には古い御仏のご本尊「阿弥陀如来三尊」「阿弥陀如来と脇侍の観音菩薩と勢至菩薩」と弘法大師並びに不動明王が奉られています。また欄間には「雨乞の滝」の彫刻がありこれは元禄造立からのもので、昭和八年に二十八世興善上人が本堂再建時にそのままはめ込まれたもので極彩色の美事な彫刻です。
ちなみに現ご住職の鷲雄興勝師は三十一世にあたられるとのことでした。
そうした歴史の変遷の中で今回私達は「大聖院本堂外陣天井画」に描かれた「赤い龍」と出逢い、拝見する事が出来ました。
作家は、昭和五十九年に文化勲章を受賞され「赤の画家」と呼ばれた奥田元宋画伯で、「青の画家」と呼ばれた東山魁夷氏と並ぶ日本画壇の双壁を成す大家です。
作品は、横八尺・縦四尺の大作で見事な赤の色彩で描かれており、只只感動の至りでした。加えて門人十七名の方がたの四季の花が二尺四方に描かれており、正に絵画芸術の文化戝的な要素が秘められた作品かと思いを深くしたところです。
この作品の誕生は、奥田元宋画伯の夫人芳泉院(故龍子様)の七回忌菩薩を弔い制作されたものであり、昭和五十六年一月に開眼供養が営まれた後奉納された天井画等のお話をお聞きし、併せてそれまでに至るご心情に思いを馳せ改ためて興勝師に深謝しつつ感想と致します。
なお付言させて頂きますが、
赤の巨匠・奥田元宋画伯は二〇〇三年(平成十五年)二月十五日永眠。
青の巨匠・東山魁偉画伯は一九九九年(平成十一年)五月六日永眠。
共に奇しくも九十歳。合掌
【2008年3月21日の記事です】
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