今日の俳句「涼し」

睡蓮や鯉あぎといて泡二つ
荒天の道を占めたる蚯蚓かな
これよりは隠居仕事よ空蝉よ
雨音のさ走る朝の涼しさよ

今日の俳句「千日紅」

あなにやし千日紅の音符かな
硝子戸を遡りたる夕立かな
夏の朝鳩の羽音の明らかに
大雨に打ちひしがれし蜻蛉かな

今日の俳句「空蝉」

梔子の日照雨あがりて香りけり
犬の餌啄ばむ雀寝茣蓙かな
梅雨晴や車の屋根に猫二匹
端居より雀に吠える小犬かな
老いてはや時の早きや空蝉よ

今日の俳句「夕菅」

行々子汽笛鋭く鳴りにけり
醜草に沈みし畦や梅雨きのこ
水遊び犬も邪魔する庭手入れ
夕菅や焦げんばかりの大浅間
雨斜め瑠璃音高し夏館

今日の俳句「禅定花」

禅定花野反湖へと流れ咲き
箱積みの上州駄菓子雲の峰
畦道を踏み来し下駄や夏の露
曙のすがしき大気トマトかな
犬昼寝そつと上掛け掛けてをり

今日の俳句「梅雨きのこ」

今年はや同じ処や梅雨きのこ
かる一羽水田に残る夕間暮れ
浅間より良き風吹きて蓮咲けり
燕の子花のようなる口をあけ

今日の俳句「風薫る」

おちこちに声沸き起つや揚花火
見馴れたる上州牛や夏茜
苺摘む赤城茜に染まりけり
梅雨晴や上野の森のルーヴル展
鐘の音とルーヴル展と風薫る

今日の俳句「忘草」

葉隠れの蓮を撮りけり朝ぼらけ
雫して南瓜の花のあえかなり
火の山を隠す靄あり忘草
捩花の咲き乱れしや雨の朝
忘草山道忽と消えており

今日の俳句「洗膾」

七夕や川面を渡り来る風も
久々に友垣集う洗膾かな
畦道に音符のようなかる親子
紫陽花や一山靄に覆われし

今日の俳句「いかづち」

曙の植田に映る鳩の群
ひざまづき茄子採る農婦腕太き
山靄う忽と現る黄菅かな
蝉時雨妻も手伝う庭手入れ
いかづちのごろつと鳴りてそれつきり