今日の俳句「桜鍋」

桜鍋郷(くに)の山河の定かなり
広つぱに小犬も追うは枯葉かな
跡継ぎのなきまま畑の冱つるかな
時雨れるや上州大地二重虹
小春日や缶ドロップの音たしか

今日の俳句「霜柱」

小走りに朝刊取りし霜柱
白鳥の二列に長き越後かな
彫り深き越後三山根雪かな
寒暁の空を仰ぐやキラキラよ

今日の俳句「冬帽」

大風に我が冬帽の軽さかな
さつくりと五家宝食ぶや小六月
冬紅葉炎だちたる奇岩かな
父母の顔の浮びし桜鍋

今日の俳句「囲炉裏」

山茶花の散り重なりてほしいまま
枯草や打ち捨てられし猫車
朝日うけ襞あらわなり冬赤城
風止んでたそがれ迫る囲炉裏かな

今日の俳句「北颪」

小春日や供笥に添えたるみすず飴
格子戸を出ずるや山茶花ふふみをり
彫り深き山より生まる北颪
寒暁の台地を包む茜かな

今日の俳句「霜見草」

雪ん子のすきつぷするや九十九折
曉紅をうけて榛名や霜見草
岩に落つ紅の落葉や逍遥園
逍遥園日のかげ揺らす落葉かな

今日の俳句「小六月」

あめ玉を含みてふわり小六月
雨含み茎を反らせし寒薔薇
また一人寒鮒釣りに入りをり
曙に冬稲妻の破裂かな

今日の俳句「冬峠」

褪せしもの彩りしもの冬峠
よんどころなく流れ来し冬の雲
深呼吸刹那に白き息となり
おれんじの暈して日あり枯木立

今日の俳句「炬燵」

一瞬に連山染めし冬落暉
信濃路のカーブミラーや冬黄葉
常よりも早き炬燵や犬欠伸
今生のものとおもえぬ冬落暉

今日の俳句「山茶花」

山茶花の散り重なりて蘂長き
小春日やジャズにはずみし菓子倉庫
繁忙の菓子の季節や冬日和
初雪の早やも奏でる浅間かな
山に落つうら悲しけれ冬落暉