小学生女子をおチビちゃんと呼ぶオバちゃん。オバちゃんは弁当を取りに来て女子と会うと必ずハグをする。ガンの経過を診る為に二ヶ月に一度、通院しているが、不安と緊張で前夜から眠れないと言う。通院に付き添う家族はいない。昨夜「おチビちゃんも病院に行かない?」と言うので、学校があって行かれない女子は、小さな鳥のぬいぐるみを渡した。「これを私だと思って病院に連れて行ってね。そうすれば怖くないから」そう言って別れた。
今日の昼オバちゃんは病院へ行った。無料弁当を持って行き、長い待ち時間のあいだに食べたらしい。医者からは「よくなっているので、このまま頑張って下さい」と言われたと、嬉しそうに報告。「よかったぁ~」と二人で喜びあっていた。
オバちゃんは、ここに弁当を取りに来る前は、食費を削るために食べる回数を減らした生活をしていた為に、栄養が足りていなかったのか足取りも重く、店まで来るのもやっとだった。店についてからも、しばらく座って休んでから帰っていた。ここに来て、無料弁当を三個持ち帰り、その日の夜、翌朝、翌昼と三食とるようになってから、見違えるように回復した。シャキシャキと軽快に歩くし、以前よりも顔色がよくなり、何よりも表情が明るくなった。
毎晩の女子との交流も、オバちゃんの楽しみのひとつになっている。「ここの弁当とおチビちゃんのおかげだよ」女子のことをおチビちゃんと呼ぶが、背の高さはほぼ同じである。女子があげた鳥のぬいぐるみには、無くさないようにつけたという、もうひとつのぬいぐるみがついていた。
「それで、この白いのは何なの?」「ベイマックスっていう、やさしいヒーローなんだよ」「やさしいヒーローか……あんたみたいだね」「そんなんじゃないよ」「また二ヶ月後、病院へ行くときに連れて行くね」「うん」
「カワイイ孫ができたみたいだ」と、以前にオバちゃんは言っていた。今夜も女子から元気をチャージ。
この毎晩の、わずかな女子との時を、つなぎ合わせて、オバちゃんは生きている。
オバちゃんは、来た時と同じように、ぬいぐるみを大事そうに抱えて帰った。
「元気になってよかったね」と、見送りながら私に言う女子。
本当によかったね。
君のおかげだよ、やさしいヒーロー。
(4/25のTwitterより 一部修正)
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