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One Step ~ 橋本新企画公式ブログ

16)赤羽の片隅から~無料弁当雑記

4/25(日)夜。

たまたま外に出ていた時間に、大柄な男性が弁当の入った箱を覗きこんでいた。体格に似合わず、大事そうにひとつだけ持って去ろうとするので、思わず声をかけた。「こんばんは」「……」「2、3個持って行ってもいいんですよ。今夜は余っているし」後ろ姿で、もしやと思っていたが、やはり見たことのある顔だった。

1週間ほど前から見かけるようになったホームレスで、弁当の作業が終わった深夜、帰り道に商店街で見かけてから気になっていた方だ。閉店後のシャッターに寄りかかり、大量のビニール袋に囲まれながら、携帯でゲームをしていた若者だ。話しかけたいと思っていたが、毎晩寝床を変えるので会えない。

昼間に公園で見かけたときもベンチで熟睡していてタイミングが合わず、翌日の同時間には同じ場所にいない。スタッフや近所の方に、見かけたら教えてと言っていたが、目撃情報は無かった。路上に出てからまだ日が浅いはずで、居場所を探してウロウロとしているのだろう。ずっと気になっていた。

二日前の夜、小学生女子と母親と共に弁当配達した帰りに彼を見かけた。店の近くにあるマンションの角に座りこみ、携帯ゲームをしていた。恰幅がよく堂々としているので、酔っぱらいにも見えるのだが、間違いなくあのホームレスだ。しゃがみこみ、できるだけ目を見て話しかけた。「こんばんは」

「お弁当配ってるんですけど」「必要ないです」大抵の方は一度拒否をする。ここであきらめてはいけない。「明日の朝ごはんに、いかがですか」「大丈夫」「あそこのビルの脇で、毎晩21:30から弁当出しているので、必要になったら取りに来て下さい」「……」へこたれてはいけない。「私、その店の者で、ハシモトと言います。寒いので気をつけて下さいね」話しかけるのは苦手でいまだに慣れないのだが、女子が真剣に見ているので、そうも言ってられない。

そして今日、その彼が自らの足で取りに来たのだ。「これ弁当の中身は全部同じですか?」と質問までされた。昨夜はどこにいたかも聞くことができた。落ち着ける場所を探して、うろうろしているようだった。無料弁当の事をまた新たな方に伝えることができた。

「いま話していた方って、もしかして……」店内で待機していたスタッフが驚く。「誰だと思います?」二日前に一緒に行ったスタッフに、先日出会った彼だと伝えると「あの時は全然話さなかったのに」と、目を丸くして驚いていた。

誰もが目を背け、見えていないフリをする。寝そべり、地上20センチほどの高さの目線で携帯ゲームの画面ばかり見ている彼。
誰にも話しかけられず、透明人間になった気分だろう。そんな人に伝えたい。
大丈夫、見えているよ。いつも心配しているよ。そして、いつか必ず助けるよ。

(4/26のTwitterより 一部修正)
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