明朝に区役所へ行く予定の方は、今夜も早く取りに来た。明日の待ち合わせ場所と時間を、念の為に確認する為、役所へ同行する支援者も訪れた。申請する前の、最後の面談。「見て下さい」と帽子を脱ぐ。何を見ればいいか分からずに戸惑う。「今日100円拾ったんです。それでカミソリ買って頭を丸めたんです」
その時に切ったのであろう、大きなカサブタができていた。「サッパリしましたね」元々どんな頭なのか知らないので、どれぐらいキレイになったのかは分からない。着ている服も、洗濯こそできないが、キレイに拭いたと言う。「役所へ行くから、少しは清潔にしようと思って……大丈夫ですかね?」「キレイ好きなんですね」照れ笑いする彼。「路上に出てからの数年間、そして、役所へ行くと決まってからのこの数日間、よく頑張りましたね。」「……はい」
「明日、すぐに宿泊所に入れるかは分かりません。けれど、ひとつだけ確かなことがあります。もう二度と路上で寝ることはありません。今夜が、路上最後の夜です」私は、彼が路上で3回襲われた経験がある為に、夜に熟睡できない事を知っている。夜は仮眠をとり、昼に公園のベンチで睡眠をとっていると聞いた。どちらも浅い眠りだろう。「ホントに大丈夫ですかね」「家も、お金も、何も持って無いという事を正直に話せばいいんです。何も後ろめたく思うことはありません。貴方が生きることを憲法が保障しているんです」「でも、今まで3度も断われてきて……」大丈夫、きっとうまくいきます。「明日、必ず遅れないように、待ち合わせ場所に行って下さいね」
「あの……カミソリありませんか?襟足に剃り残しがあって…」無かったので寄付金の中から500円を渡そうとすると、受け取れませんと拒んだ。いいからいいからと、無理矢理持たせた。お金をあげることは、普段はしていない。困っている方全員に同じことをできないからだ。けれど、この日はどうしても渡したかった。彼が、必要としているものを要求してきたのは、この時が初めてだったからだ。
「襟足なんて、誰も見ないと思いますけど」と言うと、照れ笑いしていた。しっかりしていて、どこまでもキレイ好きな方だった。
何も心配いらないと励まして、最後に握手をして別れた。彼は私が教えた近所のスーパーへ、最後の段ボールを取りに行き、寝床へ向かった。
よく頑張りました。お疲れ様。
(4/27のTwitterより 一部修正)
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