無料弁当50個、お菓子、マスク、保存食を21:30から出して23:00過ぎに残9。取っているところを人に見られたくない奥ゆかしい方がいるので、できるだけ外に人がいないようにしていたのだが、犬と戯れたり、利用者と話をしていたりすると、外に数名いることになる。通りかかった方がそれを見て無料弁当の存在に気づくこともある。
半年ほどやっているが、未だに初めての方が来る。今夜も初めてと思われる方が数名来て、弁当を持ち帰った。月イチで病院に行くおばちゃんは、今日が病院に行く日だった。「何ともなかった」と、笑顔で報告してくれた。
今夜も路上脱出1号のアパートに弁当配達に行く。
金が無いので酒を呑んでおらず、珍しくシラフ。食欲が無いというクセに、昨夜の弁当は完食している。「オレみたいな、どうしようもないヤツに、どうして優しくしてくれるんですか?」彼と初めて会ったのは、店の近くのビルの駐車場。冬の寒い夜。荷物は無く、段ボール2枚で体を丸めて寝ていた。
「こんばんは、ご飯食べてますか?」と問いかけた私に彼は言った。「助けて下さい」と。だから、酒を呑み、何度も脱走を繰り返す彼が、その度に聞く「どうして優しくしてくれるんですか」の答えは、いつも同じ。「初めて会った時に、あなたが『助けて下さい』と言ったからですよ」「あぁ…」
「『屋根のある生活がしたい』って言ったじゃないですか?だから、月末でアパートを解約して、どこかに行くなんて言わないで下さい」「いつも弁当運んでもらって、悪いですよ」「少しでも悪いと思うなら、お酒を呑まないで、治療を続けて下さい」「……はい」痩せ細り、弱っている。頭も朦朧としている。
それでも酩酊している時よりは、しっかり会話ができる。福祉課と連絡がとれない土日が、地獄のように長く感じる。せっかくエアコンがあるのに電気代が勿体無いと言うので、扇風機を持ってくると伝え、月曜にケースワーカーに電話し、役所ヘ行く約束をする。「ひとつお願いがあるんですが……」「え?」
「お風呂券頂けないでしょうか」彼は役所ヘ行く前日は、必ず入浴する。「明日持って来ます」もうヤバイ、ガンかもしれないと言っていた彼を、やっとここまで回復させた。酒に弱いのは、だらしないからではなく、弱いから。弱いことは悪いことではない。弱いことは罪ではない。
一進一退の日々は続く。
(6/27のTweetより 一部修正)
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