小学生女子から、弁当づくり中に外で待っている方がいるという報告があった。時間まで待ってもらうように伝えたが、少し寒いので、心配になり見に行くと、面談予定の彼だった。待ち合わせ時間より、だいぶ早い。支援者は既に来ていたのだが、店内の準備が整うまで、待ってもらうことに。その間、横に座って、話を聞くことにした。
「あの……去年の10万円の給付金って、どうなったんですか?」「申請の締切が過ぎていて、今からではもらえないはずです」「そうですか…」「住まいが無い方でもネットカフェなどを住所にしてもらうことができたみたいなんですが……その事を知らない方がほとんどです」役所から誰かがホームレスの寝床に来て、教えてくれるわけでもない。
「もうもらえないんですか……」と落胆する様子。昨年の事を思い返す。私は東京拘置所内に服役中の知人の家に届いた給付金の申請書を、当人の許可を得て代理申請し、無事に受け取ることができた。また別の方の依頼で、店を仮の住所として、他区に住民票の残っていたホームレスの申請用紙を受け取る事もできた。もっと早くホームレス支援をしていたなら、もっと多くの方に給付金を届けることができたのにと思うと、悔しい。
ホームレスは給付金の情報自体を知らないか、始めからもらえないとあきらめている方がほとんどで、実際に受け取れた方は少なかっただろうと思う。自ら役所へ出かけて行っても冷たく対応されたかもしれない……と、ふと昼間の違和感が頭をよぎる。彼が私にしたのは生活保護の申請の話かと思って聞いていたが、もしかして給付金をもらいに役所へ行ったときの話をしていたのではないか…。
「これからどうなるんでしょうか…」という彼に生活保護について説明をすると「生活保護って何ですか?」と言う。やはりそうだった。住所が無いからと役所を追い返された話は、給付金の問い合わせであった可能性が高い。対応した役所の方が親切に対応していたら、給付金を受け取れていたかもしれないし、その時に生活保護へと誘導していたら、辛い思いをすることもなかったと、やりきれない気持ちになる。
役所へ同行する支援者との面談の間、私は外で待っていた。面談を終え、店の外へ出た彼は、待っていた私を見つけるなり「初めて話を聞いてもらえました」と明るい声。「今まで誰も聞いてくれなかったのに…初めて聞いてくれたんです、私の話を」もう何も心配することはないですから。「赤羽に来て、本当によかった」
彼は後日、役所へ行くことになった。支援者の予定と、役所の開いている日の都合上、土日を挟み5日間ほど後になる。
それまでは公園で寝泊まりをして、一日三食を、当店の無料弁当で食いつなぐ。
申請が受理されれば、無料弁当の活動を通して路上を脱出した、四人目の方となる。
(4/24のTwitterより 一部修正)
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