最近、大阪出身の芸人レイザーラモン住谷の話題でネットは盛り上がっているようだけど、その盛り上がりの中にネット社会の危うさのようなものを見た気がしたので記事にしてみることにした。
当初の論争(←というほど熱く激しくはないけど)はハードゲイ芸人を自称する住谷氏がモノホンのゲイかストレート(いわゆるノンケ)か、つまり彼の立ち振る舞いは、ひところの藤井隆のおねぇコトバのように単なるキャラづくりのための演技なのかというものだった。
すると、「そもそも“ハードゲイ”は同性愛者ではないんだ」という新定義を主張する方々が現れだした。
これは「はてなダイアリー - ハードゲイとは」が増殖して、その後変異していったものと推測される。
というのも実際、多くのブログ記事に引用(またはリンク)されているからだ。
私にしてみれば(恐らく私と同世代の人たちにしてみれば)同性愛者ではないという新定義はもちろん、この元の定義でさえ、多少なりとも違和感を覚える。
そもそも“ハードゲイ”という言葉が日本で使われるようになったのはアル・パチーノ主演の「クルージング(1979)」が公開された前後あたりからだ。当時はクルージングするなんていう言葉もちょっとだけ流行った(笑)(これは単に夜遊びするという程度の軽い意味でも使われた。)。
映画に登場したゲイSMファッションやマッチョでオトコくさいゲイたちをハードゲイと称しただけで、そもそもが和製英語だ。
実際にHard gayで検索してみるといい。単なる「ハードコアポルノの同性愛版」的なサイトが出てくるだけである。(ついでに“definition of hard gay”でも試してみよう)
“ハードゲイ”という言葉が日本で流行したウラにはそれまでは一般大衆の中には「ゲイ=女っぽいもの」という固定観念があったので衝撃的だったということもあったのだろう。
そういえば「クルージング」のちょい前にビレッジ・ピープルというゲイグループが「マッチョマン」なんてズバリなタイトルの曲をヒットさせた。
彼らのヒット曲「YMCA」や「インザネイビー」はそれぞれ西条秀樹やピンクレディ、渋谷哲平が爽やかにカバーしてしまったが(笑)元々はホモの歌だ。
ビレッジ・ピープルが活躍した当時は、歌の影響のせいか、一部でだが「「マッチョマン」」というのは「筋骨たくましい“ホモ”」のことだという間違った定義が流布されたりもした。
日本で言うところのハードゲイ・ファッションだが、それらは特にSM指向やマッチョだけのものでもない。当時のニューヨークやサンフランシスコあたりのフツーの?ゲイたちの間でピチピチのレザーを身につけるのが流行ったというだけ。
アメリカのヘビメタ嫌いのおっさんたちがロック少年たちを罵倒する「オカマみてぇなピチピチのパンツはきやがって」という表現が常套句化されたくらいだ。
ちなみに前出のパチーノの映画の方は今年、ハル・ベリーがその授賞式に出席して話題になった最低映画を選ぶラズベリー賞にも複数部門でノミネートされたが、作品賞と脚本賞共にビレッジ・ピープルの「ミュージック・ミュージック」にゲイ対決で負けてしまった。そんな映画です(笑)。
もちろん言葉というものは時代と共に変わったり、本来の意味とは別の解釈になったりすることもある。例えば「写メを撮る」という言い方をするけど、もともとは「写メール」なわけだから本来ならどこかに送信してはじめて「写メール」となるはずだが、実際には携帯で写真をとるだけでもこう使われている。
だから「ハード・ゲイ」という語句の意味が時とともに変遷する可能性については完全に否定はできないが、この言葉がそもそも和製英語であるという点と、登場の背景には流行語的側面がある上に日常的に使われる類の表現ではないので、今回出まわった“別解釈”がそういった自然淘汰の結果である可能性は薄いのではないかと思っている。
フジテレビの「デッドエイジ」ではないけど、「ハードゲイ」という単語を知る世代とそうでない世代との境目が存在するのではないかとも考えられる。実際今回も
「ハードゲイって何?」という書き込みが各所で多くみられた。
当の住谷氏(1975年生)と私たちの世代が認識する定義はほぼ同じだと思われる。彼が小道具的に引用したフレディ・マーキュリーもロブ・ハルフォードもハードゲイのアイコンだ。ついでに言えば前出のビレッジ・ピープルも。ファッションについての認識はこの人たちの影響は大きいかもしれない。
先日、ダウンタウンDXの総集編を見ていたら松本人志氏も「ハードゲイ」という単語を使っていたが、やはり同世代の共通の認識を感じた。
「はてなダイアリーの定義」だと「ヘルスエンジェルス」もハードゲイ一派にされてしまいそうだが、アメリカでバイカー・ファッションの荒くれ者たちに「Are you hard gay ?」なんて尋ねたらその場で「オルタモントの悲劇」を再現されかねない。
スケーターたちの中にスラッシュメタルを好む文化があったりというのは聞いたことがあるが、ゲイの人たちがハーレイを好んでいるという話は聞いたことがない。仮に1つや2つのゲイのバイカーグループがいたとしても少なくとも「ムーブメント」として存在していない以上は“定義の説明語”としては不適当だろう。
(ついでに突っ込むのならヘビメタファンもゲイなのかよ…っていう。硬派?愛欲に対してストイックってことならむしろ逆じゃないかなぁ?…なんだかなぁ…)
もうひとつ、この「はてなダイアリーの定義」でさえ、同性愛であることは完全には否定していないのに、いつのまにかそれが外れて改変された情報が一人歩きしている点があやうい。
情報の変異といえば、あのボブ・サップが出はじめのころ彼がNFLのスーパースターウォーレン・サップの弟だという(後にこれが従兄弟になり、結局はアカの他人だった)情報がまことしやかにとびかったことがあった。これはネットの噂ではなくスポーツ新聞の活字にまでなってしまった。
NFLファンの私としてはなんとなくうさんくささを感じたのでテレビ局の中で一番アメフトに通じていると思われる日本テレビにメールを出して問い合わせたところ
「そういう事実はありません」とあっさり返事がきた。
それでもしばらくの間は情報は訂正されずにいた。ところがウォーレン・サップのほうが不幸にも?スーパーボウル(SuperBowl)(野球のワールド・シリーズみたいなもの)出場をきめてしまったので、レギュラーシーズンはほとんどアメフトの現地取材なんかしない日本のマスコミのインタビューを受けるハメに。
ウォーレン・サップは怒った、怒った。
「ボブ・サップ?そんなヤツは一族にいない。ヤツは嘘をついたている。売名だ!」
その時、個人的に興味をもったのでデマの出処がどこか調べてみた(まぁ、ほんとの大元はサップ自身だといまも確信しているが。だってヤツは最初は否定してなかったんだから)。
するとネット上でスポーツ新聞にのっていた文をそのまま英文に訳したようなドンピシャの文を発見。(実際はその逆で新聞記者はその文を訳してのせてしまったと思われる。)
多分、英文ということもその記者を信用させてしまった一因だと推測されるが、実はそこは日本の格闘技系サイトの英語ページにすぎなかった。つまり英文ではあっても米国発の情報でもなんでもなかったのだ。
そもそも記者たるものがウラもとらずにネットでチコチョコっと取材を済ませるという姿勢に問題がある。別に必ずしも“足を使え”とはいわないがNFLならプレスへの対応がシステムとして完備されているのでメールで問い合わせるという手もあったはずだ。(実際、日テレは事実を把握していたわけだし。)
そういえば温泉ライターの多くは現地取材をせずにネット上の情報だけで記事を書いているという現状を、あるライター(←アル・ライター投手ではない)が「笑っていいとも」で告白していた。
元々がネット上の“伝言ゲーム”で変異してしまった情報でも、ウラを知らない受け手にとっては、それが活字になることでいっきに“見た目の信頼度”が増して見えるのでさらに危険だ。
もうひとつ問題点は検索エンジンの功罪だ。たとえばGoogleは独自の判断アルゴリズムで重要度が高い順番に表示するといわれているが、昨今のSEO(検索エンジンへの最適化)の小細工による“ゆがみ”を是正するためのイタチごっこを繰り返すうち精度に微妙に狂いが生じている気がする。(何をもって精度というのかも意見は割れると思うけど…)
もともとSEOは商業サイトなどが検索エンジンの検索結果の上位に位置するために編み出されたアクセスアップのためのテクニックだが、それが短期間でいっきに一般ユーザーにも普及してしまったために愉快犯的に小細工(中にはスパムのようなノリで検索ロボットを惑わせて面白半分に順位があがるようにしたり)をする人たちも増えた。
検索エンジン側のほうもそれに対応すべくアルゴリズムに改良を加えているが検索結果を見るとけっこうグダグダな感じがする。
フツー、アーチストの名前で検索したら、そのアーチストの公式サイトが最上位にくるべきだが最近はそうでないことが前よりも増えた気がする。
公式サイトを追い越しているものの多くがブログ関係だったりする。だから検索エンジンの不備だけでなく、ブログの急増というネット社会の急変も原因のひとつといえなくもないが…。
検索対象がアーチストのような場合は公式サイトへとたどりつこうと最後まで努力するのだろうが、日常の検索では上からいくつかしかクリックしないだろう。つまり検索エンジンの上位に位置する情報のみが「真実」として増殖していくのだ。
また、ブログ文化の急激な発達で引用などもネットのあちこちで積極的にされるが、引用元がハッキリしていればいいのだけど、オリジナルっぽく見せるためにアレンジしてるうちに抜け落ちがあったり、一部分だけペーストしたために文脈が破壊されたり、叉は伝言ゲームのように誤認したものをそのままのせたりと、どんどん情報が増殖・変異していく。
ライブドアの問題について書いた文でも触れたが、ネットはモザイクのタイルが散らばるように存在する多様な情報と出会えるのがメリットだったはずだが、実際には検索エンジンの上位の情報という単色に全体が染められいるのではないか?。
結果が多様性の欠如という方向に向かっていると考えると危うい気がしてくる。
検索ロボットの言うがままに世界が作られていく…っていうのは杞憂だろうか?
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補則(というか素朴な疑問)(2005-03-23 01:12):
“一部”というにげの表現と“異端的な精神世界”というわけわかんない表現で曖昧にしてあるので、あえて触れなかったけど(どうせその前の段階でこけてるから…)、「極右」だの「ネオナチ」ってなんじゃこりゃ?って…こんなん外国で言ったら欧州のゲイ・パレードで袋叩きに合うぞ。っていうか、このキーワードの説明って一体だれが書いてるんだろう?
でもこうして再コメントいただけたので少しラクになれました。
それにしても最近の19は失礼ですね。バラエティ番組(とくにあびるちゃん?)の悪影響でしょうか。
TJさんもいろいろと大変なようですが、実は私も私生活はあれやこれやでグダグタです。お互いがんばりましょう。今回はキッカケをくださりありがとうございました。
すいません、別の記事のコメントで「ストレート」の意味が分からず、引いていたら、こんな名前と遭遇してしまい・・・。メディアに疎い私がびっくり!という感じでした・・・(^_^;)。
で、この記事のメインは、SupeerBowlさんのいつも懸念されている「多様性の無さ」でしたね・・・。
そうでしたか。検索エンジン、確かに、本当に、公式ホームページがトップに来ない事も。
彼がストレートな情報っていうのは、
どの辺から、SuperBowlさんは、ご存知だったんだろう?
多分SuperBowlさんの事なので、かなり調べられての結果なんだろうな・・・。
その中で見極められる程の情報を集めたってすごいです・・・。
マイナーな情報に関しては、
ネットが無くても、昔から問題だったのは確かだったかも知れませんけど、
「更に」というのがあるかも知れませんね・・・。
でも、世の中って、不思議な事にSuperBowlさんや、私?の様に、メジャーでないものを見たがる人がいつの世もいたのかも知れません。
そういう人達が常に声を大にする事こそ、大事なのかも知れないですね。
SuperBowlさんのご活躍、これからも、楽しみにしています(^o^)丿。
いあやー何時も深い内容参考になります。
”ハードゲイ”
深いですねー
オカマとゲイの差だったら分かるんですけどねw
逆に
”ハードレズ”
って言葉はあまり聞かないですよね。
音楽の世界でも
たとえばロックとかコアとかテクノetc。。。
全部ハードってつけられますけど
境界線ってわからないですよね。
レイザーラモンの名前はWWEのプロレスラーからきていると思われます。
私の記念すべき?「レイザーラモンネタ」の第一回でも、ちょこっと触れているので
参照いただければ幸いです
http://blog.goo.ne.jp/superbowl/e/85924069599249a78aa69a79d2614beb
ストレートについては、いつもコメントをくださるmayu7さんがもしわからなかったらアレかな…と懸念もよぎりましたが
mayu7さんが半ば求道者的に語学を学んでおられるようなので心を鬼にしてそのままのせました
…なんていうのは真っ赤なウソで、mayu7さんはアニメとかゲームとかお好きでいらっしゃるようなので、当然のようにマンガも好きだろう…と
ってことは
アニメとかゲーム
↓
少女マンガ
↓
美少年モノが少なからずある一回くらいは読んだことがある
↓
むしろ私なんかよりホモ知識は豊富
と考えてしまいました(笑)
ストレートについてはこちらもお楽しみください↓
http://www.btinternet.com/~b3ta/gayorstraight/
本当の本当にストレートかどうかは高倉健さん同様不明です(笑)
ジョーダンズの三叉氏のようにネタやトークにかこつけてカミングアトしているという可能性もゼロではありませんので
>haggyさん>
「あぶない刑事」ネタ以降しばらく更新していなかったのは
連休をエンジョイなされていたのですね?
うらやましいかぎりです
コメントと、TBまでありがとうございます<(_ _)>
“あの記事”からTBくださったということは
「さぁ私の腕にとびこんでこいよ」つまり逆TBしてもいいよといってくださっているのでしょうか?
でも、知らない人が見たら“道場破り”みたいに見えてしまいますな
と、あれだけ毒吐いておきながらツッコミ思案ならたヒッコミ思案という
表示に偽りアリなSuperBowlでした
意外と低かったですね~。
私、ゲイのお友達(山崎トオル系の男性のまま)がロンドンにいるので(日本人で大学院受験前からの親友)、割とゲイネタ、ハイ、免疫あるかと思っていたんですが、ストレートは、親友と?ゲイネタ話した事無かったんで?(避けていたんで?(^_^;))、ちょっと疎くなっていました~(^^ゞ。
これ、このリンクのクイズサイト、是非、彼(彼女??)にやらせたいですね~!!
もう、本当、ゲイの人の方が正解率高いですかね~。
ちなみにハードゲイっていう意味の英語は、何かあるんですかね~。
このリンクサイトで言えば、一番左上の彼みたいな人、エッチっぽく言えば、男役の人ですね・・・。それこそ、私の友達に聞いた方が早いかな・・・。
下手すると怒られそうなのが、怖いので・・・(^_^;)。
はい、一応ちょっと時間見つけて努力してみます。が、SuperBowlさんが早い時はお世話になるかもしれませんので、その時は宜しくお願いしますm(__)m。
TBしたのは、たとえば私が陽の部分書いていたら陰の部分がないとつまらないじゃないですか。
世の中、考えは人それぞれディベートできるぐらいじゃないとつまらないです。
どんどん、つっこんでください。
ただ、これっだとひょっとしてフリと突っ込みの順番が逆になっちゃうかも?っていう迷いもあったんですわ(笑)
あの男からこれだけ広げてしまう管理人さんに非常に感心いたしました。
これからはマメに訪問させていただいと思います。
貴ブログは大変ファッショナブルでいらっしゃるので、文も見た目もどんより暗い拙ブログはなんか気恥ずかしいです(笑)。
ともあれ今後とも宜しくお願いいたします。