偽史倭人伝 ~ Carnea Historia

march madness の次が April Foolなんて小粋ぢゃないか。

●NCAA vs FSU~“征服されない”セミノール魂は誰のもの?

2005年08月15日 00時19分09秒 | ◎海外スポーツ&ニュース見出しdeポン

セミノール
例によってニューヨークタイムスで見つけた見出し
ちょっと日は経っちゃっているが今後も長期にわたってもめそうな話題なので記事にしてみることにした。
NCAAインディアンをモチーフとしたチーム・マスコットを同組織主催の大会から排除するという内容の記事で
見出しはフロリダ州立大がその勧告に徹底抗戦の構えというもの。

 NCAAの公式トーナメントから差別的なインディアン・マスコットを排除するというのだが各有名校のアメフトチームはこの決定には従わないという。
 なぜならアメフトにはNCAA主催の公式トーナメントがないから…だってさ。
 アメリカでいちばんのメジャースポーツがカンケーないってんだったら、たいした影響はないんぢゃないの?な~んて思う人もいるかもしれないが、NCAAのバスケットボールのトーナメントといえば「マーチマッドネス(March Madness)」と呼ばれ社会問題にもなるほどの全米狂乱ぶりなのだ。
 そう、アメリカでは「四月馬鹿(April Foll)」が来る前に「三月キ●ガイ」がやってくるのだ。
 よく、経済効果というけどこのば「マーチマッドネス(March Madness)」バスケ馬鹿がうかれて生じる経済損失が8億ドルにも達するとか。
 「スターウォーズ エピソード3」公開日前後に生じると予測された経済損失もたしか6億ドルといわれていた。
 日本は経済効果などという、ともすればただ金が右から左に動くだけという実はあまり実のない数字ばかりを出したがるけど、例えば某プロ野球球団の優勝なんてのは「うかれ損失」のほうもかなりデカかった気がするけどね。
「今日は試合が気になってよう仕事せんわぁ、飲み屋行ってテレビでも見たろ」
なんて運ちゃんいっぱいそう。

 そんなわけで向こうぢゃバスケに限らずカレッジスポーツはかなりの人気を誇っているので今後この話題はあちこちに波及するなんてこともありそうだ。

 前にもちょっとふれたけど、プロチームの名前も含めインディアンマスコットニックネームについては前々から論議がなされていた。NCAAの決定がプロチームの名前にも影響を及ぼすこともないとはいえまい。

 フロリダ州立大は、(同大の)ニックネームやキャラクターが蔑視であるはずもない、私たちのセミノール族との絆を蔑視の一言で排除する気か!こうなったらあらゆる法的手段も辞さない!と息巻いているようだが、裏にはキャラクターグッズの売り上げもデカいという事情がからんでいるという指摘も。
 実際、有名校のグッズ販売は巨大ビジネスだ→★検索例★
 まぁ、前から言われていることだけど、インディアン・キャラやニックネームを使っているチームの主張は蔑視ではなく、彼らの勇猛さに敬意を表しているんだとか、旧来この土地はインディアンにゆかりがあってとかいうんだけど、もともと侵略してはじに追いやっておいて「ゆかりがある」っていわれてもなぁ…っという感じもしなくもない。

 学校側がunconquered' spirit of the Seminole Tribe of Florida,(決して征服されたことのないセミノール族の魂)と引用しているように、セミノール族の歴史を紐解くと確かにスポーツチームの名前に拝借したくなるような勇猛で誇り高き部族だということはわかるが、それはフロリダおける白人たちの殺戮に抗する歴史でもあったということを考えると、やはり釈然としないものはある。

 この記事は元々はニューヨークタイムスのものではなくAPが配信したものなので時には見出しを変えながら各所に掲載されていた。

 中でもCBS SportsLine.comには下に掲示板がついていて、それをながめているとアメリカの縮図のようなものが垣間見える気がして興味深くもある。
もう少し割れるのかと思ったが、9割以上が反NCAA。

 アメリカ人ってのは屁理屈大王なのでどんなにひねった論議が交わされているのか、ディベートのお勉強でもさせていただこうかと期待してみたのだが意外と短絡(特に反NCAA派のほうは)、強行的なものが多かった。
 (まぁ、反NCAA派に言わせればNCAAこそが強行だと言いたいのかもしれないが。)

インディアンにちなんだチーム名がいけないなら20以上のアメリカの州の名前も変えるっていうのかい?」
という意見
これって油断していると一瞬、頷いてしまいそうになるが、
もし本当にその名前がネイティブ・アメリカンの人々を傷つけているのだとしたら州の名前とて変える必要があるだろう
もう長年使っている…とか
変えるのに手続きが大変
…ということ自体は現状維持を正当化する“理由”にはならないはずだ
核の抑止力を正当化する国アメリカ的理屈だ

「だったら~も変えなきゃ」タイプの意見であったのが
SpartansTrojanも変えなきゃというもの

別に人や集団を表しているチーム名がダメという論議ではないのに、すりかわってしはまっている。
たとえば、どこかの日本人とはゆかりのかけらもない大学のチームがサムライズウォリアーズというチーム名を採用したとしても、そのことだけで批判すべ対象とはならないはずだ
もし、マスコットが出っ歯でカメラを首からさげていて刀を振り回していたりしたら別だが

そう、クリーブランド・インディアンズのキャラクターを日本人が見ても
これ、けっこうカワイイんぢゃねーの?なんて思ったりするかもしれないが、それをいろんな人種バージョンに置き換えたこんなイラストがある。

カリカチュア



これを見るとこのマークに対する反対派の主張するイメージがわかないだろうか?

 さらにいえばネイティブ・アメリカンと白人との間には歴史的な背景があるので
サムライが小バカにされた場合よりもさらに深刻かもしれないのだ。
 さっきの各国版マスコットをいただいた(無断転載だが)→サイトMore good examplesとして紹介されているリンクにはこんなのがある

 仮にナチスドイツが第二次世界大戦に勝利しいていたとしよう。その60年後にジャーマン州立大学という学校のスポーツチームのマスコットが「ラビ(ユダヤ教指導者)」と名付けられたことを想像してみてくれ。
 アーリア系の白人学生がユダヤ教の儀礼的衣裳を真似た格好で応援をし、チームは「The Fighting Jews(闘うユダヤ人)」を名乗りマーチングバンドも「The Marching Jews(行進するユダヤ人)」と名乗ったとしたら…。
 ホームタウンはラビのマンガをプリントしたTシャツであふれ、車にもそのステッカーが張られている。
こんなのを想像してみてくれよ

…と

もう一つ危ういと思ったのは
論議の中でPCという言葉が多用されている点
PCとはpolitical correctnessの略だが政治的正当性という訳語をいわれてもピンとはこないかもしれない
本当のところは差別用語をなくしたり、差別をなくしたりすことらしいが
勢い余って、「言葉狩り」「いきすぎた規制」などの代名詞のように認識されてしまっている。

 たしかに世の中には「言葉狩り」や誰も得しないんぢゃないかと思われるような「いきすぎた規制」は存在するが、言葉が一人歩きするのもまた危険なことだ。

もちろん権力者の動向には常に誰かが監視する必要はあるだろうが、おかみが「言葉」に手をつけたらそれがいつでも「言葉狩り」となるわけではないだろう
しかし、こうした騒ぎがおこると世の中には大した考えもなくPCなどの「用語」を振りかざす人も多い。
 用語というのはとかく「受け売り」の道具にされやすいものだ。

それぢゃ「言葉狩り」とおなじようにモノゴトの本質を殺してしまいかねない。

あのライブドア論争のときもホリエモン用語派の多くは
「フジ側は株主の利益を考えていないから」
とか
「ホリエモンは法律を違反していないから」
といった表面的な受け売りが増殖していたが

 インフラということがかかわったときは、本当は株主などの法律で守られるべき人だけでなく、それにかかわる人すべての利益も考慮されるべきなのだ
 インフラというのはともすれば社会のカタチを変えかねない、時には社会のカタチそのものだからだ
だからこそその最たるものである放送局はいろいろな特殊な法律で守られているのだ
つまりマスコミなどの場合は、全視聴者が影の株主でもあるのだ

だから法律の遵守ということを考慮するときも
まず法律が作られた理念や背景を考えて、不備やら、法律そのものが抱える矛盾点などを正していくということも時には必要なのだ

あのときは、それ以外にも多分に
大企業に挑んだITベンチャーの下克上という図式を勝手に描き、それに感情移入していたというのもあったのだろう

でも、例えば自民党の考えがいつでも間違っているとは限らないのだ。

さて、掲示板をもう少し見てみる

「NCAAはきっとゆかりのある弁護士が多いからそいつらに仕事をあげるためにこんなことをしてるんだろう」

これをそのままディズニーにでも向けてやってくれ(笑)
まぁ、これも典型的な「NCAA=権力」「学校=弱者」という図式を描いてるんだろうね。

掲示板はいずこも同じ、おバカなやりとりもある
変えるとしたら、どんなマスコット名だったらいいんだろうねぇ…という書き込みに対し

Wriggling Worms(にょろにょろイモムシーズ)
the Rabid Rabbits (きち●いウサちゃんず)

なんてのはどうだい?てな意見が出てたりする。
まぁ、これはもしかしたら反対派の皮肉をこめた表現なのかもしれないけど笑ったのが
Huggable Kittens(抱きごこちのいいネコちゃんたち)という提案に対して
「アタシは反対だわ、だってアタシ、猫アレルギーだから聞いただけで気分悪くなっちゃう」という反論カキコがあったこと。
↑この投稿者が女性かどうかはさだかではないが、勝手にコメディ洋画の吹き替えの声を当てはめて想像してみた(笑)。


残念なのは当のネイティブアメリカンと思われる人の書き込みが見あたらなかったこと

ここでつい最近見つけたロサンゼルス・タイムスの記事
PLAYBOY誌がネイティブ・アメリカン768人に対して調査したところ90%以上がワシントン・レッドスキンズのマスコットに怒りを感じないと答えたそうだ。

ただ、この結果をどう読んでいいのかわからないところがある。
例えば768人という標本数が妥当なのかどうかとか。
あのおちゃらけた「トリビアの種」でさえいつも2000人くらいに調査している。
768というキリの悪い数がなんかそれしか集まらなかったんぢゃないの?って疑いたくなる。
また、標本の抽出の仕方や内訳も気になるところだ
どんな年齢層のどんなバッグラウンドなのかとか。
さらにはどういう設問だったのかとか

数字そのものはウソをつかないが、統計はウソをつく道具にされることがよくある
そう、選択肢式の場合はいくらでも答えを誘導できるし
都合のいい結果だけを発表するということもあるのだ


前にも書いたけど株式会社研究社 新英和・和英中辞典によると

【Redskin】
réd-skin
 -[名]《軽蔑》 アメリカインディアン.
とある。

だから
マスコットはいいけど、チーム名そのものについては一体どう思ってるか?とかツッコミたくもなる。
単純にマスコットのデザインが差別的だと思うか?というような設問だった可能性もある。
ある差別表現撤廃論者の意見によれば実はマスコットの名前よりも、彼らがスタジアムでしているインチキなアクションがインディアンの踊りや儀礼を冒涜していて。それが問題なのだという。

あと、確かに言葉は時代とともに移り変わるものだけどRedskinが元々、蔑称だということが忘れられつつあるとしたら、それはそれで果たしていいのか?ということが気になる
また、西欧的な文化で生活する若い世代のネイティブ・アメリカンたちが過去の伝統的・民族的な儀式に対する知識が欠落しているが故に、スポーツチームの応援で実はそれらがコケにされていることにすら気が付かなかった場合、だったらそれもそれでいいってこと…なのかどうか?ってことも気になる

 さて、今回のNCAAの問題はさらに双方の後ろにいろいろな利害がありそうな気もするので、ハッキリいって私には結局のところイマイチよくわかんないというのが正直なところ。
 今後は恐らく法廷闘争へと発展していくのだろう。
 いろんな意味でアメリカというものを象徴しているように見うけられるので、興味深く見守っていきたい。


さてネイティブ・アメリカンの書き込みはもつけることができなかったが
そのかわりにインド系の方の意見があった

そもそもアメリカぢゃインド人ネイティブ・アメリカンがごっちゃになってるぜ
クリーブランドなんてインディアンズを名乗るんだったらマスコットマークをアプーにでも変えたほうがいいよ

こんなかんじですかね?

APU:アプー


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ●井口資仁はマジMVPなのか? | トップ | ●ラインマンがサドンデスでNF... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

◎海外スポーツ&ニュース見出しdeポン」カテゴリの最新記事