田川RC応援団

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箱根駅伝のもう一つの物語

2013年02月22日 00時21分41秒 | 陸上競技
 第89回東京箱根間往復大学駅伝競走

 輝きを放った選手の陰で、サポート役に徹した裏方がいる。
 チームの途中棄権で記録は残らないにもかかわらず、意地の走りをみせた選手もいた。
 普段は注目されない箱根駅伝のもう一つの物語――。「アナザー・ストーリー」を紹介する。


◎裏方に徹した主将…東洋大・斎藤貴志(4年)故郷で消防士に

 前回の10区で区間賞を獲得し、総合優勝のゴールテープを切った。
 今回の大会ポスターやプログラムの表紙を、そのゴールシーンの写真が飾った。
 ところが、長距離部門の主将でもあった斎藤は今大会、16人のエントリーメンバーから外れた。

 故障もあって苦しんだシーズンだった。
 それでも、昨年11月の記録会で1万メートルの自己ベストを更新するなど調子を上げてきていた。
 「正直、メンバーから漏れたときは悔しかった」。まずとった行動は、ある先輩への電話だった。

 自分と同じ宮城・仙台育英高出身で、2009年度の東洋大主将だった釜石慶太さんも、4年時にエントリーメンバーから外れている。
「大会までの日々で、主将として出来ることがあれば教えてください」。
 現在は仙台育英高女子監督の釜石さんは「特別なことは何もしなくていい。変に頑張っているような姿を見せると、選手に余計なプレッシャーを与えてしまうから」と助言してくれた。

 それからは普段通りの生活を過ごし、さりげなくサポート役に徹してきた。
 2日の往路では5区で給水係を担当。3日の復路では沿道で応援した後、東京・大手町のゴールでアンカーの冨岡司(4年)を待った。
 願いはかなわず、連覇はならなかった。2位でゴールした冨岡を両手で受け止めると、斎藤は涙をぬぐった。

 競技生活で、歓喜と屈辱を味わった。
 卒業後は実家のある山形県に戻って消防士になる。陸上競技は市民ランナーとして続けるつもりだ。
 「普通に大学生活を送っていては味わえない体験をさせてもらった。この経験を社会人になっても生かしていきたい」。
 東洋大で心と体を鍛えた22歳は、涙が乾いた後、きっぱりと言いきった。
 (読売オンラインより 田上幸広氏の記事です)