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SWAN日記 ~杜の小径~

ベルばらSS ◆◆グライウルと薔薇の花◆◆

ベルばらSS ◆◆グライウルと薔薇の花◆◆

 
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オスカルとアンドレは相愛の設定です。
昨年の三が日にUPしたSS《密会1・2》の続編的な感じで、先にUPした《氷の薔薇》とリンクするような?お話になっています。
オンラインのSSなので、R指定の描写は避けて書きました‥‥(^◇^;)
 
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◆◆グライウルと薔薇の花◆◆
 
ジャルジェ家の庭園の奥‥‥グライウル(グラジオラス)が見頃を迎えていた。
庭園の手入れもしている母ジョルジェットは気付いていた。
末娘のオスカルがグライウルを茎から摘みに来ていたのは判っていたが、今朝はアンドレが摘みに庭園に出ているようだった。
部屋の窓から庭園の様子を見ていたジョルジェットは微笑んだ。
 
先日はジェローデル少佐が近衛の方々とジャルジェ家の晩餐に来た時、帰りにオスカルとアンドレと少佐が庭園で夜涼みをしていたのも知っている。
わたくしはただ、末娘オスカルとアンドレを見守っている。
おそらくジェローデル少佐も同じ考えなのだろう。
アンドレやジェローデル少佐‥‥末娘を理解してくれる人間が回りにいるのは心強い。
 
✴︎ ✴︎ ✴︎
 
夏の日。
オスカルとアンドレは一日取れた休暇をパリの別邸で過ごすことになった。
アンドレが「近いうちにパリの別邸に行ってくるよ」と言ったのがキッカケで、聞けばマロンに用事を頼まれたようだった。
王妃様が若かりし頃、良くパリにお出かけになっていたため護衛のオスカルも別邸を使う頻度が多かったが、最近は別邸に足を運ぶ機会も減ってしまった。
ジャルジェ家の使用人夫婦‥‥高齢であるが管理している者もいるし、定期的に清掃もしているので何時でも使用できるようになっているが、日曜大工と称してアンドレに力仕事を頼んだようだった。
「何か修繕箇所が?」
「うん。サムとリリーも高齢だからさ。サムのご指名がオレらしい」
「なるほど。アンドレは何処でも重宝されるからな。ならば来週の休暇は一緒に別邸で過ごそう」
「は?」
「何だ。嫌なのか?」
「嫌じゃ無いけど‥‥退屈だろう?」
「お前と一緒で退屈な訳ないだろう?休暇日までわたしの世話は面倒か?」
「そんなことある訳ないだろ」
マズイ。この口調。
オスカルが拗ね始めている。
アンドレはオスカルの前に立ち、微笑んだ。
「オレはオスカルと一緒にいられれば嬉しいよ」
きっとオスカルも二人の時間を過ごしたいのだろうと思う。
数ヶ月前、想いが通じて相愛になったとはいえ、オスカルは恋愛や恋の駆け引きなどは苦手なのだ。
「何笑ってるんだ」
ポカリとアンドレの胸を叩いた。
素直じゃないところも可愛いのだけれど。
「本当だよ。二人で居たい」
お屋敷よりも別邸のほうが人の目も無いに等しいのだから。
オスカルも其れを望んでいるのだろう?
アンドレに見つめられながらの無言の問い掛けにオスカルは俯きながらコクリと頷いた。
「‥‥うん。」
うん。素直なオスカルも‥‥可愛い。
言葉にしようものなら再び叩かれると判っているアンドレも笑って頷いたのだった。
 
「アンドレがパリの別邸に行くなら休暇と合わせてわたしも一緒に行く」
お嬢様の発言にマロンは反対したが。
「ばあや。わたしもサムとリリーは久しぶりだ。たまには顔を見せようかと思ってね。アンドレの邪魔はしないから大丈夫、修繕作業を見学しているよ。休暇の前日、衛兵隊の勤務終わりにそのまま別邸に一泊して、夕刻には屋敷に帰るから」
ニッコリ笑うオスカルにマロンも負けて「仕方ないですねぇ」と頷き。
「アンドレ!別邸の修繕とサムとリリーの手伝いとオスカルお嬢様のお世話もちゃんとするんだよ!」
マロンは容赦なく言い切った。
「わかってるよ、おばあちゃん」
アンドレも笑って頷いた。
祖母から言われたことも自分にとっては日常のことで苦にもならない。
現在別邸の使用人はサムとリリーしかいない。
オスカル付きの侍女もいないのだから、その分オレがオスカルの世話を出来るのだ。
嬉しくない筈が無い。
 
いよいよ明日は休暇日だ。
今日の勤務を終わったら、そのまま別邸に向かえる。
別邸にも数日泊まれる着替え等は揃えてある筈であるが、アンドレと侍女ローズが一泊用の荷物をトランクに詰める準備をしていた。
「一泊するだけなのだから荷物など心配ない」
と言ってみるが、オスカル付きの侍女ローズも引かなかった。
「お着替えと湯浴みの香油と化粧水とクリームと‥‥使い慣れたものが良いですわ」
〜と、一泊なのに荷物が増えてゆく。
「最近オスカルの食が細いからって、おばあちゃんがお前の好きな果物を纏めて持たされているんだよ」
「‥‥酒は?」
「別邸にもあるよ。一泊するだけだから荷物も心配ないって今オスカル言ったよね?」
肩を竦めるアンドレをオスカルは睨みつけた。
「ワインは別だっ!」
膨れるオスカルに、たまらずアンドレは吹き出した。
「はいはい。秘蔵のワインも一本入れてありますのでご安心を」
「ふん」
丁寧にお辞儀をするアンドレとソッポを向くオスカル。
オスカル付きの侍女ローズもオスカルとアンドレが恋人になったことを知る使用人の一人だ。
そんな二人の掛け合いを見てローズもクスクスと笑った。
 
晴れた朝。
「アンドレ。オスカルさまのこと、お願いね」
ローズ達に送り出され、二人は衛兵隊の勤務に向かった。
馬車の中にはグライウルと薔薇の花束があった。
2本の白いグライウルと3本の白薔薇が赤いリボンで纏められていた。
此れを置いたのは‥‥アンドレだ。
「‥‥アンドレ?」
「うん。別邸に飾ろうかと思ってね。今朝早くに庭園の花を摘んで来たんだ」
馬車に乗りこみ、座ったオスカルは花束を抱えて香りを楽しんだ。
「‥‥うん。有難う」
2本の白いグライウルは計10の花を付けている‥‥時間は今夜10時。
白グライウルの花言葉は密会。
オスカルは花束に顔を埋めた。
アンドレから初めてのグライウルの花。
以前はわたしから送ったグライウルの花。
慣れない恋人同士のやりとりに照れ臭い反面、嬉しく思える。
 
衛兵隊の執務室の花瓶に花達を生け、夕刻にそのまま別邸に持って行った。
久しぶりに会うサムとリリーはオスカルとアンドレを大歓迎だった。
「サム、リリー。久しぶりだね。元気そうで安心したよ。アンドレに別邸の修繕を頼んだのだったね。休暇が重なったから一緒に来てしまったけれど‥‥わたしの世話はアンドレがいるから二人は楽にしていて良いよ」
「サム!リリーも久しぶり!明日の午前中、気になる箇所を修繕するから遠慮なく言ってくれ」
オスカルとアンドレの言葉に頷きつつも、ジャルジェ家では当主夫妻に続き、次期当主オスカルと従者のアンドレも使用人達に慕われているのだ。
アレよコレよと二人は夕食と宿泊の準備を整えてくれていた。
 
夜。アンドレが部屋に夕食を運んで来た。
夕食はオスカルの好物が並び、デザートの果物も皿に大盛りだ。
「こんなに食べられない‥」
「あはは。二人が張り切っちゃったんだね。明日の朝と昼は軽めに頼んでおくよ。残すのも申し訳ないから今夜はオレも手伝って良い?」
「当たり前だ。サムとリリーもそのつもりで作ってくれたに決まっている!」
断言するオスカルにアンドレも笑う。
こんな時でなければ食事を二人きりで摂ることなど出来ないのだ。
 
片付けや湯浴みの準備は自分がするから、とアンドレは高齢の二人を先に休ませた。
二人とも歳は60に近い。
「サムとリリー、先に休んでもらったよ。もう部屋に戻っている頃かな」
別邸の敷地内に隣接する部屋が管理人や使用人の生活スペースになっている。
「‥‥うん」
一緒に夕食を済ませ、アンドレは食器を片付ける前にショコラを入れてきた。
「片付けと湯浴みの用意をしてくるから、ちょっと待ってて」
「‥‥お前も休暇なのに、すまないな」
「オレが好きでやってるんだ。オスカルの為に動くのは苦にならないんだよ」
アンドレはオスカルの額にそっと口付け、部屋を出て行った。
 
しばらくして戻って来たアンドレは湯浴みの準備が出来たと告げる。
「ローズに言われた薔薇の香油も入れてあるよ」
「‥‥ん‥‥。」
浴室でオスカルはアンドレの袖を摘んだ。
時折、無言で甘えてくるオスカル。
上手く言葉に出来ないのか、素直になれないだけなのか‥‥こんなオスカルの表情や態度も自分だけが知っている。
アンドレは優しく問う。
「‥‥狭いけど、一緒に入る‥?」
オスカルは小さく頷いた。
 
✴︎ ✴︎ ✴︎
 
オスカルは寝室の花瓶に生けてあるグライウルと薔薇を取り出した。
薔薇の棘は全て取られている。
わたしの指を傷つけないように‥‥アンドレの優しさが伝わってくる。
わたしが花を顔を埋めて、花達を胸に抱くことを判ったうえでの行為。
オスカルは花束を抱えて寝台に横たわった。
アンドレと一緒に湯浴みしたのも初めてだった。
彼の指先がわたしの髪や身体に触れる。
優しい愛撫。
アンドレの胸に背中を預けて浴槽で微睡み‥‥甘やかな時間。
「‥‥アンドレ‥‥」
香油の香りに重なるようにグライウルと薔薇の香りがオスカルを包み込む。
置時計が夜10時を示す頃、アンドレがワインとグラスをトレイに乗せてやって来た。
「‥‥お待たせ。オスカル。此処で飲むかい?」
「うん」
頷くオスカルにアンドレは微笑み、寝台脇のテーブルにトレイを置いた。
手際良くワインを開け、二つのグラスに注いでゆく。
寝台から身体を起こしたオスカルはアンドレの隣に座り、身体を預けて言った。
「‥‥アンドレの匂いが‥‥」
いつもと違う香りを纏うアンドレにクスリと笑ってみるが、これもオスカルには慣れ親しんだ落ち着く香りだ。
「あぁ、一緒に湯浴みをしたから‥‥オスカルの香油だね。湯浴み後もずっとオスカルと一緒に居るようだったよ」
湯浴み後の深夜のオスカルの香り。
この香油の香りを纏っていると彼女が腕の中にいるような錯覚をしそうになった。
「長く湯に浸かっていたから‥‥湯あたりしなかったかい?」
アンドレがもう上がろうと言うまでオスカルは身体を預けて湯浴みをしていた。
「‥‥大丈夫。冷えたワインが美味しいぞ」
グラスを合わせて乾杯したオスカルはワインを飲んだ。
芳醇な香りが口に広がる。
グライウルと薔薇を胸に抱えたまま、アンドレの肩に身体を預けた。
アンドレもワインを一口飲み「うん、美味いね」と頷く。
「秘蔵のワインが‥‥いつもに増して美味だ」
「オスカルと一緒だし、余計にね」
別邸で二人だけの夜。
どちらともなく笑い合った。
 
ワインに舌鼓をした後。
オスカルの唇に口付けを落とし、寝台へもつれ込む。
シーツの海にはオスカルの長い髪が広がり、髪の周りにはグライウルと薔薇の花。
花に埋もれたオスカルも妖艶で美しい。
初めてオスカルを抱いた夜から何度身体を重ねただろう。
最初は怖かったであろう夜の営み。
オスカルには未知の世界だったのだから。
ベルサイユでは氷の薔薇と称されていたオスカル。
彼女を覆う氷を溶かし‥‥鎧を解いてきた。
愛撫を重ねる度にオスカルが美しくなってゆく。
まるで朝露を浴びた薔薇のように。
 
薔薇とグライウルの香りを纏うオスカルがしがみついてくる。
その指先を優しく包み込み、そっと唇を寄せてキスを落とした。
 
「愛している」
 
オスカルの耳元で囁くと、言葉の代わりに背中を抱きしめられた。
 
オスカルにグライウルの花言葉は教えたけれど。
白いグライウルの花言葉は『密会』
3本の薔薇の花言葉は『愛しています』
 
柔らかい身体を包み込むようにして、耳朶への愛撫。
そっと甘噛みするとオスカルの身体が小さく震えた。
アンドレはオスカルの周りに広がる花ごと抱き込み、そっと唇を合わせたのだった。
 
 
◆終わり◆
 
 
 
🌹 🌹 🌹 🌹 🌹
 
〜ここまでお読みいただき有難うございました。
 
何だか勢いに乗ったのか、8月のアンドレ、10月のジェローデル Birthday に寄せてのSSも書き終えて、いま 12月オスカルさまのSSを書いています‥‥ヽ(´▽`)/
書き途中で放置してたSSを纏めたり、勢いのまま新規で書き終えたり‥‥色々なのですが。
勢いが止まるとペースダウンしてしまうのですが‥‥冬まで何ヶ月もあるし大丈夫!(‥ってコレが危険なパターン。夏コミ終わったら、冬コミに向けてお話を考えて進めなきゃ!デス。笑)
 
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