第1部のトークは上映終了後の開始。のんさん、片渕須直監督、真木太郎プロデューサーのお三方は、観客用の出入り口から壁側の通路にそっての入場です。なんと、僕の席から座席3つ分しか離れていません。こんな間近にのんさんを拝見できて、いきなりテンション↑↑です!近くのご婦人方から。「かわいい」「かわいい」の声が盛んに上がります。
真木氏が司会進行役を務めます。トーク時間はなんと40分。全部書き起こすと大変なことになりますので、主にのんさんの話に絞って、要旨をまとめさせていただきます。
それでも、長文です。最後に画像あります。
<(_ _)>
真木氏がまず「今日は映画をご覧になった方が、何倍も好きになるような話が出来れば、と思います。まず、監督から何か。」と監督に話を振ります。
監督「今日で公開されて183日目。僕らが映画を作ってもただのデータだけ。それをお客さんの前に映し出してくれる映画館がないとダメで。皆さんと一緒にやってこられたのがすごくうれしく、ありがたい。」
続いて、のんさん「こんなに長く上映できているのはすばらしくて、うれしくて。岐阜に初めて来られたのが『この映画の片隅に』のためなのがすごくうれしいです。」
真木氏が「のんさんはすずさんと幾つ違うんだろう。え~68くらい…」と話し出すと、監督が思いついたように割って入って「あ、ちなみにですけど、こうのさんに聞いたんですけど、すずさんは5月生まれなので、今頃92歳の誕生日です。」
すると、のんさんすかさず「おめでとうございます。バースディ。」と会場を沸かせます。
真木氏「のんさんと(映画の中の)すずさんの年代は近いですよね。すずさんの声を演じてすずさんの時代の事情をどう思いますか。」
のんさん、ちょっと考えた後「私はご飯を食べて幸せになったりみんなのために料理をして楽しくなるすずさんを見て刺激され心に残っているんですが、この作品にかかわる前は、料理に楽しみを見いだせてなくて、ご飯を食べて幸せってことがなくて、ポテチを食べることが一番幸せだったんですが(笑)。すずさんと出会って、料理とかが楽しくなってきて、普通の生活が楽しいという感覚を伝えられる作品に参加できて、すずさんは私の中で特別な役になりました。」
ん?ちょっと話の筋がずれてきたかな?話し終わって一瞬の間ができたことを気にしたのんさん、思わず「(聞かれたのは)こういう事じゃない?こういうことでいいですか?」
これで、会場が一気に湧きます。
真木氏「すずさんの声を吹き込んで、命を吹き込んで、すずさんの明るい性格をどのように演じようとしたんでしょうか。」
のんさん「ボーとしているといわれる中におとぼけたりちょっと変な態度をとったり、チャーミングなところが素敵になればいいな、と考えていたんですけど。すずさんは最終的にはちゃんと自分で決めて進んでいっているような気がして、最初は流されているような気がしていましたが、終戦の日にすずさんが怒りを爆発させるシーンにびっくりして、ああ、すずさんって、こんな感情が心の中にあったんだな、力強いところがある方なんだな、と思って、そこから考えると、自分の中の意思がはっきりしているのかな、と思ったりして。あと、すごく単純なことでも楽しいと感じるシンプルな感覚に。ご飯作ったり、野草摘んだり、工作したり厳しい状況だから、やらなくちゃいけない、頑張らなきゃ、という気持ちが伴いながらも、生活が楽しいという感覚に、自分の中を撃ち抜かれたという部分があったので、そこを大切にしていました。」
のんさん、すずさんの深層心理に深く踏み込み過ぎて、話が止まりません。
監督が「のんちゃんって、本番の前に僕にたくさん質問してきて」と、一種の助け舟(?)を出します。すると、のんさん「ああ、それが聞きたかったのか!」と我に返ったような笑顔を見せます。会場も、どっと沸いて。
監督「最初にした質問って覚えてます?」
のんさん「何でしょう、覚えていない。」
監督「『すずさん、にこにこしているんだけど、すずさんの抱えている痛みって何ですか』っていう質問だった。」
のんさん「私の中で演技の勉強をしていくうちに、人間は誰しもペインを持っていて、それを隠すためにポジティブになったり、ペインがあるからこそ逆におっちょこちょいをしちゃうみたいなところがコメディに活かせることを勉強して(いたので)、そのペインがすずさんにとっては何だろうと、監督に探りを入れました。」(笑)
監督「すずさんが漫画を描けばみんなが幸せになるような(才能があるのに)、それを発揮しない道を選んでしまうのがすずさんの痛みじゃないのかな。家族のために家事を選んだのは、前向きに選んだのかというと100%そうではなくて、それをやるしかなかった。広島で画を描くことにサヨナラしようとスケッチをしまくったというのが、すずさんが別の何かになろうと思って一生懸命覚悟を決めた瞬間だったんじゃないかなと思って。心の中にみんなを幸せにする力を持っているのに、それに自分でも気が付かないのがすずさんの弱点であり痛みなんなじゃないのかな、と思ったりもしたんですよね。」
真木氏「でもその割には、お砂糖をどうしようかなんて、普通、あの年代の人ならわかるでしょって(笑)。そういうところがありますよね」
のんさん「そういう、おっちょこちょいなところがありますよね。自分の中に隠し持っている素敵な部分に気付けてないからこそ、ばたばたしちゃうような。」
監督「だからね、ポスターに今は『昭和20年、広島・呉。わたしはここで生きている』と書いてあるけど、最初に自分で考えたのは『18歳でお嫁に行った。5歳の姪しか友達がいなかった』そういうレベルの人なんだよね。」
これにはみんな大笑い。こっちが採用されなくて、ほんとうによかった。
真木氏「そういうところがすずさんの魅力ですよね。さっきから『すずさん、すずさん』って言っているけど、ホントにいるみたいな感じがします。どうしてなんでしょう。」
監督「『すず』って呼びつけにしていいのは、こうの史代さんだけ。こうのさんはすずって呼ぶんだけど、他の人が『すず』って呼ぶと、呼びつけにするなよって。」
のんさん「ちょっと違和感、ありますよね」
監督「そうそう。本当にいる人なんだから、呼びつけにしないでしょう、みたいなふうに思っちゃうんですよね。そういう人がいると思っているから、『さん』を付けないと失礼。」
真木氏「そろそろ時間なんですけれども」
監督「早いですね。」
時計を見ると、確かにすでに40分近く経っています。
そこへ「よろしいですか」と劇場の支配人がトークに割って入って、何を言うのかと思えば「実は、お三方のご好意で、SNSに上げるという条件であれば、今から30秒…」
会場が一気にどよめいて、一斉に携帯やらカメラやらを取り出そうとちょっとした騒ぎになりました。
真木氏「明日は高山であるんですが、まだチケットがあります。1200人以上入る大きなホールなので…」
支配人「明日の宣伝をするという条件で…」
いや、たぶん、もう誰も聞いていない。撮影に夢中になって会場にシャッター音がひっきりなしに響いています。かくいう私も慌ててカメラで動画撮影を始めました。なんか緊張で手が震えて、せっかく近くの席に座っているのにいい画が撮れている気がしません。
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のんさんもちゃっかり「宣伝してください」とアピールを忘れません。
観客の撮影中も、監督とのんさんのトークが続きます。
のんさん「監督、明日はまた全く違う話をしますよね。」とは、なんて意地悪な振りを。
監督「あ…。実は、90回くらい挨拶をやっているんですけど、ここからまた高山に来る人いるでしょ?」会場から思いのほか多くの手が挙がります。
監督「ほらぁ。毎回そうなので、同じ話ができないので違う話をしなきゃいけないんですよ。それを90回くらい繰り返してきたというのがあって。」
その後、お三方が立ち上がったショットを撮らせてもらって、サプライズ付きの楽しい楽しいトークショーはお開きとなりました。
3人はまた僕のすぐ近くを通って退場します。そのまま撮影していてもよかったのですが、どうしても肉眼で見たかったので、残念ながら画像は存在しません。
動画は、唐突にぶっつり切れています。
<(_ _)>
第2部開始まで30分しかないので、ロビーに出て水分補給し、とにかく歩く。エコノミークラス症候群を予防しなくては!お腹が空いたけど時間がぁ・・・
第2部につづく!