今彼がいるのは開けた場所だが、周囲を背の高い木々で囲まれている為、不気味なくらいに薄暗い。
「亡霊なんかがいたら嫌だな」
そう言いながらランスはそのトーチカに恐る恐る近づく。
内戦時、たくさんの死体を見てきたランスだが、それよりも怖いものがあった。それは亡霊だ。
昔から亡霊に取り憑かれてしまったら最後、魂を喰われ、二度と現世に戻ってはこれないと言われている。
それが嘘か本当かはわからないが、ランスは幼い頃からその手の話が大嫌いだった。
ごくりと唾を飲み込み、トーチカの入口に視線を向けた、そのとき──。
「うわあぁっ!」
大きな声を上げると同時に、ランスはその場に尻餅をついた。
「あ、青白い光……」
──亡霊。
トーチカの奥に、『青白く光るもの』があった。
──亡霊なのか?
だが、ランスを襲ってくる様子はない。地面の上に横たわるように、ぴくりとも動く気配はない。
「このままシカトしてもいいんだけど、亡霊とは違うような気がするし」
ランスはひとり言のようにそう呟くと、尻についた土を払いながら立ち上がった。そして、勇気を出して『青白く光るもの』に近づく。
距離が近づくにつれ、その正体が露になってきた。
「これは」
身体全体を青白い光で包まれているためにぼんやりとはしているが、それは少女――? よく見れば可愛らしい顔立ちに長い髪。そしてワンピースの上から胸当てと籠手、脚には具足を履いているのがわかった。
『青白く光るもの』の正体。それはまだ十にも満たない幼い少女だったのだ。
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