フランシスコ・ザビエルが
日本を離れてから40年
ようやく教義書が
出版されるようになり、
およそ400年前
ヨーロッパから伝わった
新しいことばが印刷されて
本となり、
「ことば」が拡がっていきました。
これもその一つ。
第四 あべまりあの事。
弟 Dに対し奉りてのみおらしよを申すべきや。
師 そのぎにあらず、われらが御とりあはせててんにましますもろもろのぜんにん、中にもあくにんのためになかだちとなり玉ふ御はゝびるぜんさんたまりやにもおらしよ申あぐる也。
弟 びるぜんさんたまりやに申あげ奉るさだまりたるおらしよありや。
師 あべまりやといふおらしよなり。たゞいまをしふべし。
がらさみちみち玉ふまりやに御れいをなし奉る、御あるじは御みとともにまします、によにんの中にをひてわきて御くはほういみしきなり。又御たいないの御みにてましますJsはたつとくまします。Dの御はゝさんたまりやいまもわれらがさいごにも、われらあくにんのためにのみたまへ。あめん。
弟 此のおらしよはたれのつくり玉ふぞや。
師 さんがぴりゑるあんじよたつときびるぜんまりやに御つげをなし玉ふときの御ことばと、さんたいざべるびるぜんまりやにごんじやうなされたることばに又さんたゑけれじやよりのことばをそへ玉ふをもて、あみたて玉ふおらしよなり。
弟 御はゝびるぜんまりやはたれ人にておはしますぞや。
師 Dの御はゝのためにえらびいだされてんにをひてもろもろのあんじよのうへにそなへられ玉ひ、しよぜんみちみちてんの御きさきのくらゐにあげられ玉ふたつときぜんによにんにてましますなり。これによて御子Jxの御まえへにおひて、もろもろのべあとよりもすぐれて御ないせうにかなひ玉へば、われらが申あぐることはりをおほせかなへらるゝがゆへに、をのをのきりしたんふかくしんごうし奉るものなり。
(平凡社 吉利支丹文学集2「どちりなきりしたん」より ※反復記号の「くの字点」はかながきに)
注)
「D」天主
「Js」イエズス
「Jx」イエズス・キリスト
「びるぜんさんたまりや」 聖マリア
「さんがびりゑるあんじよ」 大天使ガブリエル
「さんたいざべるびるぜんまりや」 エリサベト
この「天使祝詞」を読んでも、
フラ・アンジェリコの『受胎告知』を、
当時の日本人は
思い浮かべることはできなかったでしょうが、
明治時代以降、
印刷術の発達によって、
それも可能になりました。
安土桃山時代、
私達のご先祖様の中にも、
クリスマスのことを知った人は、
何千人、何万人といたはずです。
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