BCG接種の新型コロナウイルスによる肺炎の死亡率への影響に関する科学的検討
202/004/16
弁理士 本庄武男
1.本稿の目的
BCG接種の国別特性が新型コロナウイルスによる肺炎(以下、covid-19という)の死亡者数に影響するか否かについて科学的に考察すること。
2.結論
現時点のデータでは、BCG接種の国別特性がcovid-19の死亡者数に影響するとは言えない。今後科学的根拠に基づく考察をすることは不可能ではないので、科学的根拠に基づく検討をし、covid-19からの脱出に役立てるべきである。
3.詳論
3-1.現在報告されている内容
現在BCG接種の国別特性がcovid-19の死亡者数に影響するのではないかという報告がネット上に多数見られる。主なものを下に紹介する。
20200405 yahoo news covid-19とBCGの相関関係について免疫学の宮坂先生の話
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200405-00171556/
https://www.scmp.com/news/china/article/3080096/could-existing-vaccines-help-fight-covid-19-researchers-are-trying-find
https://www.livescience.com/coronavirus-protection-using-tuberculosis-vaccine.html
https://news.abplive.com/health/coronavirus-treatment-vaccine-countries-with-bcg-vaccine-have-lower-deaths-from-covid-19-1191699
これらの記事ないし報告の要旨は、「covid-19による死者が少ない国は過去及び現在BCG接種を国として義務付けしている。日本は1948年から一時を除いて継続的にBCG接種を行っている。従って、日本についてはcovid-19による死者は出にくいと思われる」但し、いずれの報告もcovid-19による死者数とBCG接種の間には相関関係はあるが因果関係は確認されていない、というものである。
3-2 covid-19による死者数についての更なる検討
これらの記事或いは報告の基礎となっているcovid-19による死者数は、100万人当たりの死者数であり、その国の人口に左右されない点で、有意義な数字と思われる。下のスライド1という表(https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200405-00171556/
のスライド1)は、上記した最近のcovid-19による死者数とBCG接種の間の関係を示すものとして紙上(dot.asahi.com)に2020/0407に掲載されたなものであり、代表的な記事と思われる。
この記事の中に、次のようなことが書かれている。「下のスライド1における100万人当たりの死亡者数が10以下の国が7カ国(赤字)あり、そのうちの6カ国が広範なBCG接種を現在行っていました(表中、赤字のyes/presentとは広範な接種が現在行われているという意味。yes/pastとは広範な接種が過去に行われていた。noはほとんど行われていないという意味)」
「その6カ国のうち、3カ国がBCGワクチンの日本株、2カ国が旧ソ連株を使っていました。」
「一方、これまで広範なBCG接種をやっていなかったアメリカ、イタリアは人口100万人当たりの死亡率は高い傾向があります(アメリカは人口100万人当たりの死亡率がイタリアよりかなり低いのですが、今後もっと急激に増えるでしょう)」
「欧州諸国は、ポルトガル以外は広範なBCG接種はかなり前に止めていて、これらの国では軒並み死亡率が高い傾向があります」
多くの記事は概ねこのような論調になっている。
このように、これらBCGの効果を述べた記事や報告では、BCG接種がcovid-19による死亡率を低くする効き目があったと、報告している。
更に、オランダ、オーストラリア、アメリカ、台湾など多くの国で、BCGワクチンのcovid-19への対抗性についての研究が進められているとする記事もある。
https://www.statnews.com/2020/04/14/decades-old-tb-vaccine-attracts-attention-and-skepticism-as-a-potential-weapon-against-covid-19/
日本のことを自慢したい日本人は沢山いて、この記事に飛びつくことであろう。
3-2-1 データの採取時点についての問題点
しかしながら、感染症は、その初期時点では、ゆっくりと死亡者数を伸ばし、ある時点で急激に死亡者数が増加し、やがて多くの国民に抗体が生じることで死亡者数の増加度は緩やかとなり、最終的に感染が終結する。このように死亡者数は時々刻々変わるものであり、ある時点での各国の死者数を比較しても、covid-19の国毎の特性と死亡率との一義的な因果関係を立証したことにならないという問題がある。
分かりやすく言うと、感染症の死者数は成長するタケノコの背丈に例えられよう。
また、感染症の死亡率を左右するBCGといった国特性は、タケノコの種類そのものに例えられる。
例えば、タケノコの種類AとBの成長性を比較するのに、Aのタケノコは、発芽から1週間後の背丈を測り、Bは1か月後を測ったとすると、タケノコは成長が早く1週間後と、1か月後では同じ種類のタケノコでも背丈は全く異なるから、それらの異なる時点での背丈を比較しても、タケノコの種類による成長性は判断できない。つまり、A、B共に同じ時期に発芽したものについて、発芽から同じ期間経過したタケノコにおける背丈を測らなければ、タケノコの種類とタケノコの成長性との間の因果関係は判断できないのである。(実際には、後記するように、肥料や日照、水はけといった要素も、同一にしなければならない。)
covid-19による死亡者の数の比較も同様であり、ウイルスの感染初期、中期、後期で、感染速度はゆるやかであったり、爆発的であったり著しく変化する。
従って、例えばX国とY国の国毎の特性に基づく死亡率の差異を観測したければ、感染の発生から同じ時間を経た(例えば1年後など)時点でのX国とY国の死亡者数((100万人当たり)を比較しなければ、X国とY国の国毎の特性に基づく死亡率の因果関係は立証できない。例えば感染発生初期の死亡者数と、感染発生から数か月も経った時点での死亡者数を比較しても、その観測は全く無意味なことは自明である。
前記した種々の記事や報告(スライド1も含む)には多くの国毎の死亡者数を比較することによって国毎の特性(BCG接種による死亡者数への寄与度が測定されているが、いずれも死亡測定の時点(感染発生から何か月目といった時点)が統一されておらず、その判断は信頼性に欠けるといわざるを得ない。
もちろん、発生から収束まで数年かかる感染症についてのこのような実験は極めて困難である。このような実験は地球規模での実験となり、新型コロナについて同じ時点での測定結果を比較するというのは無理難題ということは極めて困難であるが、だからと言って信頼性の乏しい観測結果に基づいて感染症対策を行うことは極めて危険であることは理解しなければならない。
3-2-2 covid-19による死亡原因に基づく検討
感染症による死亡者数については、上記した感染の発生から経過した時間の他に、下に記載するようないくつかの重要な要因が存在する。
①BCGといった国特性によるもの
②人口密度
③医療資源の貧弱さ(充実度)
④検査数の多さ
なお、「人口」も、死亡者の数に大きい影響があるが、ここでは100万人当たりの死亡者数を扱うため、この点の影響は無視しうるので、ここでは省略する。
特に上記3つ要因②、③、④の影響が大きいことは、これまでの感染症の歴史から誰もが理解していると思われる。これらはタケノコの成長を例にとれば、次の通りである。即ち、タケノコの成長にはタケノコの種類とは別に、肥料、日当たり、雨の量といった事項が重要な要素であり、もしタケノコの種類ごとに成長性に有意差があるかどうかを検討するのであれば、これらの要素(肥料、日当たり、雨の量)を同一にした上でのタケノコの成長度合いを比較しなければ、タケノコの種類とタケノコの成長性との因果関係を見ることにはならないことは、自明である。このような因果関係に基づかない関係(単なる相関関係)を調べても科学的な根拠に基づく検証とは言えない。
covid-19による死亡原因についても、3-2-1で説明した死亡データの取得時期と同様、これら②、③、④の要素を分離(同一に)して死亡者数を観測しなければ、科学的根拠を伴う判断とならないが、上記の従来の記事や報告に用いられている死亡者数については、これらのことが全く無視されているので、これらの記事や報告に信頼性があり得るはずがない。
4.まとめ
以上述べたように、従来のBCG接種の有無がcovid-19による死亡率に影響があるか否かを問題とした記事や報告は、covid-19による死亡率に大きく影響することが自明の感染発生から死亡者数観測の時期までの時間という要素はもちろん、上に記載の人口密度、医療資源の貧弱さ(充実度)、検査数の多さといった極めて重要な要素による影響を無視した観測データを用いているので、その信頼度は限りなく低いものと言わざるを得ない。
もちろん、BCG接種の有無とcovid-19による死亡率との間に何らかの相関 がある可能性を否定するものではないが、ことは何万もの命にかかわる問題であるので、根拠のない相関をあてにすることなく、因果関係を立証する努力を行うべきである。当然ながら、為政者の場合には、キチンとした因果関係に基づく専門家の意見を重視するべきと思料する。
よって、「2.結論」に記載の通り結論する。
5.余論
NHKの記事https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200416/k10012390271000.html?utm_int=news_contents_tokushu_004
によると、「ネテア教授のチームは、すでにオランダ国内の8つの病院で医療従事者を対象にした臨床研究を始めている。
1500人に接種して、接種していないグループとの間で感染の割合に違いが出るかなどを分析。最初の結果が出るまでには3か月から6か月かかる見込みだという。」とのことである。このような相当数の感染者にBCGワクチンを接種して、接種していないグループとの間で感染の割合に違いが出るかなどを分析する手法(実験)は、それなりに科学的ではあると考えられる。ただし、この方法ではBCGワクチンの有無と「感染の度合い」との因果関係を調べるにとどまり、死亡率との因果関係に迫るものではない。もちろんBCGワクチンの有無と感染の度合いとの因果関係を調べることも、全世界的にはそれなりに重要である。(感染しなければ死なないのであるから)が、最終目的は患者が死なないことであるので(特に日本の場合欧米諸国と異なり、死亡者数が少ないことが注目されたことであるので)、日本の場合には感染の度合いを調べることはあまり意味がない。
このように最終目的である「死亡率を低下させる方法」を調べるということに関しては、前記したように極めて困難な実験を乗り越えなければならないであろう。
202/004/16
弁理士 本庄武男
1.本稿の目的
BCG接種の国別特性が新型コロナウイルスによる肺炎(以下、covid-19という)の死亡者数に影響するか否かについて科学的に考察すること。
2.結論
現時点のデータでは、BCG接種の国別特性がcovid-19の死亡者数に影響するとは言えない。今後科学的根拠に基づく考察をすることは不可能ではないので、科学的根拠に基づく検討をし、covid-19からの脱出に役立てるべきである。
3.詳論
3-1.現在報告されている内容
現在BCG接種の国別特性がcovid-19の死亡者数に影響するのではないかという報告がネット上に多数見られる。主なものを下に紹介する。
20200405 yahoo news covid-19とBCGの相関関係について免疫学の宮坂先生の話
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200405-00171556/
https://www.scmp.com/news/china/article/3080096/could-existing-vaccines-help-fight-covid-19-researchers-are-trying-find
https://www.livescience.com/coronavirus-protection-using-tuberculosis-vaccine.html
https://news.abplive.com/health/coronavirus-treatment-vaccine-countries-with-bcg-vaccine-have-lower-deaths-from-covid-19-1191699
これらの記事ないし報告の要旨は、「covid-19による死者が少ない国は過去及び現在BCG接種を国として義務付けしている。日本は1948年から一時を除いて継続的にBCG接種を行っている。従って、日本についてはcovid-19による死者は出にくいと思われる」但し、いずれの報告もcovid-19による死者数とBCG接種の間には相関関係はあるが因果関係は確認されていない、というものである。
3-2 covid-19による死者数についての更なる検討
これらの記事或いは報告の基礎となっているcovid-19による死者数は、100万人当たりの死者数であり、その国の人口に左右されない点で、有意義な数字と思われる。下のスライド1という表(https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200405-00171556/
のスライド1)は、上記した最近のcovid-19による死者数とBCG接種の間の関係を示すものとして紙上(dot.asahi.com)に2020/0407に掲載されたなものであり、代表的な記事と思われる。
この記事の中に、次のようなことが書かれている。「下のスライド1における100万人当たりの死亡者数が10以下の国が7カ国(赤字)あり、そのうちの6カ国が広範なBCG接種を現在行っていました(表中、赤字のyes/presentとは広範な接種が現在行われているという意味。yes/pastとは広範な接種が過去に行われていた。noはほとんど行われていないという意味)」
「その6カ国のうち、3カ国がBCGワクチンの日本株、2カ国が旧ソ連株を使っていました。」
「一方、これまで広範なBCG接種をやっていなかったアメリカ、イタリアは人口100万人当たりの死亡率は高い傾向があります(アメリカは人口100万人当たりの死亡率がイタリアよりかなり低いのですが、今後もっと急激に増えるでしょう)」
「欧州諸国は、ポルトガル以外は広範なBCG接種はかなり前に止めていて、これらの国では軒並み死亡率が高い傾向があります」
多くの記事は概ねこのような論調になっている。
このように、これらBCGの効果を述べた記事や報告では、BCG接種がcovid-19による死亡率を低くする効き目があったと、報告している。
更に、オランダ、オーストラリア、アメリカ、台湾など多くの国で、BCGワクチンのcovid-19への対抗性についての研究が進められているとする記事もある。
https://www.statnews.com/2020/04/14/decades-old-tb-vaccine-attracts-attention-and-skepticism-as-a-potential-weapon-against-covid-19/
日本のことを自慢したい日本人は沢山いて、この記事に飛びつくことであろう。
3-2-1 データの採取時点についての問題点
しかしながら、感染症は、その初期時点では、ゆっくりと死亡者数を伸ばし、ある時点で急激に死亡者数が増加し、やがて多くの国民に抗体が生じることで死亡者数の増加度は緩やかとなり、最終的に感染が終結する。このように死亡者数は時々刻々変わるものであり、ある時点での各国の死者数を比較しても、covid-19の国毎の特性と死亡率との一義的な因果関係を立証したことにならないという問題がある。
分かりやすく言うと、感染症の死者数は成長するタケノコの背丈に例えられよう。
また、感染症の死亡率を左右するBCGといった国特性は、タケノコの種類そのものに例えられる。
例えば、タケノコの種類AとBの成長性を比較するのに、Aのタケノコは、発芽から1週間後の背丈を測り、Bは1か月後を測ったとすると、タケノコは成長が早く1週間後と、1か月後では同じ種類のタケノコでも背丈は全く異なるから、それらの異なる時点での背丈を比較しても、タケノコの種類による成長性は判断できない。つまり、A、B共に同じ時期に発芽したものについて、発芽から同じ期間経過したタケノコにおける背丈を測らなければ、タケノコの種類とタケノコの成長性との間の因果関係は判断できないのである。(実際には、後記するように、肥料や日照、水はけといった要素も、同一にしなければならない。)
covid-19による死亡者の数の比較も同様であり、ウイルスの感染初期、中期、後期で、感染速度はゆるやかであったり、爆発的であったり著しく変化する。
従って、例えばX国とY国の国毎の特性に基づく死亡率の差異を観測したければ、感染の発生から同じ時間を経た(例えば1年後など)時点でのX国とY国の死亡者数((100万人当たり)を比較しなければ、X国とY国の国毎の特性に基づく死亡率の因果関係は立証できない。例えば感染発生初期の死亡者数と、感染発生から数か月も経った時点での死亡者数を比較しても、その観測は全く無意味なことは自明である。
前記した種々の記事や報告(スライド1も含む)には多くの国毎の死亡者数を比較することによって国毎の特性(BCG接種による死亡者数への寄与度が測定されているが、いずれも死亡測定の時点(感染発生から何か月目といった時点)が統一されておらず、その判断は信頼性に欠けるといわざるを得ない。
もちろん、発生から収束まで数年かかる感染症についてのこのような実験は極めて困難である。このような実験は地球規模での実験となり、新型コロナについて同じ時点での測定結果を比較するというのは無理難題ということは極めて困難であるが、だからと言って信頼性の乏しい観測結果に基づいて感染症対策を行うことは極めて危険であることは理解しなければならない。
3-2-2 covid-19による死亡原因に基づく検討
感染症による死亡者数については、上記した感染の発生から経過した時間の他に、下に記載するようないくつかの重要な要因が存在する。
①BCGといった国特性によるもの
②人口密度
③医療資源の貧弱さ(充実度)
④検査数の多さ
なお、「人口」も、死亡者の数に大きい影響があるが、ここでは100万人当たりの死亡者数を扱うため、この点の影響は無視しうるので、ここでは省略する。
特に上記3つ要因②、③、④の影響が大きいことは、これまでの感染症の歴史から誰もが理解していると思われる。これらはタケノコの成長を例にとれば、次の通りである。即ち、タケノコの成長にはタケノコの種類とは別に、肥料、日当たり、雨の量といった事項が重要な要素であり、もしタケノコの種類ごとに成長性に有意差があるかどうかを検討するのであれば、これらの要素(肥料、日当たり、雨の量)を同一にした上でのタケノコの成長度合いを比較しなければ、タケノコの種類とタケノコの成長性との因果関係を見ることにはならないことは、自明である。このような因果関係に基づかない関係(単なる相関関係)を調べても科学的な根拠に基づく検証とは言えない。
covid-19による死亡原因についても、3-2-1で説明した死亡データの取得時期と同様、これら②、③、④の要素を分離(同一に)して死亡者数を観測しなければ、科学的根拠を伴う判断とならないが、上記の従来の記事や報告に用いられている死亡者数については、これらのことが全く無視されているので、これらの記事や報告に信頼性があり得るはずがない。
4.まとめ
以上述べたように、従来のBCG接種の有無がcovid-19による死亡率に影響があるか否かを問題とした記事や報告は、covid-19による死亡率に大きく影響することが自明の感染発生から死亡者数観測の時期までの時間という要素はもちろん、上に記載の人口密度、医療資源の貧弱さ(充実度)、検査数の多さといった極めて重要な要素による影響を無視した観測データを用いているので、その信頼度は限りなく低いものと言わざるを得ない。
もちろん、BCG接種の有無とcovid-19による死亡率との間に何らかの相関 がある可能性を否定するものではないが、ことは何万もの命にかかわる問題であるので、根拠のない相関をあてにすることなく、因果関係を立証する努力を行うべきである。当然ながら、為政者の場合には、キチンとした因果関係に基づく専門家の意見を重視するべきと思料する。
よって、「2.結論」に記載の通り結論する。
5.余論
NHKの記事https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200416/k10012390271000.html?utm_int=news_contents_tokushu_004
によると、「ネテア教授のチームは、すでにオランダ国内の8つの病院で医療従事者を対象にした臨床研究を始めている。
1500人に接種して、接種していないグループとの間で感染の割合に違いが出るかなどを分析。最初の結果が出るまでには3か月から6か月かかる見込みだという。」とのことである。このような相当数の感染者にBCGワクチンを接種して、接種していないグループとの間で感染の割合に違いが出るかなどを分析する手法(実験)は、それなりに科学的ではあると考えられる。ただし、この方法ではBCGワクチンの有無と「感染の度合い」との因果関係を調べるにとどまり、死亡率との因果関係に迫るものではない。もちろんBCGワクチンの有無と感染の度合いとの因果関係を調べることも、全世界的にはそれなりに重要である。(感染しなければ死なないのであるから)が、最終目的は患者が死なないことであるので(特に日本の場合欧米諸国と異なり、死亡者数が少ないことが注目されたことであるので)、日本の場合には感染の度合いを調べることはあまり意味がない。
このように最終目的である「死亡率を低下させる方法」を調べるということに関しては、前記したように極めて困難な実験を乗り越えなければならないであろう。
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