見出し画像

日記、日々の想い 

しろっ!…おっきいね、また

 と、思うことが、多かった。「まあ、綺麗なわんちゃん!」とか。「しろっ、脚、速っ!」とか。家族だけの、自己わん愛、究極のナルシズムに、浸っていたかったが。なかなか、そうならなかった。あのバブルの時代。崩壊は、確かに、始まったが、直ぐには変わらない。
 このど田舎にまで及んだバブルの宅造ブーム。懐の寂しいB級、いやC級サラリーマンには、買える家なんて、限られていた。実家の権利は、長子の兄に、譲った。母を、丸投げにする末子なりの最低限のひととしての、矜持だった。
 妻の親戚に、借金して、マンションを、買った。父親が、早くに亡くなったから、勝手してきて、実家の兄には、余り無理は言え無い。だから、マンションは、借金の塊。バブル前に、値上がりしたが、買う物件も値上がりを始めたから、限度がある。安いど田舎に、引っ越した。
 バブルが崩壊して、暫くしたら、ど田舎は、また、過疎化し始めた。首都圏の端っこの極め付きのど田舎。でも、だから、いくらでも、土地が有るから、犬も、おっきいっ!
 やはり、まず、ハスキーだった。欧米で、最も飼われる、ラブや、ゴールデンではない。ちょっと、扱い辛い犬だ、とか。ラブや、ゴールデンの方が、本当は、良いのにって話は、その時代にも、犬の専門家の間には、あった筈だ。
 特に、ラブ。従順だし、毛足も長くない。欧米で、最も、飼われている。盲導犬の定番犬のような温和な性格で、大型犬の中では、小振り。日本の暑い夏にも、順応性がありそうだ。運動量が決して多くはないので、そんなに長い散歩も、必要としない。家の中でも、飼える可能性のある大型犬でもある。
 ハスキーは、大型犬と中型犬の間くらいのサイズだ。しかし、あくまでも、そり犬。あのシベリアの果てしない極寒の荒野、雪原を、ひとを載せて、地の果てまで、そりを曳く。尽きない体力。だから、散歩などは、長ければ長いほど良い。本来は、室内などでは、飼えない。ただ、その点、このど田舎は、長い散歩には、適していた。交通量の少ない公道.広い公園。多分、それに付き合う覚悟と体力が、飼い主に欠けていたようには、思える。
 ただ、ハスキーは、体重的には、負けている犬もいたかも知れないが、体高60cm位はあったしろは、見下ろせるサイズでも、あった。だから、しろも、ふんって、感じ。相手も、そんな攻撃的には、ならないから、危ない雰囲気には、ならなかった。
 だいたい、本来、犬は、自分の本当の縄張りである自宅以外では、決して、いきなり喧嘩を売るようなことは、しない。しかも、家にいついた小動物は、攻撃対象にはしなくて、守ったりする。小鳥とか。烏は、追い払うが。ただ、野良猫が、自宅の池の金魚を狙っても、放っておく可能性がある。野良猫が、家に頻繁に出入りしていれば、家族と言うか、群れの一員として、認識している可能性もあるのだ。
 むしろ、近所の猫が、路上で、こっちの様子を窺っている時に、突然、噛みつこうとしたことはある。狩に出た場で、餌と認識したのかも、知れない。ただ、縄張り外での同族の犬との争いは、威嚇をすることはあっても、避ける傾向があったように思う。
 日本犬の性なのか、飼い主が悪いのか、他家の犬とは、殆ど仲良く出来なかった。最近、洋犬の血が濃くなって、公園などで、遊んでいる姿を見ると、不思議にも、羨ましくも思う。我が家に、他家の犬が近付けば、吠え募る。他家に、我が家の犬が近づけば、吠えかかられる。その延長線上に、散歩があった。だから、結構、人見知り、いや犬見知りをしない洋犬であっても、喧嘩にはならないが、馴染みもしない。公園でも。現代のように、ドッグランのような犬同士遊べる自然な施設が、もっとあったら、馴染めて、遊べたのかも知れないな、と思ったりもする。
 とにかく、問題は、散歩道に、厳然と存在した、あの家のセントバーナード二頭だったとは思う。分譲住宅を出れば、ずっと田んぼ道で、家は、殆どなかった。分譲住宅内でも、吠えられる犬はいたが、そこまで大きな犬はいなかったので、警戒はしても、しろが、パニックになることはなかった。 
 ただ、しろは、性格が弱いくせに、結構攻撃的でもあったから、ちょっと威嚇的な、がんを飛ばしてくるような犬に対しては、必ず、ファイティングポーズは、取った。
あの、怖〜ぃっシェパードのような、威嚇的な犬に対しても。ただ、基本は、しろより、一回り大きいような大型犬は、しろなど眼中にないようではあった。良く会うもう一頭のシェパードなどは、むしろ、おばあちゃんらしくて、よぼよぼしていて、歩くのに精一杯。他人、いや他犬のことなど、構っていられませんっ、と言う感じだった。
 それにしても、その時代のど田舎は、まさに、ちょっとした犬種図鑑の趣はあった。図鑑を見ないと、種類の分からない犬もいた。はっきり、覚えている超大型犬は、ボルゾイ。ドッグレース犬だから、もの凄い運動量が、必要。だから、我が家のある住宅地から、数キロ離れた町の一番奥の住宅地から、散歩に来ているようだった。もちろん、この怖げな犬には、しろは、警戒して、ひとを盾にして、ファイティングポーズを取ったりするが、ボルゾイは、しろなど、まったく相手にしてくれなかった。
 セントバーナードは、散歩では、会ったことはなかった。ただ、たまにルートを変えると、他にも、飼っている家はいて、必ず、しろは、あの野太い声で、吠えられて、震え上がっていた。普通の背の高い物置きにしか見えない小屋で、飼われているセントバーナードもいた。散歩中で会った犬で、一番大きかったのは、ホワイトピレニーズ。セントバーナードに近いサイズの真っ白な超大型犬。これも、大人しいのか、相手にしていないのか、しろは、見向きもされなかった。もちろん、しろは、ひとを盾にして、いきがっていたが。こっそりと。
 たまに、行きあった秋田犬は、シェパードのように威圧的で、睨まれたしろは、ファイティングポーズなどとれずに、震え上がってはいた。ただ、一番、印象に残っているのは、アイリッシュセッター。しろは、絡むことすら出来なかった。飼い主は、リードなど付けていない。アイリッシュセッターは、ひたすら、走って行く。傍目も振らずに。艶やかで、美しい濃い茶系の長い毛並み。なびかせながら、うっとりするような美しいフォームで。走り去って行く。飼い主は、ただバイクを走らせていて、後を追って行くだけ。う〜んっ。何度も行きあったが。しろと自分、父子で、あんぐり。立ち止まって、見送ることしか、出来なかった。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「犬の話」カテゴリーもっと見る