そのおまえを、抱く
時空は
おまえの分だけ
歪んだよな
いや、それだけじゃない
とうさん、かあさん
にいさん、ねえさん
ばあちゃんも
近所のおじさんやおばさん
親戚のおじさんやおばさん
みんな歪ませた
幼なじみのあの子は
どうだっただろうか
どっちの誕生日が
早かったかな
遅く生まれた方が
早く生まれた方を
歪ませたのかな
いや、違うな
お互いが、お互いを
歪ませた
そうして、ずっと、ずっと
生きて来て
先生も、同級生も
人見知りのおまえだけど
それなりに、出来て
お互いに、きっと
歪ませ、歪まされて
恋人が、出来て
歪ませ合いながら
結婚で、もっと
歪ませ合って
子どもたちが、出来て
子どもたちと言う歪みで
もっと、歪まされて
でも、おまえも
子どもたちを、歪ませて
そうだ、いぬたちもだな
子どもの頃に
捨てられた子犬に、歪んで
その子犬を、歪ませて
拾って、歪み、歪ませた
でも、捨ててしまって
歪ませて、歪んだ
そして、おとなになって
今度は、子どもたちが
こいぬを貰い、拾って
子どもたちと、こいぬたちが
歪ませ合っていて
おまえは、みんなに
歪ませられて
歪ませていた
でも、仕事にも行くから
上司、同僚、後輩たち
取引先の人たち
いや、それだけじゃない
通勤もするし
買い物にも、食事にも行く
たまには、通院もする
そんな人々、みんなと
それぞれに、歪ませ合った
でも、そんなことも
最近は、なんだか
遠いな…
とうさんも、かあさんも
兄弟も、親族も
みんないなくなって
いぬたちも、いなくなって
人々は、みんな遠くて
でも、こうして
おまえは、生きている
その目の前の空間
歪んでいる気がする
きっと、おまえが
生きている
せいかな…