物心ついたおまえは
悪性の扁桃腺で
熱ばかり出して
食も、すごく細くて
痩せこけた子どもだった
学校へ行き始めると
周りの友だちと
どうしても、比べてしまう
おまえは、こうして
身体が、とりわけ貧弱で
熱ばかり出して
偏食が、酷くて
給食も、満足に
食べられないよな
おまえは、あの
結核に取り憑かれて
隔離病棟に、閉じ込められた
叔父さんみたいに
救いのない病身に
生まれついたに違いない
おまえは、もともと
ただ、病気なんだよ
他人より、劣った
病気の子どもで
それも、年中
熱ばかり出す
最悪の、悪性扁桃腺
癒着しているから
手術だって
直ぐには、出来ないんだ
いつまで、経っても
どこ迄、行っても
劣った病人のままだよ
ただ、そのままで
おとなになるしかないんだ
きっと、その間に
ごんなに、弱い
病気そのもののおまえは
叔父さんと同じに
結核に、取り憑かれるんだ
弱いおまえに
ペニシリンなんて
効くはずもないよ
それで、救いのない
瀕死の患者になり果てて
叔父さんと、同じに
隔離病棟に、放り込まれる
後は、死を待つだけになる
だって、もちろん
生まれつき、ただ弱くて
半ば、いや全部
まるまる病気のおまえは
死ぬ為にだけ
生まれてきた
それだけだったんだ
そんな暗い思いは
こころを、いつも
気がつくと、すべて
埋め尽くして、しまっていて
おまえの思いは
息もつけない息苦しさで
今にも、窒息しそうだった
でも…
そんな風に
なっていても
おまえには、ふと
違う思いが、生まれてきて
その思いは
確かに、最初は
仄かな炎の揺めきだったけど
やがて、しっかりとした
炎に、育って
もうひとつの
闇に惑う思いを
しっかりと、導き始めた
そうだ、おまえは
死ぬ為に
生まれてきたなんて
そんなはずはない
だって、こうして
生きているだろう
それは、やがて
死ぬだろうけど
その死ぬおまえも
今迄は、間違いなく
生きてきて
その今も、間違いなく
生きているんだから
生きて行くことだけを
思えば、考えれば
それだけで、良いんだよ
死は、きっと
何にも、ないことで
だから、死を
思うことも、考えることも
必要なんて、何にもない
おまえは、だから
生きているものだから
生きることだけを
考えれば、良いんだよ