夢も、なんにも見ない
な〜んっにも、ない
つまらない眠り
だったんだけどね
あの覚醒し切って
うなされていた
不眠の悪夢に
纏わりつかれていた
長い夢遊病の一日が
ようやく終わって
さあ、帰るぞ
でも、意識は半ば
飛んだままで
帰りつけるかな
いや、ても
何とか、だ
辿り着いていた
玄関のフローリングに
倒れ込んだ
…その夜、寝床
昨夜の覚醒に
取り憑いていた
その執拗な夢魔が
また、纏わりついてくる
そう思った一瞬が
確かに、あった気がして…
でも、そのまま
あとは、な〜んっにも
記憶は、ない
深い、深い
果てしなく、深い
でも、な〜んっにもない
そんな眠り、だったのだろう
ふと、気づくと
何もかもが
さっぱりとしたアタマ
落ち着いている空間
さらさらと流れる時間
何もかもが、とても普通で
何よりも、まず
とにかく、普通な
そんな、この自分がいた
なんだか、気分は良い
覚醒したままの悪夢は
遥か過ぎ去って
思い出せないほど遠く
この深かった眠りは
泥のような眠りと
言うのかも知れないけど
いや、違う
ただ深い眠りは
夢も、何にもない
でも、無色透明で
その先には、こうして
確かな生命の呼吸を
甦してくれたのだ