エヌ氏の息子が
小学校から帰る時間に
一通の封筒が
ポストに放り込まれた。
それは新聞からの
切り抜き文字で作られた
脅迫状だった。
【こどもはあずかった。
いちおく円よういしろ。
ごご六じにでんわする。
けいさつにはしらせるな。
けいさつダメ!ぜったい!】
そして実際
息子は帰宅しなかった。
夫人の反対を押し切って
エヌ氏は警察に通報した。
警察は宅配業者を装って
エヌ氏邸内に侵入した。
6時きっかりに
電話が鳴った。
エヌ氏が
受話器を取るのと同時に
録音テープが回り
逆探知が開始された。
『もしもし…パパ…』
それは意外にも
我が子の声だった。
「お前か…無事か?」
『うん…』
夫人も堪らず話し掛ける。
「大丈夫なの?」
『…大丈夫』
「どこだ…何処にいる?
パパが絶対に助けてやる。
それまで頑張るんだ!」
話を引き延ばすように
刑事が合図する。
エヌ氏は
いささか興奮して怒鳴った!
「犯人を出せ!
金は用意した!
1億でも2億でも
くれてやる!
だが息子に
何かあったら…
貴様を殺してやる!」
電話の向こうが沈黙した。
しまった…
犯人を怒らせてしまったかも
知れない…
このまま
連絡が途絶えたら…
「お…おい…
い…今のは言い過ぎた…
私は息子を
返して貰いたいだけだ。
お願いだ…
何とか言ってくれ…
息子の為なら何でもする」
受話器の向こうから
微かな鳴き声がする。
「おい…」
すると意外な言葉が
涙で震える声で告げられた。
『パパ…ゴメンナサイ…
ぼく嘘ついたの…
ゲームばっかり
しちゃいけないって…
パパ怒るから…
困らせようって思ったの…』
刑事たちは顔を見合わせた。
エヌ氏が
眉を吊り上げたのを見て…
夫人が慌てて言った。
「あなた駄目よ!
怒らないって
約束してあげて…」
「あ…ああ…
わかってる…
怒ってなんかいない!
いま何処にいるんだ?」
『おじいちゃん家の
そばの電話ボックス…
家出しようと思ったの…』
泣き出す息子の声に
エヌ氏の目からも
涙がこぼれ落ちた。
「そうか…
じゃ迎えに行くから
おじいちゃん家で
待っていなさい」
電話は切れた。
逆探知の結果も
義理父の住所付近を
示していた。
ようやく一同に
安堵のため息がもれた。
「ご迷惑を
お掛け致しまして…
申し訳御座いませんでした」
エヌ氏は刑事に頭を下げた。
「いやはや…
小さな知能犯
といったところですかな」
微笑ましい脅迫状を手に
白髪の刑事は苦笑した。
刑事たちを見送って
部屋まで戻ると
電話が鳴った。
『パパ…』
「おじいちゃん家に着いたか。
何だ…
まだ泣いてんのか?ははは」
『エヌさん』
知らない男の声だ。
「誰だ…?」
『警察は駄目だと
言っていたはずだ!
ガキを見習いな…
ちゃんと教えた通りに
演じてくれたぜ!
お前の息子…
役者の才能があるのかもな!
さて…
金は三分後に
仲間が取りに行く!』
「な…なんだと?」
『我々も…
宅配業者の格好で行くよ♪』
ドン〓たまこ〓デン
気をつけてくださいね(*´ω`*)
↑何をだ…?www
上手ですね😎