◯ ECの弱みを補えるのか !
NTTドコモは、同社の共通ポイントプログラム「dポイント」がたまるネットショッピングサービス「dポイントマーケット」を開始した。同社は2024年4月にアマゾンジャパンと提携し、「Amazon.co.jp」と連携した施策を打ち出したばかりだ。再びEC(電子商取引)の強化に動いた理由は何だろうか。
dポイントがたまるアフィリエイト型サービス。
携帯4社による、共通ポイントプログラムを軸とした経済圏ビジネス競争が加速している。中でも、ここ最近大きな動きを相次いで見せているのがNTTドコモである。同社は2024年4月、アマゾンジャパンと提携。EC大手の「Amazon.co.jp」において、dポイントがためたり使えたりする施策を打ち出した。
さらにdポイントマーケットを2024年10月8日に開始した。これはdポイントマーケットを経由して各種ECサービスで買い物をすると、dポイントを獲得できるというサービスである。
獲得できるポイントは、dポイントの会員プログラム「dポイントクラブ」の会員ランクに応じて変化する。最も低い「1つ星」では還元率が0.5%だが、最も高い「5つ星」では1.5%にまでアップする。
加えて「d払い」や「dカード」などのNTTドコモの決済サービスに対応する店舗であれば、それらの利用で得られる特典を活用することで、より多くのポイントを獲得できる。さらに「ahamoポイ活」などを組み合わせれば、最大で15.5%の還元が得られるとしている。
dポイントマーケット経由で買い物ができる店舗数は、サービス開始時点で約150。商品数は1000万点以上に上るという。ただしNTTドコモ自身が直接販売するわけではない。あくまでdポイントの会員基盤を活用し、各店舗に送客することを目的としたサービスである。
いわゆるアフィリエイト型のECサービスで、競合他社も同様のサービスを提供している。代表的なサービスとしては、楽天グループの「楽天リーベイツ」や、LINEの「LINEブランドカタログ」などが挙げられるだろう。
実はNTTドコモ自身も既に同様のサービスとして、「d払い ポイントGETモール」を展開している。こちらは2024年10月22日にサービスを終了してdポイントマーケットに統合する予定だ。なぜNTTドコモは、このタイミングで改めてアフィリエイト型ECに力を入れるのだろうか。
dポイントが利用できるECを増やすのが狙い。
2024年10月2日にオンラインで実施されたNTTドコモの説明会において、森大輔コンシューマサービスカンパニー カンパニーコーポレート部コマース室室長がdポイントマーケット提供の経緯について説明した。森室長は提供に至った理由として、ECの市場が伸びていることを挙げた。
NTTドコモはこれまで、dポイントを実店舗で利用できるようにすることに非常に力を注いできた。その甲斐もあって実店舗でのdポイント利用は大きく拡大したが、オンラインではdポイントを利用する場が少ないという課題を抱えているという。
もちろん同社としても、「dショッピング」や「d fashion」などを展開してECの強化を図ってきた。だが競合のECサービスと比べれば規模が小さく、利用者も少ない。そこで冒頭で触れたように、Amazon.co.jpでdポイントを利用できる取り組みを開始したのだが、競合に対抗するにはより多くのECサービスでdポイントを利用できるようにする必要があった。
そこで1億人規模に達したdポイントクラブの会員基盤を活用し、ECサービスを強化する策として打ち出されたのが、アフィリエイト型のdポイントマーケットのようだ。
自社サービスに顧客が訪れなければ購買につながらない独立系のECサービスにとって、1億人規模のdポイントクラブ会員の送客は大きな魅力だ。その優位性を生かして相互にメリットのある仕組みを提供するというのが、NTTドコモの狙いといえるだろう。
そうであれば、なぜd払い ポイントGETモールを終了させるのだろうか。森室長はその理由として、d払い ポイントGETモールがその名称の通り、d払いがメインの決済手段であることを特徴としていたことを挙げる。
名称を変えて新たなサービスとして提供することで、dカードなど他の決済手段を利用できることを明確に打ち出し、利用者の層を広げる狙いがあるようだ。
EC大手に「数」で対抗も課題は多い。
とはいえ、先にも触れたようにdポイントマーケットはアフィリエイト型のサービスで、決して珍しい存在ではない。店舗数も800以上のストアと提携している楽天リーベイツなどと比べれば見劣りする。
にもかかわらず、NTTドコモが後発でこうしたサービスを始めたのは、ECサービスの選択肢を増やしてdポイントユーザーの満足度を高めたい狙いが大きいと考えられる。NTTドコモはdポイントで大きな顧客基盤を持つ一方で、強力なECを持っていない。かといって今から大手に対抗できる規模のECを育てるのも困難だ。
そこで同社としては、dショッピングのような自社運営モールに加え、アフィリエイト型のdポイントマーケット、そしてAmazon.co.jpや既に提携しているメルカリなどのEC大手との連携強化によって、dポイントが利用できるECサービスの選択肢を拡大。強力なECを持たないという弱みを、数で補う戦略に至ったのではないだろうか。
それだけに、dポイントマーケットはECの市場全体に大きな影響を与える存在とはなりにくいだろうが、NTTドコモの戦略の隙間を埋めるサービスとして重要な存在となり得ることは確かだ。
ただ現状のサービス内容には不足している点がある。競合と比べ物足りなさを感じる店舗数も課題だが、より大きな課題はdポイントを買い物で使えないことだ。
dポイントマーケットはアフィリエイト型という性格上、店舗での買い物でdポイントをためることはできるが、店舗でdポイントを使えるとは限らない。dポイントを使って買い物ができるようにするには、店舗側がdポイントの加盟店になる必要があるからだ。
この問題を解決するには、より多くの店舗にdポイント加盟店になってもらう以外に手段はない。その開拓には非常に時間がかかるだろう。一方でdポイントマーケット自体の店舗数を大きく増やすことも同時に求められている。非常にハードルは高いが、店舗開拓とdポイント加盟店開拓の両立がサービスの成否に大きくかかってくるだろう。