こちらの親方からは数年前、店舗を解体し家を新築するにあたり、ミシンや小道具などを譲り受けました。
その時も地元に道具類を欲しいという同業者が居たのにも拘らず、私に使ってほしいと連絡を頂いたのです。
今回も全ての道具を私に、と有難い電話でした。
親方は82歳。
近所にマンション2棟と平屋戸建ての貸家を持つ大家さんに畳の管理を頼まれ、平屋の貸家の一つを無料で借りてそこに大道具や小道具を保管し、年間10部屋程の畳替え作業をしていたと言います。
5月に免許の更新があり、免許も変納し車も無くす為、年齢的にも完全廃業する決心をしたそうです。
先日の日曜日、午後からカミさんを連れ、2人で挨拶に向かいました。
久しぶりに会う親方は82歳に見えないほど若々しく相変わらず元気で安心しました。
道具を保管している貸家に案内され、軽トラックに満載になるほど全ての道具類を積み込みました。
65年以上、畳職人として頑張ってきてその道に終止符を打つ。
その長い畳職人人生の中、いつも使用してきた沢山の道具達。
帰り際、ご夫婦で見えなくなるまで見送ってくれた親方は自分の大切にしてきた道具をどんな気持ちで見送ったのでしょう・・・。
神奈川県の名工として表彰された経験もある親方。
初めて出会った頃、『道具を見ればその職人の腕が判る』と言い『君の道具は綺麗で大事にしているねぇ』と言ってくれました。
また、『針や包丁など使っていないから錆びる訳では無く、持ち主が何の手入れもしないから錆びさせてしまうのだ』と言われた事もあります。
そういう事を言う親方だからこそ、引き継いだ道具はどれも綺麗で錆ている物などありません。
若い頃からずっと大事にしてきた大切な道具、それは畳職人として魂が籠った自分の手足です。
その全てを引き継いだ私はこの先、畳職人として親方に恥じる事なく大事に使用して行かなければなりません。
それと同時に、自分が後何年畳職人として頑張れるか? 自分の道具を引き継いで欲しいと思える畳職人と出会えるのか? という想いが生まれました。
私にも、いつか必ずその時は来ます。
その時、自分の大事な道具達は粗大ゴミとなってしまうのか? それとも自分が見込んだ次の世代の畳職人に引き継いでもらえるのか?
自分が針を置いた時、その心配が無い様、技術も道具も残せる、そんな職人にならなくてはと深く考える道具の引継ぎでした。
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畳刺 父ちゃん
福島畳店
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