彼女

近畿大会前日

今日、すべての練習が終了しました

あとは突撃です

いよいよ、夢に向かって最後の壁を突き破るだけです

しかし



本当のことを言うと
この日が来てほしくはありませんでした




こんな状況でこの日を迎えなければならないこと
とても残念です
悔しいし、つらいです

一番つらい思いをしているのは
彼女自身です


でも、彼女の最後のプレーは自分はちゃんと見ていました

とれる可能性の少ない、逆を突かれた相手ボレーに反応して
体をなげうっての全力プレー

そのまま激しく転倒、そのまま自力では起きることができませんでした


「ふつうあきらめるだろ
なんで追うんだそんなボール」

知らない人からは
そんな声が聞こえてきそうなプレーです

でも、本当に顧問である自分がこだわってきたのは
その部分でした

彼女はきちんとそれをやってくれました

自分がこだわり、チームがこだわり、彼女がこだわった
いつでも、どこでも、どんな試合でも、どんな練習でも、全力でプレー

本当にうちのテニスを、これ以上ないくらい表現して
最後の最後に
彼女は大きなけがをしてしまいました

チームとしては
これ以上ないくらいの大ピンチです

でも、そんなことはどうでもよい
それよりも
彼女の悔しい思いを想像し、
そして
彼女の最後のプレーを思い出すと
涙が出ます



しかし、あのプレーを見たうちの連中の心は
確実にびしっと締まっているはずです

もう、弱気になったり、怖がったり
会場の雰囲気にのまれたり
そんなことは絶対にありません

彼女は皆に絶対にひけない勇気を与えてくれています

本当に素晴らしい選手です

こんな選手に心から信頼してもらえるような
そんな顧問になれたら、どんなにうれしいでしょう
日本一になるよりも、自分にとって、ずっと価値がある
最高の目標です


そして、うちの選手ならだれでも、彼女と同じ立場になったら
みんな同じことをしたでしょう

馬鹿正直で、不器用で、いつも一生懸命で

そんなチームの顧問でいられること
本当に感謝しています

明日は彼女の分まで、他の選手たちが
最高のプレーをしてくれるでしょう

彼女が帰ってくるまで
絶対に負けるわけにはいきません