既述のページへのリンク: ①炭素という名称の起源 ②炭素の認識:木炭は何故炭素なのか ③元素としての炭素の性質 ④炭素の誕生 ⑤宇宙の炭素 ⑥原始太陽系の炭素 ⑦炭素と有機物 ⑧炭素原子とメタン分子 ⑨炭化水素分子内での炭素の結合 ➉分子内での炭素と酸素の共有結合 ⑪窒素の形成と水素と炭素と酸素 ⑫窒素を含んだ有機化合物と無機化合物 ⑬星(恒星)と炭素 ⑭炭化水素分子内での炭素―炭素結合と電子 ⑮複雑な構造の炭化水素、⑯複素環式化合物、⑰炭素化合物の多様性、⑱炭素原子と星間分子
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木材を完全に燃やすと大半は消失し僅かに灰(植物体に含まれるカリウムやカルシウムの化合物が主体)が残る。しかし,空気と触れる量を調節して不完全燃焼させると元の木材の形を残し,重量が20%程度に減った黒色の物体が得られる。これが木炭である。出来の良い木炭では,その殆どの部分が炭素で構成されており,簡単に取り出せるため、有史以前から炭素の存在は知られていた。ただし,元素としての認識は1784年になってA.L.ラヴォアジェによって確立されるまで待つことになる。
木炭の原料は材木である。材木には大量の水分が含まれているので,まず自然乾燥する。その後,空気量が調節できる装置(炭焼き釜)の中で外部加熱乾燥を行う。この外部加熱の段階で木材に含まれる様々な低分子有機成分も放出される。さらに加熱を続けると木材に着火する。この際に燃えているのは木材そのものではなくて,木材が加熱によって放出する有機低分子である。
放出される有機低分子には,もともと木材に低分子として含まれていたものと,木材を構成する高分子化合物(セルロースやリグニンなど)が熱で分解することによって生じたものとが存在する。木材には,炭素以外に,水素や酸素や窒素など様々な種類の元素が含まれている。これらの元素が結合することによって,木材を構成する様々な組織が作られている。木材の組織に含まれる元素の結合の中では,熱によって最も切れ難いのは,炭素と炭素の結合である。炭焼き釜の内部の加熱は,放出された低分子の有機化合物が酸素と反応(燃焼)する時に発生する熱によって維持されている。空気の流入量を変化させて燃焼速度を適当に保って,温度を500~600℃に調節すると,残された物質の殆どが炭素と炭素の結合で構成されている状態になる。完全に燃焼させれば,これらの残った炭素も全て酸素と反応して二酸化炭素として放出され,僅かな無機質の灰が残るだけとなる。しかし,適当なタイミングで空気の流入を止めて,燃焼をとめると,残された物質には炭素同士の結合が圧倒的に増えて,結果として炭素の塊が出来ることになる。(1)
―――――― 何故?―――――
ロウソクの火や焚き火は明るいのに,炭の火はさほど明るくないのは何故?
そもそも,材木や炭が燃えるときに,熱や光が出るのは何故?
物を燃やす時に,最初に火をつけなければならないのは何故?(自然発火という現象も,人間が介在しないで火をつけている)
炭素を含まなくても,様々な物質(水素,りん,マグネシウムなど)が燃えるのは何故。
そもそも,自然科学では,燃えるとはどういう現象を意味するのだろうか?ウィキペディアによれば,「燃焼(ねんしょう、英語:combustion)とは、発熱を伴う激しい物質の化学反応のこと。発光現象を伴うことも多い。ただし、一般的には可燃物質と酸素の化合の内、発熱と発光を伴うものを指す(ロウソクの燃焼、木炭の燃焼、マグネシウムの燃焼などがこれである)。また、生体内で起こる緩やかな酸化反応(ブドウ糖が酸化されて水と二酸化炭素になる反応など)も燃焼と呼ぶことがある。」となっている。(2)
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(1) 大谷杉郎,真田雄著,「炭素化工学の基礎」,オーム社(1980)。
(2) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E7%84%BC
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