アルバム・カバー曲5曲めは、藤山一郎さん「白虎隊」です。Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=Pnehd6q_sFI
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/147054/
白虎隊の悲劇を題材にした曲が数ある中で、最も有名なのが昭和12年に発表された島田磬也(きんや)さん作詞、古賀政男さん作曲のこの曲でしょう。挿入されている詩吟は明治17年に会津出身の漢学者佐原盛純さんが創作した漢詩を元にしています。
せっかくなので、全文をご紹介しますね。
白虎隊詩
少年團結白虎隊,
國歩艱難戍堡塞。
大軍突如風雨來,
殺氣慘憺白日晦。
鼙鼓喧闐震百雷,
巨砲連發僵屍堆。
殊死突陣怒髮立,
縱橫奮撃一面開。
時不利兮戰且退,
身裹瘡痍口含藥。
腹背皆敵將何行,
杖劍閒行攀丘嶽。
南望鶴城砲煙颺,
痛哭呑涙且彷徨。
宗社亡兮我事畢,
十有六人屠腹僵。
俯仰此事十七年,
畫之文之世閒傳。
忠烈赫赫如前日,
壓倒田横麾下賢。
この中の13行めから16行目までの4行が曲中に差しこまれています。
お気づきかと思いますが、原文では(切腹した隊士は)「十有六人」となっています。オリジナルの藤山一郎さんの曲に挿入された詩吟では原文どおり「十有六人」と吟じられていますが、その後に歌われたものはすべて「十有九士」となりました。Kiinaのカバーもそうです。
これは、佐原さんが白虎隊詩を作られたのちに、飯盛山の山頂で自害した16人に加えて別の場所で亡くなっていた隊士3人も併せて弔ったことで、詩吟の中の隊士の数を変えたのだと思います。
偶然ですが、このアルバムの表題曲である「しぐれの港」を作詞してくださった石原信一先生は会津のご出身。白虎隊の隊士たちが学んだ日新館の流れを汲む会津高校を卒業されています。石原先生は「恋する会津」という会津愛に溢れたエッセイ本も出されています。
さて、Kiinaの「白虎隊」です。
もの凄く気合いの入った歌になっていますね。
「悲劇的な結末がを迎える少年たち。愛する少年たちを失ってしまった周りの人たちの悲しみを思うと、歌っていて胸が痛くなります」という思いと
「この歌を通して、東日本大震災で辛い思いをされた東北の皆さんへ、少しでも励ましになれば」
というふたつの思いが相まって、自然と力の入った歌声になったのでしょう。
詩吟も、「白雲の城」以来二度目の挑戦ですね。
6月の明治座公演の第2部では、ショーの中盤で袴姿で「白虎隊」を歌ってくれました。
1番、2番を歌った後ステージは暗転、Kiinaの詩吟が流れる中で隊士に扮したダンサーの皆さんが飯盛山での最後のシーンを寸劇で再現。別の着物と袴に早替えしたKiinaが登場して3番を歌いました。
まさに全身全霊での熱唱で、ここから「白雲の城」への流れが第2部の一番のハイライトになっていたと思います。
もうひとつ、Kiinaの「白虎隊」で私が感じられるのは、「力強さ」と「哀感」が歌声の中にしっかり併立していることです。
「白虎隊」は、創唱者の藤山一郎さん以来、霧島昇さん、三橋美智也さん、美空ひばりさん始め沢山の方がカバーされています。このアルバムが出た時、集められるだけのCDを集めて「白虎隊」の聴き比べをしてみました。淡々と歌われる方もいれば勇ましさが強く印象に残る方も。
二葉百合子さんの「白虎隊」は、大変失礼ながら私にはこれから勝ち戦に向かって勇ましく出陣する元気な若者の歌のように聴こえました。
私は司馬遼太郎さんの小説の中でも、会津容保公の生涯を描いた「王城の護衛者」が大好きで、10年ほど前に会津へ旅行し飯盛山にも登ってきました。
Kiinaの「白虎隊」からは、飯盛山で隊士たちが見た光景、隊士たちの目にはそう映ったであろう炎上する鶴ヶ城が見える気がするのです。