アルバム11曲めは、これまでの10曲とはガラリと趣きを変えたカバー曲「百万本のバラ」です。KIINA.の歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=cD1v_OsDafM
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/268433/
「百万本のバラ」の原曲は「マーラは与えた」というタイトルのラトビアの歌謡曲です。この曲がソ連時代のロシアに入ると、グルジア(現ジョージア)の画家が女優に恋をしたという逸話に基づいたまったく内容の違うロシア語の歌詞がつけられ、人気歌手アーラ・プガチョワが歌って大ヒットしました。
ラトビア・ソ連(ロシア)・グルジア、大国に抑圧される小国……歌の背景は複雑で日本にいると中々実感出来ません。
日本ではロシア語バージョンを加藤登紀子さん訳詞・歌唱されたものが有名ですが、その1年前にやはりロシア語バージョンを松山善三さんが訳詞されています。
KIINA.がカバーしたのは1988年に久米小百合さん(久保田早紀さん)が発表した松山善三さんの訳詞ですね。
私も加藤さんのアルバムで「百万本のバラ」を聴き馴染んでいましたので、松山さんの訳詞は新鮮で、ある意味まったく違う曲にとしてKIINA.の歌を聴くことが出来たように思います。
加藤さんの訳詞と松山さんの訳詞の一番の違いは、「語り手が誰か」というところにあります。
加藤さんは、ある画家と旅の女優の物語りを第三者の目線で俯瞰で語っています。
一方、松山さんの訳詞は踊り子に恋をした主人公の画家の独楽です。
この歌の中で画家であるKIINA.は、最初静かに呟くように語り始めながら、やがて少しずつ少しずつ感情が激してゆきます。
そしてクライマックスの絶叫のような「僕の 僕の 僕のある限り」からの「燃えて 燃えて 燃えて燃えるよ」のリフレインとロングトーン。
たとえ相手に届かなくても、自分の命をバラに託して愛する人に捧げたいというその想いの激しさをKIINA.は見事に描き切りました。
久米さんのオリジナルはもっとずっと歌唱も淡白で、ラストもあっさり終わっています。それをこれだけドラマチックにアレンジしたのはアレンジャーの佐藤準さんのご意向でしょうか、それともKIINA.のご希望だったのでしょうか。
どんな歌でも歌いこなせるKIINA.ですが、こんなドラマチックな歌をきっと沢山歌いたかったんだろうなと、そんな風に感じました。
ちなみに、この歌の中で私が一番好きなのは「くるくる くるくる くるくる廻る」という部分の呟くようなKIINA.の声です。切なくて哀しくて胸が締めつけられます。