つらつら日暮らし

『釈氏要覧』に見える「道俗共戒」について

とりあえず、以下の一節を見ておきたい。

  三戒
一つには在家戒(即ち八戒)。二には出家戒(即ち別解脱戒)。三つには道俗共戒(五戒五聚戒)。
    『釈氏要覧』「戒法」章


これを三戒とする見解が他にあるのかどうか見付け切れてはいないのだが、とりあえず、以下の通り見ておきたい。

在家戒 ⇒ 八戒(八斎戒)
出家戒 ⇒ 別解脱戒(比丘戒)
道俗共戒 ⇒ 五戒五聚戒(?)


それで、当方の関心事は「道俗共戒」である。在家戒と出家戒は考えるまでもない。だが、道俗共戒については、良く分からないところである。そもそも、中国成立の仏典上、「道俗共戒」という表現を見出すことが難しい。まぁ、最近は検索ソフトも充実しているので、調べてみるのだが、出て来ない。

ただし、以前、実世界の論文で書いたときに参照した一節を思い出した。

 戒律の中に就いて凡そ三種有り。
 一つには別解脱戒。
 二つには定共戒。
 三つには道共戒。
 道定二戒、道俗に通ず。
    吉蔵『勝鬘宝窟』巻2


こういう分類だと、確かに別解脱戒についてはいわゆる比丘戒だから出家のみであるとして、道定二戒について在家者にも通ずるといって良いのかどうか微妙なところとなる。ただ、禅定に伴う戒や戒体の発露という話で、及ぶ範囲が俗の世界(欲界)にも及ぶという話であるかと思うから、先に挙げた『釈氏要覧』とは違うわけである。

さて、そうなると、むしろ「五戒五聚戒」の方から見ていった方が良さそうだが、こちらも類似した表現は見付けにくい。そもそも「五戒」とは在家五戒のことであろう。これが、道俗共戒となる理由が分からない。ただし、一部の出家作法(沙弥受戒法)では、五戒をまずさずけて入道の様子を示すというから、それかもしれない。

そして、問題は「五聚戒」なのだが、この「聚」を、衆生の分類であると解釈すれば、五聚の衆生に適用できる戒を意味するが、これは端的に菩薩戒を指すといえよう。本来は、「七衆(比丘・比丘尼・式叉摩那・沙弥・沙弥尼・優婆塞・優婆夷)」ではあるが、多分、何かが抜けて「五聚」になったのではないか?という推測である。そうなると、既に「五戒」が入っていることに鑑み、優婆塞・優婆夷は五戒、その他の「五聚」が菩薩戒、ということになるのだろうか?

いや、多分こうでもないな・・・ということで、色々と考えてみたのだが、良く分からない分類、という話になるのであった。手探りで学ぶ状況、こういうこともあるさ。

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