つらつら日暮らし

当方所持『葬法書』に見る「七本塔婆文」

いわゆる「七本塔婆」については、【七本塔婆―つらつら日暮らしWiki】をご覧いただければ良いのだが、書式については以下の通りである(現行の『行持軌範』を参照した)。

初願忌 南無宝勝如来 供養塔
以芳忌 南無多宝如来 回向塔
洒水忌 南無妙色身如来 荘厳塔
阿経忌 南無広博身如来 追福塔
小練忌 南無離怖畏如来 伸供養
檀弘忌 南無甘露王如来 報徳塔
大練忌 南無阿弥陀如来 菩提塔


それで、これを見ていくと、現在の曹洞宗ではそれほど強調はされなくなってしまったが、いわゆる「七如来」の信仰が垣間見えるものとして理解出来る。要するに、施食会で一般的に拝請される五如来に、「宝勝如来」と「阿弥陀如来」が加わった形式なのである。それで、当方が以前に入手した『葬法書』と名づけられた写本には、「七本塔婆文」という書式集が収録されていた。よって、この記事ではその書式を確認しながら、当方なりの所見を申し上げたい。

一不動〈梵字〉經曰是大明王無其所居但住衆生心相之中右修善者為此合〈戒名入〉初七日証大菩提也
二釈迦〈梵字〉文曰勤苦六年行如所応現五濁利随順群生白善者為此合〈戒名〉二七日開悟得脱也
三文殊〈梵字〉文殊師利導行何故眉間白毫大光普照百子志者為此合〈戒名入〉千妙覚也謹白
四普賢〈梵字〉一切有情皆如来蔵普賢薩自体遍故此修善者此合〈戒名入〉四七日成等正覚也
五地蔵〈梵字〉經曰弥陀囘位名曰地蔵在於地獄拔諸罪人追福者為此合〈戒名入〉五七日仏果円満也
六弥勒〈梵字〉仏告弥勒其百得団彼仏名号歓喜踊躍追善者為此合〈戒名入〉六七日即成仏位也
七薬師〈梵字〉以諸法薬救療三菩顕現道意無量功徳業者為此合〈戒名〉尽七日離生死也進善啓
    漢字は現在通用のもので翻刻した


以上である。なお、本書全体が、おそらくは密教系のものであるので、上記の「七本塔婆」についても、密教系なのか?と思っているのだが、幾つか不明な点はある。それは、上記の「七本塔婆」に記載されている仏・菩薩などについては、曹洞宗でも用いている「十三仏」の前半7つと共有されており、実際に上記の後には、残りの十三仏の仏・菩薩名などが記載されている。しかし、大日如来が「十三回忌・胎大日」「十七回忌・金大日」と、胎蔵界・金剛界の2つへと分けられ、明らかに真言宗系統のものと言える根拠を提示している。

ただし、当方などは、「七本塔婆」というのは「七如来」を示したものだと思っていたのだが、江戸時代の真言宗の学僧・諦忍妙竜律師が示されるには、「七如来」とは以下の通りであるという。

宝勝如来
離怖畏如来
広博身如来
妙色身如来
多宝如来
阿弥陀如来
世間広大威徳自在光明如来
    『盆供施餓鬼問弁』参照


これは、諦忍律師自身が、典拠を密教関係の経典にあるとされる通りなので、密教としては伝統的なものであったといえよう。そして、これと先ほど翻刻文を示した「七本塔婆」とは全く合わない。よって、先に申し上げた通り、「十三仏」からの略出というのが正しいといえよう。

そこで、関連する文献を探したが、光憲『浅学教導集(国立国会図書館デジタルコレクション)』(金声堂・明治41年、67コマか172コマ以降)に関連する文脈を見出したが、完全に一致するわけではない。とはいえ、かなり似ているので、「七本塔婆」として、「十三仏」から略出する書式があったということを意味していよう。

まずは、以上のことが確認されたので、この記事はここまでである。

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