二月末、若しくは三月初、三月の節日に入る、是の日、清明なり。皆な鎮防〈火〉燭を書いて、札に三宝印を行ず。
日中諷経の次で、消災咒一遍を誦し、諸堂・諸寮の柱に押貼す。或いは大檀越并びに諸庵、及び諸檀越の舎に賦す。
此の日、大国換火す。若しくは換火を鑽るには、楡・柳を用いるべし。楡を錐と為し、柳を台と為す。或いは柳を錐と為し、楡を台と為す。火、若しくは換うるが如きは、諸堂及び山中の諸庵、諸もろの小屋の火、皆な之を換うるべし。
『瑩山清規』巻上「年中行事」
以上の通り、曹洞宗の太祖・瑩山紹瑾禅師の頃には既に、「清明貼符」を行っていた。そもそも、清明には「鎮防火燭」札を、諸堂や諸寮の柱に貼るという。なお、上記では「〈火〉」となっているのは、「火」を小さく書いたり、水のように流れる書体で書いたりするのである。また、「鎮防火燭」札を檀越(檀家)にも配布し、同じように貼るという。
ところで、この「鎮防火燭」札は、火事除けのために貼られるのである。何故それを「清明」に行うのかといえば、大国はこの日に「換火(火を換える)」からだという。
・・・ただし、拙僧の拙い知識では、この根拠は良く分からなかった。ただ、季節の変わり目の1つであるので、この日に火の付け方を変えるという話のようだが、これを調べたところ、『論語集注』に以下のようにあった。
鑽燧改火〈春は楡柳の火を取り、夏は棗杏の火を取り、夏季は桑柘の火を取り、秋は柞楢の火を取り、冬は槐檀の火を取り、亦た一年して周るなり〉。
『論語集注』
この辺、類似した文脈は『韓非子』などにも出ているようなので、瑩山禅師が「大国」と仰るのは、中国のことを指しているのだろう。そして、清明日から、『論語集注』でいう「春」に該当する様子が分かる。また、瑩山禅師はとても丁寧に、火を付ける際に用いる木材の使い方を指示されている。
また、清明には火を用いる場所全てで「換火」すべきだという。よって、そういった「換火」に因んで、改めて「火防の意識」を高めるために、「鎮防火燭」札を貼るのだろう。火事は、寺院に多い印象があるのだが、常に気を付けたいと思う。
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