YOUTH

青春とは人生のある期間ではなく 心の持ちかたを言う
by Samuel Ullman

7月後半の読書

2020年08月09日 | Weblog

7月の読書メーター(後半)


大正の后(きさき)大正の后(きさき)感想
九条節子(くじょう さだこ)として生を受け、大正天皇の皇后とおなりになり、貞明皇后と追号された女性の生きざまを見せられました。薩長の思惑から外れた意志を貫き、戦争回避を願った強さと、知的障害者施設やハンセン病への支援などの優しさが伝わりました。大正天皇と皇后については殆ど知らない私でしたので、とてものめり込んで読了いたしました。こうしていると皇室の今後がどのような道を歩むことになるのか、とても興味深く思えます。
読了日:07月31日 著者:植松 三十里


日本海軍の礎を築いた男 群青 (文春文庫)日本海軍の礎を築いた男 群青 (文春文庫)感想
群青色、ウルトラマリンブルーが海を表す色として題名に使われたのかと思っていたのですが、「青は藍より出でて藍より青し」だったとは思いもよりませんでした。第9章でそれを上手に洒落てみたのにも好感が持てました。幕末から明治にかけての歴史の動きには大変なエネルギーと血が流れたわけですが、このような観点から描かれたのを手にするとまた新たに会津藩の悲劇を思い出さずにいられません。歴史に埋もれた海軍総裁矢田堀景蔵の物語。
読了日:07月30日 著者:植松 三十里


【第161回 直木賞受賞作】 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び【第161回 直木賞受賞作】 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び感想
作中では操浄瑠璃と記されている。人形浄瑠璃、文楽とも称されるが、それは大正に入っての興行が文楽座のみとなったことに起因するらしい。最初は本書に出てくる「竹本座」と「豊竹座」だったが双方とも明治初期には姿を消している。人形浄瑠璃の小説は三浦しをんの「仏果を得ず」を読んだが、有吉佐和子の「一の糸」もあるらしい。この作品は妹背山婦女庭訓の作者近松半二の生涯を描いている。人形遣い、三味線そして情景描写や登場人物の心情を語る「太夫」の3つの役割で描かれる舞台を、劇作家として台本を創っていく様に圧倒されました。
読了日:07月29日 著者:大島 真寿美


家康の子 (中公文庫)家康の子 (中公文庫)感想
私にとって福井は金沢と異なりとても遠い地であり、よく知りませんでした。ましてやその藩祖なんて。家康の子としての認識は切腹させられた長男信康、2代目将軍秀忠、政宗の娘婿6男忠輝くらいしか知りませんでしたので、とても興味深く読みました。また、家康を斜めに見ているような観点で話が続くのが、歴史の新しい局面を見せられた感じがしました。著者の公式サイトでの「家康の子」ページを見るとなおさら面白く読めると思います。
読了日:07月28日 著者:植松 三十里


銀色の絆(下) (PHP文芸文庫)銀色の絆(下) (PHP文芸文庫)感想
中学3年生でバッジテスト7級であった小織が大学生になって友人に語る自分の歴史秘話も後半に入りました。同じ市内で別の先生に師事したり、怪我したり、衣装を誂えたり、海外遠征に行ったり、それはそれはお金のかかるフィギュアスケートの大変さをあまねく紹介していただきました。高校3年生で満を持して参加した全日本ジュニア。その結果は・・?親の指示に諾々と従いながら実力を蓄えていくたくましい少女の物語、と読んでいましたが、「一番驚いたのはお母さんの成長」ですって!?もっとこの作家の作品を読みたくなりました。
読了日:07月27日 著者:雫井 脩介


銀色の絆(上) (PHP文芸文庫)銀色の絆(上) (PHP文芸文庫)感想
いきなり「図解 フィギュアスケートのジャンプとスピン」とあったので巻末をめくりました。あぁそうだったのねと、あのジャンプなどよく耳にする技を追いました。3回転も4回転も言われなきゃわからない私ですが、読んでいてとても惹きつけられました。Instagramではメドヴェージェワ@jmedvedevajをフォローしていますが、彼の国でも若い才能が次々と出てきて大変なようです。日本でも経済的にも時間的、精神的にも家族の支援は大変なんだと感じ入りました。
読了日:07月26日 著者:雫井 脩介


大名倒産 下大名倒産 下感想
上巻で貧乏神が出てきたと思ったら、出るわ出るわ八百万の神々。七福神にお稲荷さんから死神まで。最後は死神によってうまく話が閉まるという、いやぁとんでもないことになっちゃいました。「池泉の水面は月かげを千々に乱して騒いでいる」という表現などはいかにも時代劇という感じがしたのになぁ~。
読了日:07月26日 著者:浅田 次郎


大名倒産 上大名倒産 上感想
江戸末期、何も生産しない武家社会は経済に苦しんでいた。江戸中期の藩の財政を立て直した上杉藩主鷹山を描いたのが「漆の実のみのる国」であった。本書は女中に産ませた4男の切腹と引き換えに、藩を倒産させることによって藩士の生活を守ろうとする隠居の陰謀を描いている。しかしその意図を察しながらも新藩主となった松平和泉守信房は、他の手段を模索し始める。そもそも貧乏神のせいで台所が苦しくなったのか?下巻がますます楽しみになりました。
読了日:07月25日 著者:浅田 次郎


永遠のディーバ: 君たちに明日はない4 (新潮文庫)永遠のディーバ: 君たちに明日はない4 (新潮文庫)感想
退職勧告請負人の小説であるが、この巻はちょっと毛色が違って、会社に残って欲しい相手に対する面接が舞台である。指名解雇は違法であるので面接は対象者全員に行うのだが、放っておけばどこでも仕事のできる優秀な者から退職することになりかねない。そこで退職勧告の面談では様々なテクニックが繰り広げられる。まさに身につまされる展開でとても面白い。それにしてもいろいろな業界を上手に我々の目の前に広げるその技にも完敗である。DIVA、オペラ界の歌姫に与えられた称号だが、今はいろいろな意味に取られることがあるらしい。
読了日:07月24日 著者:垣根 涼介


張り込み姫: 君たちに明日はない3 (新潮文庫)張り込み姫: 君たちに明日はない3 (新潮文庫)感想
今回村上真介が退職勧告の役を担ったのは、英会話スクール、大手旅行代理店、自動車ディーラーそして写真週刊誌の面々。いずれの場面でも実在する会社に読み替えてしまっている自分がいました。特にFile 3.みんなの力ではエンジニアの話が基調になっており、とても引き込まれました。エンディングもうまく行って何よりです。解説に曰く「自意識のフレームが変容する瞬間」を見事に描き出していると表現したくなります。私の経験した現実の退職勧告は、ずっとひどいものでしたが。
読了日:07月23日 著者:垣根 涼介


みやこさわぎ (お蔦さんの神楽坂日記)みやこさわぎ (お蔦さんの神楽坂日記)感想
3年半ぶりの再読。小学2年生の真心ちゃんのご両親が営むイタリアンはCordialitàという名前(4月のサンタクロース)。若手芸妓・都姐さんの寿退職に隠された事情が・・・(みやこさわぎ)。船木さんちの三子の名前は陸海空(三つ子花火)。Let it be から蟻の生態へ(アリのままで)。現在の雅号を名乗っていないときの作品(百合の真贋)。神楽坂の阿波踊りと鮎(鬼怒川便り)。神楽坂も国際的観光地、コスプレスタジをもあるし(ポワリン騒動)。以上7つの謎があなたを待っています。
読了日:07月22日 著者:西條 奈加


いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記)いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記)感想
5年ぶりの再読。犯人か、被害者か。身近に関係者が存在しているのをお蔦さんには見えていたのか?やっぱり面白かった。
読了日:07月21日 著者:西條 奈加


誰がために鐘を鳴らす誰がために鐘を鳴らす感想
ハンドベルって8音セットで8千円からある一方、5オクターブで約300万円するものもあるそうですね。YouTubeを見ると青山学院では初等部から大学まで揃って演奏する機会があるようで、しばらく聞き惚れました。そんなハンドベルを廃校間近な落ちこぼれ男子高校生が演奏し始めるというお話でした。ハンデベルを売っているものがあるのですから作ることができるのはわかりますが、砂型起こしから始める辺りは感動モノでした。音の微調整は本来電子的調律をするんでしょうね。今やギターだってそうですから。楽しませていただきました。
読了日:07月20日 著者:山本 幸久


クジラアタマの王様クジラアタマの王様感想
ハシビロコウがラスボスのロールプレイングゲームと並行して現実の世界が動いている。正直、訳がわかりません。菓子メーカー広報課員、若きミュージシャンと政治家の3人が夢の世界でRPGを進めている。一方で、新型インフルエンザが蔓延の兆しを見せ罹患者は犯罪者のように見られる。そんな世界と夢の世界はどうつながっているのか。わけわかりませんよね。漫画の世界が広がっていました。
読了日:07月19日 著者:伊坂 幸太郎


無花果の実のなるころに無花果の実のなるころに感想
10年ぶりに再読。神楽坂はちょっと粋で隠れ家のような素敵なレストランがたくさんある場所ですね。撮影で何度か訪れました。元芸者のお蔦さんやその朋輩が登場して神楽坂の雰囲気を醸し出しています。あかるいお料理上手な中学2年生を中心にいろいろな事件が起こり、その下手人を突き止めます。あっさりした語り口の楽しいミステリーでした。
読了日:07月18日 著者:西條 奈加

 


トルーマン・レター (集英社文庫)トルーマン・レター (集英社文庫)感想
日本と米国は政治、経済、技術など様々な点で複雑に関係している。本書では広島、長崎への原爆投下と沖縄の駐留米軍を起点に、暗躍する民族組織を描いています。シンガポールの戦争博物館にきのこ雲の写真の解説として「神の救い」と記されているとの記述にびっくり。日本が戦争中アジアでひどいことをして、それが終わった象徴だというのだ。日本民族は奥ゆかしく自己主張をあまりしないように思われます。勿論戦争について反省するべきは反省するとして、戦争終結後のソ連や韓国のやりたい放題について、きちんと教育をすべきではないでしょうか。
読了日:07月17日 著者:高嶋 哲夫


引き抜き屋(2) 鹿子小穂の帰還 (PHP文芸文庫)引き抜き屋(2) 鹿子小穂の帰還 (PHP文芸文庫)感想
前作「鹿子小穂の冒険」でドラマを見ているようとの感想を記したのですが、WOWOWで映像化されていたのですね。この巻ではヘッドハントを利用して会社から追い落とししようとする案件が描かれていますが、コミックの島耕作シリーズでもそんな表現があったのを思い出します。またオタクはテレビでしか観たことがありませんが、その描き方には笑っちゃいました。私はキャンプや山登りはしないのですが、カメラを担いで出かけることが多かったこともあり、モンベル製品が結構タンスに入っています。ノースフェイスもありますけれど・・・。
読了日:07月16日 著者:雫井 脩介


引き抜き屋(1) 鹿子小穂の冒険 (PHP文芸文庫)引き抜き屋(1) 鹿子小穂の冒険 (PHP文芸文庫)感想
テレビドラマを観ているようです。社長令嬢が取締役として頑張っているが、経営方針に楯突いて会社を追い出された先は。ヘッドハンティングを職業にしている人には会ったこともありません。ですからどのような活動をしているのか不明ですが、銀座のクラブで働くってのはやっぱりドラマでしょうね。気になるのは「リストラ」。今や余剰人員の整理、解雇することを表現する言葉になってしまいました。される方も、する方も本当に大変です。最後に出てくる山室久志さんのやりかたがいい。
読了日:07月16日 著者:雫井 脩介



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