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YOUTH

青春とは人生のある期間ではなく 心の持ちかたを言う
by Samuel Ullman

10月に読んだ本

2019年11月01日 | Weblog

木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」 通崎 睦美 (著)
BSテレ東の音楽交差点で通崎睦美氏がゲストで出演。MCの春風亭小朝が本書について言及していました。そして読んで驚きました。通崎睦美氏はいくつの才能を持っているのだろうかと。本書は木琴奏者の平岡養一氏を描いたものですが、彼の音楽に対して忖度の評論ではなく、いろいろな場所から資料を探して客観的な評論を繰り広げています。読後には平岡の演奏を聞きたくなりYoutubeを探しました。すると「木琴デイズ再び」という動画がありました。筆者と平岡氏が並んで木琴を弾いているではありませんか。多くの方に読んでほしい一冊です。

八丁堀吟味帳 鬼彦組 八丁堀吟味帳「鬼彦組」 鳥羽 亮 (著)
主人公は北町奉行所吟味役与力、彦坂新十郎28歳。隠居した父の富右衛門、母のふねとの3人ぐらしです。「捕物」には珍しく与力が主人公で、その下に6名の同心が寄り合って鬼彦組を形作っています。メンバーには死体の検死詳しい根津彦兵衛などが揃っています。同心の一人横川が手下の親分とともに殺されたところから一連の事件が展開を見せます。若き女性が溺死体となって上がったのは、当初心中と見られていましたが・・・。大川に近い八丁堀を舞台にシリーズが始まりました。2012年3月文春文庫第一刷。

やがて、警官は微睡る 日明 恩 (著)
難読作家名たちもりめぐみ氏の武本/潮崎コンビのこの作品は、私にとって二作目となります。にもかかわらず、潮崎が警視となって現れるのは192/447ページまで待たされました。閉じられた高級ホテルという空間で、爆弾から小銃やらピストルやら激しい展開でした。「思い出」売買の舞台からそれを回収しようとする国際的なプロ集団の動きは阻止できたのか。ドキドキしながらページを捲りました。

名残の花 澤田 瞳子 (著)

世阿弥作「実盛」をさらう場面を理解する力がなく、何度もgoogleを頼りにする始末です。後シテ、斎藤別当実盛のセリフ「鬢髭を墨に染め 若やぎ討ち死にすべきよし」は73歳で戦に向かったときのことだそうです。そして鳥居耀蔵や五十二世梅若六郎、金春座の平蔵などが明治の世をさすらう様子が描かれています。温故知新では割り切れない時代の強い潮流が悲しく感じられました。

ノーサイド・ゲーム 池井戸 潤  (著)
ラグビーワールドカップ2019(RWC)開催でにわかラグビーファンになった一人です。最近はルールや用語も分かってきたので本書を読んでも違和感は覚えませんでした。RWC受けだからといっても流石に池井戸氏、経営的な視点でのチーム立て直しは(うまく行き過ぎちゃうけど)安心のハッピーエンド。また読みたくなる作品でした。

そして、警官は奔る (双葉文庫) 日明 恩  (著)

作家(未だに名前を読めません)二冊目。テーマは不法移民とその子ら。子どもたちの国籍・戸籍の問題からと母親の立場がとてもつらい。つい最近、エセックスでトレーラーのコンテナから35人の遺体が見つかったとのニュースが流れました。不法移民と見られているようです。死を賭してまで国境を渡ろうとする動機はとてもすごいことだと思います。国家間の貧富の差と、それを利用する悪徳業者がいる限りこの問題は解決できないのではないでしょうか。

通りゃんせ (角川文庫)  宇江佐 真理  (著)
宇江佐真理さんがタイムスリップ小説を書いていたとは知りませんでした。この手のお話は大好きで古くは戦国自衛隊、大江戸神仙伝、コミックではJINと本棚にしまってあります。いずれも現代人が知識や道具を生かして活躍する話ですが、本作品はただの一風変わった小作農として働く姿を描いています。タイムスリップに至ったワームホール理論も理論物理学者の仮設をベースにしていると巻末で解説されています。その点、八丁堀のおゆうシリーズよりも共感しやすかった訳があるのかも知れません。

正義の申し子 染井 為人 (著)
ユーチューバーというフリーター、架空請求の手先の若い衆、今どきの女子高生。現代の代表とまでは言えませんが、時代を反映した背景づくりで家庭内暴力も出現して、ストーリーにはあちらこちらと振り回されて楽しく読み終えました。

アスリーツ (単行本) あさのあつこ  (著)
私にとってathleteとは陸上選手のことなのですが、昨今は運動選手全般をこの呼称で呼ぶ風潮でいささか困惑しています。改めて辞書を引いたら陸上競技と限定する意味はイギリスにあったようですね。あらためて勉強になりました。あさのあつこ氏の青春部活ドラマはいつもスッキリしていて楽しく読むことができる一服の清涼剤です。

育休刑事 似鳥 鶏  (著)
テーマに男性の育児休業を取り上げたり、脚注をつけるなど新しい試みがなされた作品でした。5ページに渡る作者のあとがきもなかなか面白く読ませていただきました。警察組織そのものや、法医学教室の准教授のお仕事にどの程度の時間的余裕があるのかなど疑問がないわけではありませんが、軽いタッチで描かれた3篇のお話はどれも楽しく読み終えました。特に男性の育児に関してはかなり詳しく表現されており、社会的にどう見られているかなどの場面で、なるほどなるほどと頷いてしまいました。

鬼を待つ あさの あつこ  (著)
亡き妻にあまりに良く似た「およえ」。なにか裏がありそうであるものの、清之介は震える心を防ぎ切ることができませんでした。信次郎、清之介そして伊佐治の三人の掛け合いはますます面白くなっておりました。一方、城代を失った嵯波藩の人事も変化せざるを得ず、続きが楽しみです。

 

絹屋半兵衛 あきんど 下 (文春文庫) 幸田 真音  (著)
単行本のときの題名は「藍色のベンチャー」。これなら経済小説作家としての狙いがわかりやすかったのかとも思いました。しかし、新たにベンチャーとして取り組んだ磁器生産にのみ焦点を当てた小説ではありませんでした。もちろん、歩留まりの問題や白磁の色の問題、技術の進展など磁器に関する変遷も現した上で、江戸末期の経済状況と藩の置かれた位置づけ、近江商人の矜持、井伊直弼の生き様などを見事に表現した作品でした。湖東焼き、ウエブの写真でしか見たことがありませんが、実物を見たいものです。

絹屋半兵衛 あきんど 上 (文春文庫) 幸田 真音  (著)
経済小説の作者が「湖東焼」について描いた作品。上巻では古着屋の絹屋半兵衛が磁器生産を始め、苦労しながらも良い作品を作り出すことができ、藩直営となる辺りまでを描いている。面白くて一気に読み進めました。

弥勒 (講談社文庫) 篠田 節子 (著)
あさのあつこ氏の弥勒シリーズ読破中に図書館で目についたので借り出しました。文庫本で660ページの大作。少し腰は引けましたが、読み進めるうちにのめり込みました。人民の幸せはどこにあるのかを考えさせられましたし、独裁政権でありそうな結末も見せてもらいました。私は毎朝仏壇に向かう老人ですが、あらためて56億7千万年後の弥勒の出現を考えさせられました。

雲の果 あさの あつこ  (著)
「あっしの葬儀にゃあ、お二人揃って来てもらいてえんですよ。」伊佐治の言葉が信次郎と清之介との緩衝材になっていくのはいつものとおり。今回はバラバラな人の死と思われたものが、ひとつづきの流れとして信次郎に暴かれました。厄災に襲われた貧しい藩が江戸で強盗を働くというとてつもない話をよくまぁ考えつくものです。台風19号の来襲で家に籠もったまま一気に読了しました。

花を呑む あさの あつこ  (著)
小暮信次郎と遠野屋清之介、そして梅屋の伊佐治。第7巻になるのにその関係性はいささかも崩れず誠に面白いシリーズです。この作品では伊佐治の一家が被害者としても絡んできて、その種明かしが梅屋で行われたのもまた一興。おふじの幽霊姿もよく信次郎の依頼を受けたものだと思いました。第二章花芯で出てきたやむを得ず加害者となったお常。これが隠し玉とは・・・。

震える天秤 染井 為人 (著)
題名からして素敵です。読み終わってからやっと理解したのですが、裁判所のシンボルであるギリシャ神話の「テミス」は天秤とサーベルを持っています。そして正義とは何かを追求するフリーライターフリーライター俊藤律は、判事補の元妻里見との会話を介して、事件の真相にたどり着いたにもかかわらず異なる判断をするに至る。その真相に至る場面がとても良く描けていて途中で読書をやめられなくなりました。また巫女である七海の天秤も、事故の2日前に大きく傾くことになるという表現があり、遵法と「正義」の間で震えたのでした。

定年筋トレ (ワニブックスPLUS新書) 森谷 敏夫  (著)
中年以降にランニングを始めた私には運動をすれば年齢に関わりなく筋肉は増えるということはよく理解できます。しかしそれは経験値でありデータで示されたわけではないのが残念な点です。それは今流行りの糖質オフダイエットの否定の仕方で顕著です。脳に必要な糖質は体内で生産でないのか。糖の代わりにケトンが代替するという研究をどう見るのかに触れていただきたかった。

あの家に暮らす四人の女 三浦 しをん  (著)
淡々として時間が流れる古い洋館。と思っていたらカラス群の集合体ときました。父親が(作り物の)かっぱの木乃伊に乗り移るだのと・・常軌を逸した様な展開には驚きました。

暁天の星 葉室 麟  (著)
巻末のお嬢さん(葉室涼子)の「刊行に寄せて」は葉室麟の執筆活動の一端が伺えて心が震えます。時代小説と歴史小説の違いなどについてあまり良く知りませんが、この作品は今までに読んだ葉室作品とは違うような感じを受けました。平成30年が明治維新から150年であることを意識して取り組まれた旨が記載されており、まさに近代化に向けて大急ぎで取り組んだ時代背景がよく描かれておりました。

ルパンの娘 横関 大 (著)
泥棒一家と警察官一家という現実にはなかなかありえない設定ではありますが、楽しく読ませていただきました。現在の事件をもとに、過去の未解決事件を解決するという手法もいい感じでした。

 

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