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「競歩王」だけは文字数の関係で個別に記載しました。その後、額賀澪氏をフォロー中です。
岡嶋二人という作家にも出会えました。
記憶に残る作品は須賀しのぶの「荒城に白百合ありて」です。会津の負け戦を今までと異なった観点で見せてくれました。
タスキメシ (小学館文庫)の感想
長距離走に関わる青春群像。題名からは運動と食事に関する本かと思いましたが、違っていました。眞家早馬・春馬兄弟と同じ高校の助川、ライバル校の藤宮の陸上部に所属する者たちと、助川の幼馴染伊坂都とクラス担任の稔の登場で早馬の背景に深みが生まれています。えー、所属する高校は霞ヶ浦のほとりだそうで、茨城県のどのあたりかも気にしながら読み勧めました。できちゃった婚とネグレクトの難しい問題もサラリと表現していて嫌味に感じませんでした。2016年度の青少年読書感想文全国コンクール課題作品になっていたそうです。
読了日:01月31日 著者:額賀 澪
ヒポクラテスの憂鬱 (祥伝社文庫)の感想
「ヒポクラテスの誓い」未読です。その続編だったのですね。解剖でしかわからない事実が色々とあるのだと理解しました。本書ではその事実を突き止めることも一つの命題になっていますが、警察掲示板への書き込みにより操作が踊らされる様子を描いています。何のための掲示板書き込みなのか、最後に明らかにされて驚きました。医学を志す者には「ヒポクラテスの誓い」を逸脱する者などいませんが、警察官の中には自分の罪を覆い隠そうとする不遜な輩がいるかも知れないということでしょうか。
読了日:01月29日 著者:中山七里
イモムシ偏愛記の感想
虫嫌いな中学3年生の新巻凪は、まもなくアイドルデビューするヒカルに近づくため、ヒカルの祖母の住む洋館のイングリッシュガーデンでイモムシとの関わりを深めることになる。中高一貫校の女子中学三年生の主人公の凪、虫をはじめ生き物嫌いな母親と、殺虫剤メーカーの研究所に勤める父親。物語は洋館の主の簑島嘉世子の凪への依頼内容から始まる。決してイモムシ中心に進むわけでないのに、うまく蝶蛾の幼虫の生体説明が入り、気づかぬうちにイモムシに興味をそそられてしまう作品でした。やがて来る食糧難に備えての昆虫食まで伝えてほしかった。
読了日:01月28日 著者:吉野 万理子
競歩王の感想
スランプ気味の若き大学生作家と、箱根を諦めた大学陸上部員の唯一人の競歩プレーヤーの交流を軸に、競歩という競技の大変さを描いています。歩くだけの競技の何が大変なのか?1Kmを5分を切るスピードで4時間近くもあるき続けること、2Kmなどの周回コースを回り続けるので景色が変わらないこと、絶えず審判員にフォームをチェックされること、などが大変な理由のようです。いっそ、走ったほうが楽なスピードと距離なのに、減点方式でフォームをチェックされながら何故歩くのか?そして作家はなぜ書くのだろうか。
読了日:01月25日 著者:額賀 澪
八丁堀「鬼彦組」激闘篇 強奪 (文春文庫)の感想
人を殺めず金だけを奪う盗賊。しかし彼らが千両箱2つを担ぎ出したときに、刀を振るって盗賊をあやめ千両箱を奪い去った者がいた。盗賊を追うのか、その獲物をかすめた物を追うのか、八丁堀は今日も忙しい。
読了日:01月22日 著者:鳥羽 亮
クラインの壺 (講談社文庫)の感想
こんな面白い風景を描いた作家が30年も前にいたなんで驚きです。6歳の孫にポケモンgoを教わる身ですが、VR化したスマホ画面を見て「今そこにポケモンがいた」と表現するのをこの作品と絡めて考えてしまいます。クライン2は全感覚を感じさせ、現実と区別のつかない世界を表現しているという素晴らしいマシンではありませんか。「今、僕の見ているものが、現実にそこにあるものかどうかを、僕はどうやって見分ければいいのだ?」。壺の内か外か。メビウスの輪の表側か裏側なのか。解説もSFに触れていていてよかった。堪能いたしました。
読了日:01月22日 著者:岡嶋 二人
99%の誘拐 (講談社文庫)の感想
岡崎二人さんの作品二冊目。1988年では私もやっとの思いで32ビットのPCを入手した時期に当たります。漢字が使えて大喜びした思い出があります。音響カプラーでは1200-2400bps程度なのでどこまで実現可能だったかは不明ですが、このアイデアは実に素晴らしいと思います。読み終えてしばらくしてから、「モンテ・クリスト伯」に通じるものがあるなぁと感じました。なかなか痛快。もっとこの作家の作品を読んでみたいと思いました。
読了日:01月20日 著者:岡嶋 二人
荒城に白百合ありての感想
会津高校出身の私にとっての戊辰戦争は、長州憎し、独りで逃げるな徳川慶喜でしたが、この作品を読んで養子の容保が受けた京都守護職をいやいや引き受けねばならなかった藩としての変われない体質が悲劇を生んだと、改めて知らされました。時代に巻かれて滅亡した会津藩の姿は、周りのいうがままに歳を重ねた鏡子に繋がって描かれています。若い志士たちが熱狂の中に命をなくす背景にも、薩摩や会津の方言を巧みに取り入れて描き出した傑作だと思います。会津を離れて50年以上、懐かしい訛りが頭の中で展開しました。
読了日:01月18日 著者:須賀 しのぶ
師走の扶持: 京都鷹ヶ峰御薬園日録 (徳間時代小説文庫)の感想
本草学を駆使する眞葛が数々の事件の解を見出すというミステリー。前作に続き楽しく読み終えました。「瘡守」はそういう意味だったのかとショックを受けましたが、現代でも流行を続けているこの病気、今や抗生剤で完治するはずなのに感染が止まないのは素直に医者に行けないというこの作品の状態が続いているからと感じました。コノテガシワの葉っぱの裏表とか細かいところまで描き出すからこそ、真に迫ってくる作品になるのですね。その実「泊子仁」も生薬として使われるのは知りませんでした。しかし、乾燥しないの?との疑問が残りました。
読了日:01月15日 著者:澤田 瞳子
コンピュータの熱い罠 (講談社文庫)の感想
読メに登録していなかったらきっと手にしていない作品です。初出が1986年というから30年以上前に書かれたわけですが、現在Aiと一緒にもてはやされているビッグデータが主要なテーマになっていてとても興味深く感じました。音響カプラは流石に使ったことがありませんが、パソコン通信を始めた頃は1200BPMの通信だったことを思い出しました。作者についても全く知らなかったのですが、解説を読んで驚きました。しかも多作!今後どれを選んでいいものやら・・・。
読了日:01月13日 著者:岡嶋 二人
八丁堀「鬼彦組」激闘篇 福を呼ぶ賊 (文春文庫)の感想
盗賊に主役と助役を揃えてよりエンターテインメント性が高まったかと思います。独り働きでせいぜい30両を取り、招き猫の絵を犯行現場に残していた盗賊「福猫」。入られた商家もその後の精進で繁栄するのでついたあだ名が「福猫」。そしてそれを模倣する盗賊が現れた。こちらは遠慮なく人を切り殺す。犯人の一人の侍が使う剛剣に、鬼彦組倉田はどう対峙するのか。面白く読み終えました。倉田のお嫁さんも周りがもっと進めないとなかなか見つからないと思います。上司である彦坂の責任か?もっとも当人も、子供ができずにいますからねぇ。
読了日:01月09日 著者:鳥羽 亮
影ぞ恋しきの感想
題名は紀貫之「色も香も 昔の濃さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき」から来ているようです。夫婦のやり取りに短歌が用いられ、当初はその返答に16年かかったとか。かような純真の夫婦に対して将軍家暗殺や跡継ぎ問題を絡めて純真さを一層引き立てた作品でした。いつも悲しい侍を描いた葉室氏ですが、最後はしていただいて爽やかな読後感でした。
読了日:01月07日 著者:葉室 麟
奇怪な賊 八丁堀「鬼彦組」激闘篇 (文春文庫)の感想
賊の侵入経路が全くわからない、まさしく奇っ怪な手法である。後半には読者にわかるようなヒントをちりばめているが、同心たちはなかなか気づかず途方に暮れる。
読了日:01月05日 著者:鳥羽 亮
悪い夏の感想
猛暑の夏が原因なのか、役所勤めの青年が転落していく。貧困の回りには自己中心と悪意と無関心がはびこっている。元旦を跨いで読む本ではありません。気分がとても落ち込む一冊でした。
読了日:01月05日 著者:染井 為人
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