夏が過ぎ、秋が来て…このあたりからチビについての記憶がない。
そのうちに冬が来て、よく雪の降り積もる年だったように思う。
野良猫たちはどこでどうやって過ごしていたのだろうか。チビだけでなく、他の野良たちの姿もほとんど見た気がしない。
今となっては夢か現(うつつ)か定かではないが、ある吹雪の夜、ひと晩じゅう猫の鳴き声がしていた夜があった。
いま思えば、あれがチビのお葬式だったのではないか。
雪がとけて春になって、近所に住むお年寄りの誰だったか、「○○さんとこの納屋で猫が死んでいる」と言って回っているのを耳にした。
「もしや…」と思って見にいったら、やはりチビだった。
空腹に耐えかねてそれと知らず、猫いらずを口にしてしまったようだ。そこのお宅で何か悪さをして、猫いらずを仕掛けられたのだろうと思う。
うちの猫ではなかったが、タオルにくるんで連れ帰ってきた。
「お前、こんなところにおったんか…」と思った。
連れ帰ってきたチビの遺骸を庭の柿の木の側に埋めた。
そこは、ジュンに連れられてチビが初めて姿を見せた場所のすぐ近くである。
終わり