渡来ジンのもぐもぐ日記

チビ 後編

人懐っこかったジュンとは対照的に、思い出といえばご飯クレクレ、それでいて無愛想で決して懐くことのなかったチビ。

夏が過ぎ、秋が来て…このあたりからチビについての記憶がない。

そのうちに冬が来て、よく雪の降り積もる年だったように思う。

野良猫たちはどこでどうやって過ごしていたのだろうか。チビだけでなく、他の野良たちの姿もほとんど見た気がしない。

今となっては夢か現(うつつ)か定かではないが、ある吹雪の夜、ひと晩じゅう猫の鳴き声がしていた夜があった。

いま思えば、あれがチビのお葬式だったのではないか。


雪がとけて春になって、近所に住むお年寄りの誰だったか、「○○さんとこの納屋で猫が死んでいる」と言って回っているのを耳にした。

「もしや…」と思って見にいったら、やはりチビだった。

空腹に耐えかねてそれと知らず、猫いらずを口にしてしまったようだ。そこのお宅で何か悪さをして、猫いらずを仕掛けられたのだろうと思う。

うちの猫ではなかったが、タオルにくるんで連れ帰ってきた。

「お前、こんなところにおったんか…」と思った。

連れ帰ってきたチビの遺骸を庭の柿の木の側に埋めた。

そこは、ジュンに連れられてチビが初めて姿を見せた場所のすぐ近くである。


終わり

コメント一覧

渡来ジン
「猫が…」の報を受けて、僕と妹とも瞬時に「チビだ…!」と直感して確認に行きました。現地に着いて「やっぱりか…」と呆然とした僕とは対照的に、妹はすぐさま家に取って返し、タオルを手に戻って来て、手際よくチビを包み、胸に抱いて帰ってきました。
触れられることすら嫌がったチビを抱きかかえることができたのがこのとき最初で最後と、あまりにも悲しすぎる出来事でした。
渡来ジン
チビを引き取ってきたのは、実は僕ではありません(^-^;
懐かれることはなくても熱心にあれこれ面倒を見ていた9歳離れた妹です。
自分のお小遣いからフードを買っていたような優しい子です。
都わすれ
私もジンさんは、本当に心根が優しいと思います。餌を与えるだけの人は、沢山いますが、亡骸を弔ってあげる方は、なかなかいません。きっと生まれ変わって甘え上手なニャンになって幸せな一生を送りますよ。
アミ
ジンさん!
なんて、優しいのでしょう…。
後生、いいことありますよ。
猫ちゃん、救われましたね♪
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